双系システム(日本の伝統的な家族形態)の成立過程を考察する(起)


 ここに集まっている皆様の中には九州大学准教授・施光恒氏の著書『本当に日本人は流されやすいのか』を読まれた方もおられると思います。同著の後半に、朝日新聞の平成9年(1997年)元日の社説「井戸の水をかき回そう~『21世紀への助走』」をテキストに展開される章があります。1997年と言えば、橋本龍太郎内閣によって中央省庁再編を始めとする行財政改革が推進され、消費税も3%から5%に増税された年であり、そんな年の年頭に一流紙とされる朝日新聞が主張したのは次のようなことでした。

 日本文化は三重構造になっており、その三層とは表層から順に…

① 西洋の影響下で近代化した意識の層
② 封建的でサムライ的・儒教的な文化の層
③ ドロドロとした古代からの神社崇拝といった形で伝わるシャーマニズム的なものを含む層

 …の3つであり、①は明治の文明開化と戦後民主主義による欧米化②は鎌倉期から江戸期までの武家文化とその中心思想となる儒教文化③は神話の時代も含めた日本人の精神的基盤と言えそうです。キラキラと陽光を反射して輝く井戸の水面のような第一層(文明的)の下には仄暗い第二層(封建的)および澱んだ第三層(古代的)の精神文化があり、それらが何かの切っ掛けで噴出して軍国主義的な動きに繋がる恐れがあるから、そうならないように国際的な相互依存度を高めなければならない(=グローバル化せよ)と主張し、第三層の底までグローバリズムの陽光が届くように撹拌しろと言うわけです。つまり朝日新聞は橋本首相(当時)に行財政改革の断行を強く促したわけです。

 本稿で焦点を当てるのは朝日新聞が忌避する第三層(日本人の精神的基層)であり、メインテキストとして使いたいのは元建設省技官で元大阪大学教授・上田篤氏による著書『縄文人に学ぶ』です。

 なお、しばらくは当サイトの趣旨やブログ表題の「双系システム」から離れた話に分け入ることをお許しいただきたく思います。伏線は後章で必ず回収し、「表現者クライテリオン」の「皇室論」問題も考察&批判します。

(承)に続く。


(メールより) 文責:京都のS

4 件のコメント

    京都のS

    2022年3月8日

     基礎医様、私も、もちろん施氏も、第三層を擁護する立場です。でも、施氏は第二層(朱子学=男系主義)を大事にするあまり、第三層(双系システム)を窒息死させていないか?と感じたので、そこを批判していきます。

    基礎医学研究者

    2022年3月7日

    なるほど~、いきなりボケて申し訳ありませんが。。。この写真、確かにあのもはや古典日本ホラー映画である「リ〇グ」を彷彿させますね。そして、何かここで定義する第3層にネガティブなイメージがありそうな感じがするのは、気になりますが。。。次回からを期待します。

    呪術高専京都校のS

    2022年3月7日

     来~る~きっと来る~♪

     井戸の底に封じ込められた特級呪霊を解き放つ起承転結の論考の始まりです(笑)。

     ダダ様、後章を楽しみにお待ちください。祭は神道ですから、間違いなく第三層です。

     施光恒氏が「ダブルバインド」と言って戦後日本人の態度を批判した件は第一層VS第三層ですが、施氏自身も第三層を否定していませんか?と問い詰める立論になっています。

    ダダ

    2022年3月6日

    難しそうですが面白そうです。
    日本人が祭り好きなのは、間違いなく第三層の影響ですね(ちがうかも^^)(^O^)/

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