君主を想って千里を駆ける軍神の話をご紹介します。(三国志演義編その1)

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日本の天皇と民の関係は、困難な時代でも平和の時代でも互いに寄り添ってきた強い君臣の絆が観えますが、大陸にも君臣の強い絆のエピソードがあります。

時は中国の三国志、後漢時代に遡ります。この時代では群雄割拠で互いに天下を争い、戦いの時代でありました。 時の天子を庇護した姦雄・名雄と呼ばれた曹操は 名家と呼ばれた名門の群雄、袁紹と対峙し、 官渡の戦いと呼ばれる決戦をします。 その頃、君主を想う一人の臣が曹操のもとにいました。名を関羽と言います。 戦場で敵を義兄弟と共に数多く奮戦し、義兄弟であり、君主である劉備に仕えていましたが、曹操に劉備が敵視され、惨敗し、君主と義兄弟の張飛と離れ離れになりました。

関羽は劉備の妻2人を孤立しながらも護り、進退極まった際に、関羽が 以前曹操に捕まって斬られるところを助けた将軍・張遼が来て降伏を勧めました。 関羽は最初は君主に仇をなした曹操に降るのに強く跳ね除けますが、張遼が

“ここで君主の夫人達を残して、自分が死ぬのは匹夫ではないのか?
“義兄弟の契を破るのか?今は雌伏するべきだろう?”

と説得に、関羽はハッとして張遼に感謝し、 曹操のもとに降りました。その際に関羽は三つの条件を曹操に伝えます。

一つは、曹操に降るのでなく、自分は帝(漢)に降伏した意、
二つ、劉備の二夫人に危害を加えず、丁重に扱うこと。
三つ、劉備が存命と知れば、いかなる場合でもすぐ駆けつける(何が何でも!)。

曹操は関羽の二つの条件を余裕で受け入れましたが、最後の言葉に渋ってしまいます。張遼は曹操に”今は殿に心服していませんが、殿が心を尽くせば変わるでしょう。受け入れて下さい。”と曹操に耳打ちし、承諾させました。
 そこから、曹操は関羽に心を尽くして、夫人達には豪邸を、度々豪華な宴してもてなしたり、金品をたくさん持たせたり、美人をいっぱい送ったりします。 関羽に熱をあげる曹操に配下達は当然不満の声をあげますが、曹操は関羽が手に入るのなら尽くしまくってやると更に熱をあげます。 関羽は豪勢な宴や品物、美人にも心を動かさず、(ある話では未亡人に恋をしたと言われますが。)貰ったら倉庫に保管し、美人は夫人達に下女として全て献上します。 曹操に心服する様子はありませんでした。
 ある日、曹操が関羽の着ている古びた衣服を観て、綺麗な錦の服を贈るも、関羽は綺麗な錦の服を下に、上は古びた衣服を着ました。 曹操が怪訝に尋ねると、関羽は この衣服は劉備様に頂いた服で、これを着ているといつも劉備様に会っている気がして、離せないのです。と曹操にのろけ強く言います。 曹操はショックを受けるもめげずに関羽に貢ぎます。

しばらくして、曹操は関羽に呂布から奪った千里を走ると言われた名馬・赤兎馬を譲ると関羽に見せたさい、関羽は今までと違ってパッと顔を輝かせ、曹操に嬉しそうに礼を言いました。 曹操はやっと関羽を喜ばせたと思うも、ふと疑問に持ち、何故そんなに喜ぶのか聞くと、関羽は “赤兎馬があれば、劉備様が何処に居ようとすぐ駆けつけられる!”と答え、曹操は”しまった!”と思う同時に、関羽が君主を想い続ける心に感服し、 “劉備が羨ましい(恨めしい)”と言ったそうです。
 また、関羽は劉備のもとに帰るさいに、 曹操に今までの厚遇を何か戦功を立ててから去りたいと考えます。官渡の戦いの中で劉備の消息を知ると、関羽は戦場で袁紹の古参の武将、顔良・文醜に手を焼いているのを観て、積極的に手を挙げます。 しかし、曹操はここで戦功立てさせれば、関羽は劉備の下に帰ってしまうと渋りに渋ります。 逆に、配下達はここで惜しまれると困ると、関羽に戦場を立たせました。

