愛子天皇阻止法案について、再び報じた7月7日放送「報道1930」。
皇室典範改正へ旧宮家の思いは 「立法府の総意」越える高市政権の狙い【7月7日(火) #報道1930】
キャスター:松原耕二氏 サブキャスター:篠原梨菜氏
ニュース解説:堤伸輔氏(国際情報誌「フォーサイト」元編集長)
VTR出演:後藤謙次氏(ジャーナリスト)
ゲスト
保坂正康氏(昭和史研究家・ノンフィクション作家 近著に「天皇五代と戦争」)
河西秀哉氏(名古屋大学大学院教授 歴史学者 象徴天皇制を研究)
松原氏:皇室典範の改正案を巡って野党から「立法作業を見直すべきだ」という声が上がっておりますが、なぜ立法府の総意を踏み越えた内容が 突然、出てきたんでしょうか?また旧宮家の養子案の対象となる当事者はどんな思いで 見つめているのか。 さらに今の改正案は戦後の象徴天皇制をどんな風に変えてしまうんでしょうか?今日は皇室典範改正議論の本質を読み解いていきたいという風に思っております。
篠原氏:今夜のゲストをご紹介します。昭和研究の第一人者・ノンフィクション作家の保坂正康さんです。保坂さんは平成の天皇皇后両陛下と 6回に渡り、計20 時間以上、歓談を重ねられています。
続いて象徴天皇性を研究されています名古屋大学大学院教授の河西秀哉さんです。
松原氏:皇室典範の改正案を巡る議論の本質をこれ から伺っていこうと思うんですが、まずは 立法府の総意を踏み越えた内容が、なぜ突然 出てきたんでしょうか?
VTR
ナレーション:皇族数確保のための衆参両院の全党会派が参加し、 開かれてきた全体会議。会議は2年前から10 回に渡り開かれてきました。そして先月 10 日・・・
森議長:立法府の総理にと呼ぶにふさしい取りまとめができたのではないかと思っております。
ナレーション:・「女性皇族が結婚も皇族の身分を保つ」 ・「旧宮家 の男系男子を養子として皇族に迎える」とする皇室典範の改正案が立法府の総意として 取りまとめられました。この翌日・・・
天皇陛下:皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い国民と苦楽を共にすることだと考えており、こうした皇族数の確保のあり方についての議論においても国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります。
ナレーション:天皇陛下は「制度に関わる事項については言及は控えたい」としつつも「国民の理解が得られるものを」と異例とも言える思いを表明されました。立法府の意を踏まえ、皇室典範改正 案は先月末、閣議決定され、すぐに国会に提出されました。しかし会期末が 10 日後に迫る今、審議は進んでいません。その背景にあるのが ・・・
森議長:男の子が生まれば、その子は皇位継承権を持つということになります。
ナレーション:森衆院議長の、この発言の何が問題なのでしょうか?
後藤氏:養子の子に男の子が生まれたら、それは皇位継承権を持つと、つい口を滑らしちゃったんですね。実は議会の各党の協議会で議論されたことを超えた案が法案に盛り込まれたと。ある面で確信なんですけども、潜り込ませちゃったと。
ナレーション:閣議決定の前に森議長が明かしていた養子の男系男子が持つ皇位継承権。閣議決定された改正案に盛り込まれたこの内容は立法府の総意から逸脱していると野党側が反発しているのです。なぜ、この内容が盛り込まれているのか。後藤さんはその背景に女系、女性天皇を誕生させず、男系男子による皇位継承を強く推進したい右派勢力の存在があると見ています。
後藤氏:右派議員の人たちの、ある面で立ちはだかる一番大きな壁は愛子さま人気だと思いますね。仮の話で、ご結婚されて、そこに男の子が 生まれました。一方、養子の方の方にも男の子が生まれました。その継承問題が起きた時に、 もちろん規定があるからこの養子の方が皇位継承権なんですが、国民世論は どうでしょうか?むしろ愛子さまのお子さまの方に軍配を上げるみたいな議論 が沸騰しかねないんだと思うんですね。法律はもうなるべく、そういう女系・女性の生まれる芽を徹底的に摘んでいこうと。
ナレーション:昨日(7月6日)の国会で、野党は「合意していないものが法案の中に盛り込まれている」として 「立法作業をやり直すべき」だと訴えましたが、高市総理は「現行法に基づく結果であり。国会での将来の検討を縛る趣旨ではない」とかわしました。
皇室典範の改正を急ぐ高市政権の思惑について後藤さんは・・・
後藤氏:まさに自民党総裁の時から男系男子を強く訴える高市さんが当選をし、さらにその高市さんが連立を組んだ日本維新の会が男系男子論者で、連立の合意文書の中にも書き込まれると。政権に勢いのある時にしか、こういう難しい法案ができないということもあると思いますね。
VTRここまで
篠原氏:この政治の動きですけれども、河西さんはどういう風にご覧になってますか?
