双系システム(日本の伝統的な家族形態)の成立過程を考察する(結)

前回のブログ:双系システム(日本の伝統的な家族形態)の成立過程を考察する(転)

 ついに前章で双系システムの萌芽を見ました。『老人支配国家・日本の危機』の中でEトッド氏は、家族システムの変遷はユーラシア大陸の中央から始まり、それが周辺に伝播していくモデルを提示して語りますが、日本に直系(男系)主義が流入する前に存在していたのは「双系システム」だったとしています。おそらく最初に日本列島に来た原縄文人は旧石器人の遺制を引きずっていたはずで、それは最も原始的な家族システムとしての絶対的核家族(家系の継承は能力主義、現在では米英に残る)だったはずです。

 新石器時代(日本では縄文時代)には環境の変化などを原因として変貌した家族システムが周辺に伝播したと思われますが、大陸中央から欧州とは逆方向(東南アジアや太平洋島嶼)へ伝播した核家族の亜種として母系システムがあると仮定し、このシステムを携えた海洋民がコシ族として縄文社会の中で中核を成し、次に前章で見たように稲作の定着を経て双系システムに移り、それは朱子学的男系システムが伝播・定着して嫁入り婚が一般化するまで続いたと考えられます。

 上記に関連するエントリーとして、「各国・各民族の家族システムの比較から皇位継承を考える」(文責:京都のS)もご参照ください。

 施光恒氏『本当に日本人は流されやすいのか』の中で、朝日新聞記者が神社崇拝やシャーマニズムを含む日本人のドロドロとした精神的基層(井戸の底)を全否定しつつグローバル化を賞賛したことを批判しましたが、施氏自身も「表現者クライテリオン」3月号の皇室論において、朱子学的な男尊女卑感情(井戸水の第二層)に基づく「男系主義」を守りたいという動機により、記紀神話の元が形成された頃に日本人の精神風土に合うように進化した「双系システム」や中世まで続いた「婿入り婚」の慣行(第三層)を井戸に封じ込めようとしました。これは歴史(双系システムは縄文期~中世に由来を持つ)の軽視であり、時(皇位継承の危機を迎えた現代)・所(皇位の安定を至上価値としてきた国)・位相(国民感情は側室や傍系継承に違和感を持つ)を無視した保守とも思えぬ態度です。

 ゆえに私は、施氏や藤井氏の反グローバリズムや反緊縮には賛意を示しつつも、皇室論については徹底批判せざるを得ません。

 全ては「愛子天皇を戴くために!」です。


(メールより)文責:京都のS

6 件のコメント

    呪術高専京都校のS

    2022年3月10日

     ダダ様、読んでいただいた皆様、井戸に封じ込められた特級呪物を解き放つとともに、朱子学的遺物としての一級呪霊を祓う論考にお付き合いいただき有難うございました。

    鬼殺隊京都支部のS

    2022年3月10日

     基礎医様、ありがとうございます。そうですね。彼らが「謝ったら死ぬ病」に罹患していないことは、十番勝負への出演を快諾したこと(論破必至のため)からも伺えます。
     反グローバリズム(外資への売国を阻止)と反緊縮(財政法4条という占領期の遺制を解除)は、ライジングQ&Aへの質問傾向からも分かる通り、私(京都のS)の悲願ですが、「愛子天皇を戴く」という上位の価値があります。ゆえに、今回は涙を呑んで二人を日輪刀で斬らせていただきました。

    ダダ

    2022年3月10日

    土着文化と双系制度の密接な関係、大変勉強になりました
    天皇が生まれたのは古代ですから、この時代の検証は必須ですね。
    5/15の、よしりん十番勝負がさらに楽しみになりました。ありがとうございました。

    基礎医学研究者

    2022年3月9日

    「結」、興味深く読ませていただきました。グローバリズム(これは、経済活動も含む)を歴史伝統からとらえて正しく判断できるのに、何で「皇位継承問題」では、判断を誤るのか(少なくとも、自分にはそのように思える)を不思議に思っていました。今回の論考でなるほど~と思ったのが、双系という歴史を軽視していること、および時・所・位を取り違えている、という部分であります。そして、結論として「愛子天皇を戴くために!」という京都のSさんの結びに、異論はありません。
     ただ、彼らが実際のところ、クライテリオンとは異なる真の保守思想を論じれる可能性がある場、「よしりん十番勝負」で一体どう論じるのかは”見たい”というのが、自分が現時点で率直に思うことです。論破されて討ち死にするのか?あるいは、柔軟に考えて思考を深化させることができるのか?この2人の言論人は自分とたまたま同世代なので、大いに関心を持つものであります(今回の一連の論考を読んで、そのように感じた次第です)。

    京都のS

    2022年3月9日

    参考文献:「縄文人に学ぶ」(上田篤/新潮新書)
    「老人支配国家・日本の危機」(エマニュエル・トッド/文春新書)
    「本当に日本人は流されやすいのか」(施光恒/角川新書)

    京都のS

    2022年3月9日

     「愛子天皇を戴くために!」という結論に到達するために、随分と遠回りしてきました。
     「歴史を軽視」「時所位を得ない」「保守とは思えぬ」、これらは保守論客としては耐え難いはずです。
     これにて完結です。

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