関羽は思いっきり、顔良・文醜の首をかっ飛ばし、両者の首を置き土産として曹操の下を去ります。 最後に別れの挨拶をと関羽は曹操の下に参じますが、曹操はわざと会わぬようにして、義理堅い関羽を困らせます。関羽も恩義があるため、何度か暇乞いに来るも会うのを叶わず、とうとう関羽は、曹操に貰った赤兎馬以外、モノと美人を曹操に返上して辞します。 曹操は、大人気なかったと後悔し、橋の上まで配下とともに追いかけました。曹操は旅路の路銀と衣服を関羽に贈り、関羽もかたじけなし、と受け取り、道を急ぎます。 曹操はついに手に入れられなかった関羽に嘆き、 口惜しや!と言うも、ハッとし、関羽に関所を通る許可証を張遼に持たせ、後を追わせました。
 しかし、関羽達は進軍勇ましく、演義では5つの関所を突破し、そこを護る将の首をかっ飛ばしていきます。途中で騙され奇襲されたり、寝ているところを火攻めにされたりするも関羽は二夫人を護り、君主、劉備の下へと突き進みます。 ようやく劉備が落ち延びた先の村に着いた関羽は、張飛を見つけ、声をかけると “おおーっ!!兄者っ!こんの裏切り者があ!!”と怒り心頭の張飛に攻撃されます。 関羽は必死に弁解しますが、張飛は攻撃続け、途中二夫人が”関羽は私達を護ってたのよ!”と弁護するも、中々怒りが解けない状況の中、遠方から土煙が見えました。 関羽の関所破りを咎める曹操軍らしく、張飛は 関羽に、”あいつらの頭を斬ったら信じてやる!”と言い、関羽は裏切りっていないと証明するため、敵に突っ込み、敵将を斬るとようやく張飛の誤解が解け、2人で劉備の下へ駆けつけました。劉備は離れ離れになった義兄弟達と妻たちに再会し、再び群雄として立ち上がっていきます。

以上、関羽、軍神さまの千里行をご紹介しました。 関羽は敵に降伏しても自分の君主を一途に想い、諦めず、忠義を通し、また劉備も消息不明の義兄弟を案じて、再会が難しい戦乱の中に再会出来た、

君主と臣の絆のエピソード、皇室に恋闕を想う皆さまに御役に立てれば幸いです。

文責 神奈川県 神奈川のY

5 件のコメント

    基礎医学研究者

    2025年1月17日

    >神奈川のYさん
    皇室の話から外れますが、曹操の話が出てきたので、もう1言だけ。曹操と袁紹が雌雄を決した「官渡の闘い」。劉備が絡んでこないので、三国志ファンにはややマイナーな戦かもしれませんが、この戦いこそが、前半のクライマックスでしたね。この戦、勝敗の要因はいろいろあったのかもしれませんが、意外に決定的だったのが、曹操と袁紹の器の違い!だったかもしれませんね。自分、いまでも思うのですが、袁紹軍には田豊と沮授がおり、もしこの2人の献策を用いて正しく戦っていたら、曹操軍は敗けていた!というのが、戦史家の主流な意見(曹操は、荀彧、郭嘉の意見をきちんと取り入れていた)。一方、曹操は投稿してきた袁紹軍の情報をバイアスなく評価し、食糧庫の焼き討ち、という逆転の策を成功させることが、できた。こういう話は、日本の大東亜戦争にとっても、教訓となるように、思う次第です。

    神奈川のY

    2025年1月16日

    皆々様コメントありがとうございます!
    お察しの通り、この千里行の話は曹操の器がでかくなければ成り立たなかった話の一つでございます。曹操の器、劉備と関羽の絆、張遼のタイミング、どれかが不足していたらその後の劉備達はいなかったと思います。
    その恩義は大きいと感じました。
    基礎医さま、今思いますが、結構劉備達は周りに敵も含めて助けられているのだと感じます。だから劉備達は宿敵曹操の事を個人的には色々貸し借りある仲で、そこまで憎み合っていないと思いました。大義ではぶつかり譲りませんが。関羽は人に恵まれて軍神になったとつくづく思います。
    あしたのジョージさま、
    曹操の器は三国志でもでっかい方ですね。
    普通の君主だったら関羽も生きてはいないでしょう。曹操の報われない思いも考えると曹操推しになりそうです。(でも、劉備推しなんだ、ごめんね。)
    パワーホールさま、
    曹操は難しい人で、一つの評価にしばられない姦雄、英雄の両者をもつ、器が大きい方です。
    このエピソードでは曹操が名君の顔を見れる貴重な話ですので覚えて頂ければ幸いです。曹操、報われない思いにちょっと切ない話でもあります。
    皆々様、曹操と関羽の叶わぬ想いのエピソードまたご紹介出来ればと思います。

    パワーホール

    2025年1月16日

    この話を聞いて思うのですが曹操は姦雄とは思えないですね。ジョージさんや基礎医さんのおっしゃるように度量に広い人物ですよね。

    あしたのジョージ

    2025年1月16日

    三国志の本も横山光輝先生の漫画も読んだことがありません。
    ずいぶん前にレッドクリフという映画を観ましたが、ほとんど忘れてしまって、三国志の事はよくわかりません。
    関羽という人の劉備に対して忠誠心は凄いなぁと思いました。
    そりゃ曹操も欲しがるなぁと思います。
    曹操も人として器量があるなぁと思いました。
    普通ならばこんなに色んな事をしてあげているのに素っ気ない態度をされたら、腹が立ってきて殺されても仕方ないと思います。

    基礎医学研究者

    2025年1月16日

    (編集者からの割り込みコメント)寄稿、ありがとうございました。自分、最初は張飛が全面にでていたので、関羽という人は人間ができているのかと思っていましたが、トータルでみると傲慢な面もでてきて、荊州を失ったのも関羽のそういう性格が1つの原因だと思っております(魯粛や陸遜の方が、やはり一枚上手だったと思う)。ただ、このエピソードは、関羽の良い面がでており、相対峙する張陵や曹操の器の大きさがあったからこそ、このような流れになったのでは?と、改めて思った次第です。

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