河西氏:今、後藤さんおっしゃったように基本的には、今まで立法府の総意としてなんとかまとまってきたものがあったわけですけど、 それを、完全に逸脱してるのは間違いないと思うんですね。それとは全然違うような案が出てきている。それに入ってないような案。これはまあ、言ってしまえば本当に男系男子っていうことを優先させたい。もうそこが先にあって、だからこそ、ああいう風になってるんだという風に思うんですよね。
松原氏:うん。 なるほど。 それでは、ちょっと整理してまた伺いましょう。
篠原氏:これまで 10 回にわたって全体会議が行われてきた皇室典範の改正ですけれども、先月 10 日、衆参両院の正副議長は各党派の代表者協議会を開き、皇族数の確保に向けた立法府の総意というものを決定しました。
この翌日、天皇陛下はオランダ、ベルギー訪問前に記者会見で「皆さんの理解が得られるものになることを望んでおります」と述べられました。
そして先月30日、皇室典範改正の政府案が 閣議決定されました。
その内容を見てみますと、まず
①「女性皇族 が結婚後も皇族の身分を保つこと」に関しては
「婚姻した女性皇族について住民基本台帳法を適用する」。
続いて
②「旧宮家の男系男子を養子姿として皇族に迎えることについて」は
「対象を旧11宮家出身の15歳以上の男系男子」とし、
③「養子皇族男子及び養子男子の子孫の皇族としての 地位は実方の系統によるものとする」
→つまり「養子の子孫の男子に皇位継承権」があるということです。
この赤字で示している3つの要素に関しては、どれも10日にまとめられた立法府の総意にはなかっ たものでした。なぜなかったものが盛り込まれることになったのか ジャーナリストの五藤健二さんに伺いまし た。
「養子の子が男子だったら皇位継承権を持つと 森衆院議長がつい口を滑らせた。奥の手が先に出て一旦は隠したが、隠せなくなり、法案の中で 出てきた」と。
「右派議員の人たちに立ちはだかる壁は愛子さま人気
女性天皇、女系天皇が生まれる芽を 徹底的に摘んでいこうということ」そして
「男系男子を強く訴える高市さんが当選し、連立を組んだ日本維新の会 が
男系男子論者で一気に議論が高まって、あっと間に突き進んだ」と。
このようにご覧になって いるということです。
保坂さんはいかがでしょうか?
保坂氏:今回のですね、この立法府の総意を超えてというようなことなんですが、この法的なプロセスを全部、検証していくと基本的なところで 3 つの声を全然聞いてない。無視している。
天皇家の声、それから旧宮家の声、それから国民の声、そういったものを全く無視したいわゆる国民総意というものもですね、まったく考えられてない。考えられているのは政権の一部の周辺で 男系男子にこだわるところがあるんですが、それを全面的に違法的に、皇室典範の中に盛り込ん でいこうとする、ある種の政治的に言えば、かなり危険なプロセスを辿りながら の皇室典範改正だと思いますね。
松原氏:保坂さん、天皇陛下が「国民の皆さんの理解を得られるものとなることを望んでおります」と、なかなかここまで踏み込むことはないかもしれない。どうご覧になりますか?
保坂氏:これ 私はですね、「国民の皆さんの理解が得られるものとなること望んでおります」という言葉は、国民っていう言葉を、「皇室あるいは天皇家の意見を聞いてください」というようなことを、間接的に語ってるんだと思います。天皇家は直接は語れませんから、語れない以上、私たちは天皇が話す言葉の間接話法の中から「彼は何を言いたいのか」というところを汲み取ることが大事なんですが。天皇がですね、ここまで言う。ここまではっきり言うというのは、極めて珍しいというか、やはり相当、強い意思で現在 の政治が進めている法的なプロセスに対しての意義申し立てという風に私は解釈すべきだと思いますね。
松原氏:「国民の声も」とおっしゃいました。世論調査を用意しました。見ておきましょう。どうも天皇の声も聞いてない。世論調査を見ると3つの問があって「6月20日21日の毎日新聞の調査」なんですが、「旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族にする」ことに(「賛成」(28%)「反対」(32%)「わからない」(39%))最も「賛成」が少ない。
「養子の子孫が皇位を継承すること」に(「賛成(23%)「反対」(34%)「わからない」(41%))これも賛成が1番少ないんです が、これを進めようとしている。
そして「女性が天皇となること」に(「女性天皇に賛成で、父方が天皇の血筋につながらない女系天皇も賛成」(40%)+「女性天皇は賛成だが、女系天皇には反対」(33%)=「女性天皇に賛成」(73%) 「反対」(6%))「賛成」がこれだけ多いんですが、議論の対象ともなっておらず、男系男子ということになっているということ。この数字も見ても保坂さん、要するに国民の声も聞いてないということになるんでしょうか?
保坂氏:そうですね。結局ですね、皇室典範ってのは明治 22 年に、大日本帝国憲法と同時にできたんですが、日本帝国憲法とは、別の存在のある重さを持ってたんですが、昭和22 年に、戦争に負けて新しい憲法ができた。その中で、皇室典範も改正になった。 しかし井上毅や伊藤博文が作った第一次の皇室典範の骨格は残ったわけですね。 それが「男系男子」「終身在位」だったんですね。それで新しい憲法と皇室典範の間に齟齬をきたしてるわけです。 その齟齬をきたしてることが、いろんな矛盾、いわゆる皇室典範の位置付けは、どうなるのか。憲法との位置の中では、どういう位置をしめるのかっていうことなんかについては、見ぬふりというか、あんまり論じてこなかった。
結局、今、問われてるのはですね、皇室典範の全面的改正を新しい今の憲法に即した形で 行うべきだというのは、僕の考えなんですが、その新しい全面的改正を行うために、それが女性天皇であるか、男系男性であるかってのは次の問題で、皇室典範の全面的改正というものを、私たちの世代、この時代という のは、今の憲法の元に照合させるためにやる必要がある。それが基本的な流れだとすると、その流れに沿った法的な動きをしてくれるなら分かるけど、その法的に逆行してるわけですね。 むしろ明治の皇室典範にですね、井上毅や伊藤博文の亡霊が出てくるような形にこだわり、こだわり、こだわってるのが、今の政治の側の法的体系のプロセスだと思いますね。
松原氏:明治の時代からの皇室典範、後ほどまた詳しくやろうと思うんですが、河西さん、この辺りどうご覧になりますか?例えばですね、「女性皇族は結婚後も皇族の身分を持つ」というので、「住民基本台帳法を適用する」。これどんな意味なんだろうと思う方も結構いらっしゃると思う。
河西氏:結局、普通の皇族じゃありえないわけですよね。ほとんど一般人のような形の扱いにすると。そうすれば、つまり結婚した愛子内親王含めて、女性皇族は一般人のように扱われるので、普通の皇族とは違うってことになるわけです。そうすると、ちょっと二流の皇族って言ったらいいんでしょうか。でもそうすると、何が起こるかって言ったら、じゃあそんな人だったら、皇位継承権はありませんよねっていうまさに女性天皇、女系天皇の芽を。
松原氏:まさに後藤さんがおっしゃってる部分だと いうことですか?
