サトルです。
ここまで私は、
・国民の総意とは何なのか?
・立憲秩序は、どう弱っていくのか?
・象徴天皇制は、何によって支えられているのか?
・伝統とは何なのか?
・男系とは何を意味しているのか?
・国民主権とは何を引き受けることなのか?
などについて、少しずつ私なりに整理してきました。前回は、皇位継承問題とは、「どのような区別が正当化されるのか?」という問題でもあるのではないか、というところまで整理しました。
今回は、日本国憲法第14条に出てくる「門地」という言葉について、少し考えてみたいと思います。
【平等とは、区別の否定ではない】
日本国憲法第14条には、「すべて国民は、法の下に平等であつて」と書かれています。しかし、ここで注意したいことがあります。憲法14条は、あらゆる区別を否定する条文ではありません。
例えば、
未成年者と成人は区別されています。選挙権には年齢要件があります。医師には資格要件があります。自動車を運転するにも免許が必要です。
つまり問題になるのは、区別そのものではありません。
その区別に合理的な理由があるのか?
その区別を国民に説明できるのか?
という点です。
言い換えれば、平等とは「区別を禁止する原理」というよりも、「説明できない区別を許さない原理」として理解した方が近いのかもしれません。
【なぜ「門地」という言葉が置かれているのか】
ここで興味深いのが、「門地」という言葉です。現在では、ほとんど日常で使われることはありません。しかし戦前の日本には、家柄や血統によって制度上の地位や権利が異なる仕組みが存在しました。
*私見では、一時期問題になった「上級国民」などの言い方とは、根本的に異なるでしょう(by基礎医)
だからこそ戦後憲法は、「門地」という言葉を明記した。ここでいう門地とは、本人の意思や努力では変えることのできない出生上の地位を意味します。つまり憲法は、「どこに生まれたか」だけを理由にした区別に対して、強い慎重さを求めているとも言えるでしょう。
もっとも、皇位継承制度そのものは出生と深く結び付いています。だから問題は、「出生による区別を認めるか否か」ではありません。
むしろ、「なぜその区別が必要なのか?」、「何を守るための区別なのか?」を説明できるかどうか。そこに移っていくのだと思います。
【皇室だけは、なぜ残されたのか】
ここで一つ、興味深い問題があります。戦後日本は、門地による差別を否定しました。しかし同時に、皇室制度そのものは残しました。
なぜでしょうか。
私は、ここに戦後日本の制度設計の特徴があるように思います。皇室は、単なる特権として残されたのではありません。少なくとも日本国憲法は、皇室を「日本国及び日本国民統合の象徴」として位置付けました。
つまり戦後憲法は、皇室を「特権階級」としてではなく、日本国及び日本国民統合の象徴という機能を担う制度として再定義した。
そのように理解することもできるでしょう。もちろん、ここには様々な議論があります。
しかし少なくとも憲法は、「皇室を何のために残したのか」について、一つの方向性を示しています。
それが象徴という考え方です。
【平成の有識者会議は、何を見ていたのか】
ここで平成の有識者会議の資料を読み返してみると、興味深いことに気付きます。有識者会議は、単に女性天皇や女系天皇の是非だけを議論していたわけではありません。
・象徴天皇制を将来にわたって維持できるのか?
・国民の支持と敬愛を持続できるのか?
・安定的な継承を実現できるのか?
そうした問題意識が随所に見られます。私はそこに、一つの特徴を感じています。それは、「誰を継承者にするのか」という問いよりも、「何を維持しようとしているのか」という問いから議論を始めているように見えることです。
・国民統合とは何なのか?
・象徴天皇制とは何なのか?
・その制度を将来にわたって持続させるには何が必要なのか?
そうした問いが、有識者会議の議論の底流に流れているように感じます。
【現在地】
現在の皇位継承問題もまた、単に誰が継承するのかという問題だけではないように思います。
どのような区別が許されるのか?
その区別は何によって正当化されるのか?
その区別を国民に説明できるのか?
そして、その区別は何を守ろうとしているのか?
象徴天皇制や国民統合と、どのように接続するのか?
そうした問いが、改めて問われ始めているのではないでしょうか。
私は皇位継承問題とは、単なる継承順位の問題ではなく、現代日本が、どのような区別を正当なものとして認めるのか?何を維持しようとしているのか?
その問題でもあるように感じています。
そして、その問いに向き合おうとすると、私たちは「伝統」という問題を避けて通れなくなります。
伝統は、それだけで区別を正当化できるのでしょうか?あるいは、伝統と平等は本当に対立するのでしょうか?
次回は、その問題について、少し考えてみたいと思います。
1 件のコメント
京都のS
2026年6月12日
おお!ついに核心に迫ってきましたね。天皇という存在の意義は、私も迫ろうとしましたが、ついに迫り切れませんでした。小室直樹氏と井上達夫氏という2大巨頭の説を漸近線として迫っていくなら期待が持てます。