河西氏:はい。だから普通、結婚して、例えばそのまま皇族として残るっていう風にすればいいものをわざわざそんな風にするっていうのは、まさに皇族として扱うよりも 一段低く扱うんだっていう宣言。それはつまり、まさに「女性天皇にしないんだぞ」っていうね、言い方なんだろうなっていう風に思いますね。
松原氏:それでは河西さんどうお考えですか?つまり国民の総意、立法府の総意ですか?ということで10回に渡って全体会議をしたにも関わらず、総意に出てこないものが出てきてるわけですね。しかも女性、女系の芽は摘む。そして男系については、はっきりと養子の方は継ぐという風に言わないまま、こちら(政府案)には書き込んでると。元々、そういう話だった。だけど隠してたものを、最後に法案に滑り込ましたと。つい森さん口が滑ったんだという。この辺りはどうご覧になってますか?
河西氏:そもそもその議論の時に皇族数確保って言ってたわけですね。だからそういう意味では皇位継承権をしないみたいな話になってた。だから「とりあえず今の公務を担う人たちの皇族数を確保するんだ」っていうような言い方だったんですけど、それも結局フィクションだっていうことが、今回分かったと思うんですね。だからこそ「皇族数確保だから、女性天皇の問題はしませんよ」って言ってたから、さっきの世論調査ですけど、本当に圧倒的な女性天皇とかの問題については話さなかった。だけどそれで男系男子の話ですね。この養子の話なんですけど 結局分からないがこんなに多いんですよ。 これって結局、分からないまま、国民には知らせないまま、なんとなくこうやっていって、制度だけ決めちゃってるっていうね。これ本当に、総意なのかっていう。
松原氏:つまり保坂さんがおっしゃった国民の声も聞いてないと。逆にこれを見ると国民に説明も、ちゃんとしてないまま、進めようとしている。
河西氏:そういうことですね。説明、むしろ分からないまま進めて、制度だけ作っちゃって、「いや、もうこう風になったんだから、お前ら従うんだろう」っていうようなね。そういう姿勢にも私には見えますね。
松原氏:堤さん、つまり高市政権、高市さんが男性、男系男子を強く訴えてる。そして維新の会もそうだと。 だからこれ一気にこれまで進まなかったものを、この強い、支持率が高い時点で進めてしまおうという動きだと。どうご覧になりますか?
堤氏:今、国会が混乱しているのは、結局高市総理と、高一総理が恩義を感じていると言われている維新と、自民党全体というよりは、その 2つの考え方だけで、いろんな法案が進められていて、中でも 1 番、今後の日本の国の形に関わってくる皇室典範も、その一部の、あえて言えば独走で進んでしまっている。河西さんがおっしゃったように、その女性皇族を、本来、皇室に残していろんな公務をやっていただくために、今回の皇室典範をやるという、最初はそういう風に我々感じていたんですけども、これ言うと明らかに女性皇族は本当にワンランク低い皇族としてわざわざ規定してしまい、結局、公務だけをやりなさいということを決めようとしてるわけですよね。これは明らかに、ある意味で皇族の地位 をむしろ下げるような動きになってしまっていて、それを本当に、このまま独走して 進めさせていいのかという思いが国民には 感じられてしまうと思います。特に、旧宮家からの養子についてもですね、ごく一部の右派の人たちだけが、そこには皇族になるにふさわしいような人たちがいると言っているだけで国民にはそこの顔は全く見えていない。もちろん、それが見えばいいのかというと、また別の問題があって、見えたことによって、その方のプライバシーも侵害される恐れもあるので、そこは慎重にやらなきゃいけないんですけれども、じゃあ旧宮家の方にもいろんなアプローチがあったかというと、そういうことは公的にはないままに、勝手にその話がここで出てきてしまって、これもまた、ものすごいその人たちの人権にも関わる問題になる。
松原氏:天皇の声、旧宮家の声、国民の声も 聞いていないと先ほど保坂さんが おっしゃいました。それでは旧宮家の当事者はどんな風な思いで今回の動きを見つめ ているんでしょうか?今回の案の2つのうちの1つの「旧宮家の男系 男子を養子として皇族に迎える」。その対象となる11の旧宮家の1つ、久邇宮家というのがあるんですが、ここの久邇朝宏さんにお話を伺いました。久邇さんは上皇 様の従弟に当たられるということであります 。さて、どんな思いで今回の案を見つめていらっしゃるんでしょうか?
VTR
久邇氏:手を上げる人がいるのかなという。 15 歳ってさ、自分はこう生きるんだっていう生き方をもう見つけてる人が多いと思うんですよ。あるいは、見つける前でも、こうなりたいような、おぼろげな希望は、自分の将来を持ってるはずなんで、そういう人に今更、「名前を捨てて生き方を変えなさい」というのは、それは酷な話だと思うんですね。
ナレーション:旧久邇宮の久邇朝宏さん 81歳。戦後、間もない1947年、3 歳の時に皇籍を離脱しました。その時の皇位継承順位は18位で、以来およそ 80年、一般人として過ごしてきました。現在2人の娘と、男子を含む 5人の孫がいる久邇さん。今回の改正案では久邇さんの子や孫は養子の対象とはなっていませんが、もし対象だとしたらどうするのか聞くと・・・
久邇氏:やめろよ。お前なんてできるわけねえじゃんというような言い方をすると思いますよ。昔、日本が戦争に負けた時にマッカーサーに対して、昭和天皇は「私の命をあなたに捧げる。だ から日本国民を不幸にしないでくれ」とそういう意味のことをマッカーサーに言ったんですよ ね。それが要するに天皇に 望まれる、これから、皇族に入ろうという人がいれば、その人もそういう生き方が望まれるわけだから。
ナレーション:久邇さんは今、自身が初等科から大学院まで学んだ学習院で初等科同窓会の会長を務めています。先月、愛子さまを同窓会に招いた際に、改めて皇族と旧宮家の違いを目の当たりにしたと言います。
久邇氏:愛子さまのその日に予定する、1日の計画というのが A4一枚に出てきて、何時何分に何をすると。車を降りて 、歩いてここへ行って、階段を上がって分 刻みで、びっしり書いてあるんです。それをね、11宮家を出て育った、そういう教育も受けたことのない人が、本当にあんな生活ができるのかっていう。それはちょっと心配というか。
ナレーション:また久邇さんは、皇室典範の改正を急ぐ政府の進め方についても疑問を呈します。
久邇氏: 旧宮家の人たちの ご本人に意見を聞いてるのか、その辺は心配なんですね。本当に意見 を聞いて生き方を聞いて、これでよしとするような、そういう議論をしているのかどうか ですね。
ナレーション:実際に久邇さん自身も・・・
久邇氏:少なくとも、私は何も聞いてませんし、 そういう話について何か聞いてきたことは一切ありませんので。
ナレーション:皇族数を増やすために旧宮家に白羽の矢が立ったのは今回が初めてではありません。今からおよそ20年前、小泉政権で有識者会議が立ち上げられた際にも 旧宮家の養子案が浮上。この時はその後、悠仁さまが誕生されたことで 議論自体が立ち消えとなりました。時代や政治の都合によって旧宮家が翻弄される状況について久邇さんは ・・・
久邇氏:みんなの意見も、もう一度聞いた方がいい。政治力だけで突き通していって、今後、本当に良かったかなという疑問がまた湧いたら大変ですから。そう、少なくとも久邇家の、「久邇朝宏家 はもういいです」と。私はそう言いたいんだけど、だから 「(私たちに構わず)先に進めてください」みたいな話はしたいと思いますけど。
VTRここまで
松原氏:整理しときましょう。
篠原氏:皇籍離脱からおよそ80年。宮家の男系男子 を皇族の養子とする案について当事者はどの ような思いがあるんでしょうか?1930の取材に対して旧11宮家の1つ、旧久邇宮家の久邇朝宏さんは
「愛子さまの1日の計画がA4一枚に分刻みでびっしり書いてあった。何時 何分に車を降りて歩いて階段上がってと。 11宮家を出て育った人が本当にあんな生活ができるのか心配」
「政治力だけで押し通して 今後本当に良かったのかという議論がまた 湧いたら大変なので『久邇朝宏家はもういいです』と言いたい。だから私たちに構わず先に 進めてください」とおっしゃっています。
「旧宮家の男系男子を養子にする案」に ついては小泉政権で行われた2005年の 有識者会議でも議論されました。しかしこの時は「国民の理解と支持、安定 性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり採用は極めて困難」という結論を有識 者会議は出しました。
その当時、保坂さんがインタビューで「あなたが若くて独身で養子候補と言われたら?」と久邇さんに聞いたところ 、「独身でも、その時すでに家内と出会っていたら断るでしょうね」と答えたということ です。 保坂さん、改めて今の久邇さんの言葉というのを映像で見ていただきましたが、いかがですか?
保坂氏:20年前、2005 年なんですが、小泉内閣の時に、こういう11宮家の養子案が出たんですね。それで私は「文藝春秋」で、該当者 8人ほどいたんですが、全部取材したんです。つまり「あなたたちはそういうような状況 になったら、皇室の中にこう入っていく、 そういうような気はあるのか」って言ったら、大抵、みな普通の生活をしてて、サラリーマン生活してるわけですから「 もうできっこありませんよ」と。その時、久邇さんとも話をしたんですが、同じようなこと言っ てますね。
私はね、こういう養子案に11宮家の人、私の取材した範囲では誰 1 人として、「私は喜んで、そういうようなことに応じます」っていう人はいなかった。どうしてこういう案が今、出されてくるんだろうということは、逆に言うと密談風にですね、そういうようなルートの中で、何か人探しをやっていて、内諾を得てるようなケースがあるのかなと勘繰りたくなりますね。
だから逆に言うとですね、この 11 宮家というのは久邇さんが言ってるように「私たちを利用しないでくれ」と。 「私たちの立場というものを、政治の上で利用しないで欲しい」っていう本音を、きちんと今の内閣及びこの法案を遂行している人たちっていうのは聞かなきゃいけないですね。そういう声を聞こうともしないで、自分たちだけの思惑、考え方で、国家の1 番大事な柱を勝手に作ろうとする、その傲岸さに私は歴史的な怒りというものを持ってますね。
松原氏:久邇さんの言葉の中で、今聞いて印象に残ったんですが、その保坂さんのおっしゃるように「意見をちゃんと聞いてるのかが心配」だと。そして「ちゃんと意見を聞いて、生き方を聞いてこれでよしとするように、そんなことをしてくれてるのか」と。つまり生き方と。つまりそれぞれ、みんな人生があるわけですね。その辺りに配慮せずに、考慮せずに「どうですか」ということになってるようにも見えるんですね。
保坂氏:そうですね。私はその時に会った 8人の該当者の1 人は本当に弱体メーカーの 一サラリーマンなんですね。それで「どうして僕に会いにくるんですか?」「いや、あなた該当者と言われてるんですね」「いや、そうらしいですね。とんでもない話です」っていうんですね。「私の生活は、もう全く違う形になってる」という。そういう人たちを、自分たちの男系男子というような遺伝のために取り込もうとするような、そういう非人間的なことをやっちゃいけないというのが、僕はかなり強い怒りとして持ってますね。
松原氏:それにしても河西さん、この前 2005 年には、これどう考えても無理だよねという内容になったものが 今また亡霊のように、この案が出てきたという風に思われますか?
河西氏:基本的に、保守派の人たちがずっと言い続けてたわけですよね。ここでは否定されてましたけども、その後も、公けではないにしろ、そういう風になったところでずっと言われ続けていて、男系男子っていうまさにイデオロギーを 保つためには、これしかないっていう感じだったと思うんですよね。元々は、でも保守派の人たちも、どちらかといえば、現在の女性皇族と結婚、要は婿にすればいいっていうような言い方をしてたんですよね。
松原氏:養子じゃなくて婿にすればいいじゃないか?
河西氏:どちらかというとそちらだったんですね。それはでも非常に、政略結婚みたいな。
松原氏:それはそれで、いつの時代だ?って感じですよね。
河西氏:ところが今や、それすらもいなくなって、養子として入れてしまえばいい。それはなぜかと言えば、前だったら今の皇族、昭和、平成から令和と続く、いわゆる象徴天皇のあり方を よく知っている女性皇族と結婚すれば、男系男子というもう1つの正統性みたい なことを含めて一致できるんだという風 に考えてたと思うんですね。ところが今やそれすら言わなくなったってことは、つまり一方の方、つまりその象徴天皇制のあり方なんかは、もういらないという風に思ってるんじゃないかなという風に私は思うんですよね。むしろもう、そんなものはいらなくて血。男の血で継ぐっていうね、そちらの方を優先させればいいんだみたいな風にちょっと今もうさらに、変質してるんだろうという風には思います。
松原氏:象徴天皇のあり様について、また後ほど伺うと思うんですが、河西さん、もう 1 つ、先ほど保坂さんが内々に聞いてるかもしれないと。つまりこういう案が出てくるということは、 15 歳以上の独身の男性が何人いるかというのは多分調べている。おそらく接触してる可能性はあると思われますか?
河西氏:いや、私はこれはないんじゃないかと。逆になくてですね。逆になくて、それこそイデオロギーだけで案を決めちゃった後にですね、「誰かお前来い」っていう話になってきて「誰も行きたくない」という時に、誰か人身御供っていうか人質のように行かされないかってことをすごく危惧しますね。
松原氏:15 歳以上と言っても、自分の人生、まだ色々考えてるけど悩んでる時期ですよね。それがいろんな圧力かけられたらと。こういうことですよね。
河西氏: そういうことです。つまり大人に囲まれて「お前が血なんだ」と「誰も行かないんだからお前行けよ」っていうに、そういうようなプレッシャーが、まさにそういう人たちにかかってくるんじゃないかっていうのがすごい心配ですね。
松原氏:堤さん、どう見ますか?
堤氏:今回の法案では「15 歳以上の男系の男子」という風になってるんですけど、維新はその 15 歳以上というところに強く反対したんですよね。これ何を求めていたのかと。その後、結果的には法 案の段階では維新は断念したので、その 15歳以上というのが残ってますけど。15歳以上を、それから取り去ると いうことは極端な話をすれば、小学生とか、それ以下とか、小さい子供であっても 養子に入れる可能性を作ってしまうという ことですよね。その方が維新はいいということ。要するに「15歳ぐらいになって からだと、その人に対する誹謗中傷が 」みたいなことを維新は理屈にしてるんですけど、いやいや、そんな段階で養子に 入れるという、しかも今回、養子に入って しまったら本人の意思では離脱できないという規定も他のところにあるわけです ね。そんな子供を養子にするような 前提を考えてる人たちが、そもそも今回の 全体を主力となって進めている。これは恐ろしいとしか言いようがないです よね。子供の段階で自分がそういうことに養子になることについての判断なんかできっこないので、親に言われたら動くのか、あるいは 河西さんが言われたように、誰かが皇統を維持する ためには、旧宮家の一員たるあなたが、あるいは自分の子供を差し出しなさいというような 議論になってしまう恐れがある。これ とんでもない。 旧宮家の方々の人権に対しても、尊重が大いに欠けている進め方だと言わざるを得ないと思いますね。
松原氏:続いてはこちらです。実はですね「日本国憲法改正案要綱」、これは何かと言うと 1954年のことなんですが、自民党の前身の 1 つの自由党の憲法調査がまとめたもので、その内容を見てみました。そうするとですね、皇位継承について 皇室典範一条を改正して「皇男子がなき場合は皇女子がこれを継ぐ ものとする」と。つまり女性天皇も認めると 読めるような内容になっているんですね。そしてこの表紙を実は見てみると、改正の 責任者として「会長 岸信介」と書いてあるわけですね。これ言わずと知れた 安倍元総理のおじいちゃんということに なります。これどういう背景があったん でしょうか?
VTR
高市首相:126代にわって男系で 皇統が継承されてきたという世界でも比類がない歴史的事実こそが天皇の権威と正統性の源だと考えております。皇統に属する男系男子を皇族とする案を第 一優先として国会における議論を主導してまいります。
ナレーション:今年4 月の自民党大会で男系男子による皇位継承を力強く主張した高市総理。しかし・・・
所功氏:高市さんもそうですが、国会議員はね、よく読み直してほしいと思うんですよ。 私はそれを見てね、びっくりしましてね。
ナレーション:長年、皇室典範の研究を行う所功名誉教授が注目するのは、自民党ができる 1年前、1954 年に自民党の前進である自由党が作成した憲法改正案です。そこにはこんな一文があります。
「皇位継承については皇室典範第 一 条を改正し、皇男子なき場合は皇女子がこれを継ぐものとする」
皇室典範にある男系男子による継承を改正し、女性天皇を認めるとしていたのです。
この改正案の表紙に憲法調査会長として名が記されていたのは後の自民党総裁で総理大臣も務める岸信介氏でした。
所氏:まさにもう政界の大御所ですよね。 今、いわゆ自民党の主流をなす人々は岸信介さんの流れを組んでおるとすれば、一体、この関係どうなってんだろうと。
ナレーション:保守政党がまとめ上げた女性天皇を容認する憲法改正案。 どのような政治状況の元で出てきたのでしょうか?
自民党の歴史に詳しい小宮京(こみやひとし)教授(青山学院大学)によると・・・
小宮氏:これ11月5 日に出たってことになってますよね。ところが11月8 日に、この憲法調査会の会長であった岸信介氏は除名されてるんですね。
ナレーション:当時、吉田茂が党首を務めていた自由党で反吉田勢力を率いていていた岸信介。連日、権力闘争に追われていました。そうした中で実際に改正案をまとめたのは 岸ではなく幹事の4人(宇都宮徳馬氏 植竹春彦氏 江崎真澄氏 江藤夏雄氏)だったのではない かと話します。
小宮氏:全体の意見の統合ができていたっていうよりは、その関わった幹事の中で、女帝論ですね、非常に強いこだわりを持つ人がいて、それが反映されたという風に考える、考えた方がいいのかなと思ってます。
ナレーション:女帝論にこだわりを持っていた幹事とは誰なのか。小宮教授は後に郵政大臣にもなった植竹春彦氏だと考えています。後の政府の憲法調査会で女性天皇容認を訴えていて、当時も同様の主張をしていた可能性が高いと言います。
小宮氏:植竹さんの後日、 10 年後の話ですけども、そこでも言ってるのは「基本的にはやっぱり男系だ」っていう風になっている。その前提の上で、「男系の女性だったら別に天皇になってもいいんじゃないか」っていう風なことを言ってるんですね。
ナレーション:女性天皇の容認は幼少の候補しか残らなかった場合など もしもの時を想定した安全策だったのではないかと小宮教授は推測します。
さらにその翌年、自民党が結党した1955 年には後の総理大臣・中曽根康弘が憲法改正試案(自主憲法のための改正要綱試案・1955)の草案を作成しました。そこにも「 皇室法の改正により女子の天皇を認めるものとし、その場合その配偶者は 一代限り皇族待遇とする」
小宮氏:中曽根さん、戦後に議員になっておられるので、男女平等とかですね、今のご時世を踏まえたら、こういう女性の天皇っていうのを最初から排除する必要はなかったんじゃないかと。
VTRここまで
篠原氏:1954年、自民党の前身の1つ 自由党の憲法改正案要綱では「皇男子なき 場合は皇女子がこれを継ぐ」としています。そしてその翌年1955年には当時衆議院 議員だった中曽根康弘氏の試案でも「女性天皇を認める」とされていました。そして2005 年有識者会議の報告書でも女性、女系天皇容認が打ち出されました。
一方、皇室典範を見てみ ます。1889年に制定された皇室典範では「男系の男子これを継承す」と規定されまし た。そして1947年、日本国憲法のもとで皇室典範が改正された際にも「皇統に属する 男系の男子がこれを継承する」とし男系男子という規定が引き継がれました。
女性天皇を 容認する議論がありながらも、男系男子の 規定が変わらないことについて保坂さんは
「明治には帝国主義的な考えで皇室典範を 作った。そのエネルギーが今も続いているが、それを 1 回切って国民と天皇が一体になる新たな皇室典範を作るべき」とおっしゃっています。
松原氏:保坂さん、皇室典範、さきほど触れられました。後ほど伺うんですけど、まずは自由党に、岸信介の名前になってたんですが、この草案で「皇女子がこれを継ぐ」と書いてある。これは背景どうご覧になってますか?
保坂氏:自由党の改定案ってのは憲法ができて 10年ぐらい経ったんですが、 その時、自由党も吉田茂内閣が、末期になって、新たに鳩山内閣が誕生する趨勢だったんですね。鳩山内閣は憲法改正、自主防衛っていうことを吉田内閣と違う路線で主張してましたので、憲法改正ってのが政治プログラムに乗ってきたわけです。それで昭和29年ですね、 その自由党、改進党 、それぞれの政党が、皇室典範をどうするか、天皇の位置をどうするかっていうようなことを、党内で話し合って決めたんですね。自由党っての当時の吉田茂首相の大政党ですから、そこが決めた憲法改正の要綱、その天皇の条項、そこに書いてあるんです。それぞれ4人の政治家が中心になって自由党の憲法改正の要綱を決めるんですね。
この4 人に共通する点というのは、自民党のいわゆる政治的には穏健な人たち、宇都宮さんはどちらかというと自民党最左派、むしろ社会主義に興味を持っている自民党員でしょうし、それから江藤夏雄は江藤新平(初代司法卿)の孫になるんですが、やはりある種の明治郷愁を引きずりながら現代の中で、憲法をどう生かすかってことを考えてる人。 それから植竹さんというのは、さっきの先生おっしゃってましたけども、かなり前進的な女性天皇の容認派の強い主張者ですね。江崎さんていうのも政党出身の人ですけども、そういう柔軟性、持ってたんだと思います。
それでこの4 人が決めたのが自由党の憲法改正の要綱なんです。それの天皇の条項の最後の部分に、先ほどの女性天皇容認って書いてあるんですね。
これを入れたということは、逆に言うと当時、自由党には、旧軍人、例えば辻 政信とかそういう人たちが、かなりいて、党内保守というのはかなり戦前の日本、大日本帝国型の発想を持ってる人がいっぱいましたから、「天皇、元首にしろ」とか、「再軍備すぐやれ」とかっていうような強い主張があった。 天皇の条項もですね、最初に「天皇を元首とする」と言ってるんです。
松原氏:ちょっと待ってください。この自由党の 「女性天皇を認める」ような一文もあれば「 天皇を元首にする」って書いてあるんですか?
保坂氏:ええ。最後に、「女性天皇を容認すると」それで 一代台限りで摂政にはさせないというようなことも書いてあるんですが、。逆に言いますとね、この自由党の憲法改正の4人が練って作った中に「女性天皇容認」を入れたのは 当時、皇室 の継承者は男性がいっぱいいたわけですよ。常陸宮、高松宮、三笠宮、いろんな。少なくとも女性天皇なんて想定に上ってなかった。
松原氏:入れても別にそういう順番回ってこないと。
保坂氏: だから逆に言うとですね、女性天皇というのは、この 4 人の中の信念とか、この憲法と即応するには女性の地位を認めたというようなことを世間に訴えるためには、女性天皇の要認を入れておいた方がいいんだっていう計算もあったのかもしれません。
だけどもですね、自由党の憲法改正要綱に、しかも岸信介の名前で、岸さんはこの 4日後か5 日に除名されてしまいますけどね。ただこのことは重要なことです。 自由党は憲法改正の中の方向性の中で、女性天皇を要認してるというのは、保守合同がなった時にもそれは生きてたわけですから。
このことを私たちは考える と、その後、男系男性が歴史的な流れだとか、あるいは自民党の党是であるように言うけど、そうじゃないです。逆に言うと「女性天皇が党是ではなかっ たのか」と言いたくなるような感じですね。
松原氏:中曽根さんもタカ派として知られてますが、試案として、なんと(女性天皇を)認めると書いてたっていうのも驚きました。
そして小坂さん先ほどちょっと触れられました。ところが対照的に皇室典範は男系男子、日本国憲法の下でも男系男子ということで、ずっと変わってないわけですね。先ほど 新たな、つまり第1、第2、そして第3 の皇室典範も作るべきだと、先ほどおっしゃった。僕はこれ やっぱり今、でもこの時の時代のエネルギーが続いてると、そういう風に考えてらっしゃる。
保坂氏:そうです。皇室典範そのものは 法的な憲法の法的、法律というのは憲法の下にあるはずですね。はずなのが、つまり憲法の制約を受けるわけですが、今の皇室典範は憲法に背反してるんじゃありませんかということですね。 乖離してるという。「女性天皇を認めない」とか「終身在位」それを平成の天皇は変えてくださいって言って、改定させたわけですけども。
松原氏:まさにお言葉で、退位を求めるメッセージを出された時ですね。あれはまさにこの皇室典範を、事実上、変えてくださいと言ってるに等しいものだったということですね。
保坂氏:そうですね。変えてくださいっていう声ですよ。ですから政治を変えたわけ。でも変えたっていうか、全面的に変えたわけじゃありませんけども、変えたんですね。
松原氏:つまりそこはもう、日本憲法にもうほぼ同時にできてるのに、 それでも精神はこっちに入ってない。なぜここに入り込まなかったんでしょうか?日本憲法は。
保坂氏:あの時の平成の天皇のお言葉の中には、直接な言葉は使ってないけど、「終身在位」というのは、いかに非人間的で残酷かっていうことを言ってるわけですよね。 ですから私はそれを変えて欲しいって言ってる。この発言は天皇しかできないわけですね。私たちがいくら言っても、天皇がそう思ってるわけですから。逆に言うと天皇しか分からないようなもの を皇室典範で縛る必要はない。そして、今回にしても、令和の天皇はですね、やはり「国民の意見を聞いてください」と言ってるのはですね、本当に 平成の天皇が「「終身在位」というのは辛いんです。もう私はそれは耐えられません」と言うのと ほとんど同じ意味だと思いますよ。
松原氏:保坂さん、この時GHQ が皇室典範も変えろということにはならなかったんですかね。
保坂氏:GHQ はここまで分からなかったんですね。ただ美濃部達吉のように憲法学者ですね、「皇室典範を変えるんなら、皇室の人たちのことを勝手に決めるなら、それは許されない。皇室の意見を聞くというような機会を設けなきゃだめだ」と言ってるんですよ。
ですからね、 誰が考えても皇室典範っていうものは憲法に即応していく必要がある。それは女性天皇とかどうかと別にですよ。即応していく必要がある。その中で 皇室、天皇家の意見も聞く必要がある。全部、採用するかどうかは別です。聞く必要がある。国民の声も聞く必要がある。今回で言えば、旧宮家の声も聞く必要がある。 そういうことを何もやらないで、この制度をいじるっていうのは、独裁政権じゃないのかと。私はもう腹の底からこのようなやり方に対して憤りを感じますね。
松原氏:河西さん、皇室典範の中には日本国憲法の精神というのは流れ込まなかったまま、今まで来てるということですか?先ほど非人間的という言葉使われましたけども。
河西氏:そこはやっぱり前の時代から変えたくないっていう人たち、やっぱり人的に連続してたということもありますので、だから皇室典範を変えた時には、やっぱりその人たちの方が、皇室典範の場合は日本国憲法とはちょっと違う形で、そこは特別なんだという形でなったわけですね。でもその後も、憲法草案も含めて、何回かチャンスはあったはずなんですよね。ところが それが変わってかなかったっていうこと。そのまま継続してしまったっていう風になったんですね。
松原氏:ただ、中曽根さんも「女性天皇を認める」という試案を出してる時代があったんですが、その後も、小泉さんであったり色々、なかなか跡継ぎがという話が切迫したところは、あったかもしれませんが、それにしても本当このところがこれまでで、最も、男系男子へのこだわりがものすごく強くなってる気がするんですよ。これなぜですか?
河西氏:私はある種の保守化みたいなこととか含めて、自民党がある種、保守化してると思うんですけど。その男系男子を強く求めたいわゆる保守、右派がやっぱり、そちらの方の選挙で取らなきゃいけないっていう。例えばちょっと前だとそれを参政党に取られちゃったわけですよね。やっぱりそれを取り返したいということを含めて、そちらに受けのいい政策としての今回の男系男子っていうのがあるんだと思うんです。自民党としてやっぱり 1 番の右を確保しておきたいっていうのが今回やっぱりあるんだろうなっていう風に思います。なので選挙に負けないためっていうか、特にこの 5年10 年の流れを踏まえるとそこはやっていきたいっていうのがあって、今回になってると思いますね。
松原氏:はい。
保坂氏:法律だけの問題ではなくて、国旗損壊罪とか情報局の設置とか憲法改正とかそういった政策と一体化してるのじゃないかというようなことを私は考えて懸念してます。天皇を発言させないように持っていく。今度の昭和の日(昭和100年記念式典)にもですね。天皇に発言させないというようなことで、天皇にですね、総理大臣がほとんど内奏にも行っていないという風なのを聞いてますから。逆に言うとですね。そういった天皇を昭和 10年代のような形にしておく。そういった付随する政策というのと呼応してるんじゃないかと。それは政治的判断が過ぎるというかもしれませんけど、そういう懸念が一つありますね。もう一つはですね。象徴天皇制がですね、これによって壊れてくんだということです。何のための象徴天皇制っていうのが今まで歴史の中でですね。戦後、天皇自身も努力し、国民もそれを受け入れながら、共に国民統合の象徴としてという位置づけの正しい天皇像を作ってきたわけですね。それをですね、何、壊そうとしてるんじゃないかと、私でも最近そういう原稿も書いてるんですが、そういうね。何かもっと簡単に言うと、近代日本をきちんと学んでない人たちの天皇観の怖さというものを言い過ぎかもしれないけど、ひしひしと感じます。
松原氏:保坂さん、象徴天皇制の影響を先ほど語られました。さらにそれを深めましょう。
篠原氏:2016年、当時の天皇陛下はビデオメッセージで、「これまでのように全身全霊を持って象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないかと案じています。国民の理解を得られることを切に願っています」と述べられ、退位への思いをにじませ、この言葉の 3年後、安倍政権下でおよそ 200年ぶりに生前譲位されました。
そして令和に即位された天皇陛下ですが、皇室典範の改正案について先月 11日、「皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考えており、こうした皇族数の確保のあり方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と、お気持ちを表明されました。
こうした状況について、本日、保坂さんはこのように懸念を示されています。
「今の政権のやり方では天皇制に対する国民の関心支持が 5年後 10年後には完全に薄れる。象徴天皇制を揺るがすことにつながるのではないか」とおっしゃっています。
松原氏:保坂さん、こういう思いで引き継がれている「国民と共にある」という思いが、例えば養子案で入ってきたりする人に、同じような思いを引き継げるかどうかと。そういうことが今後の関心が薄れていくということにつながるということも言えるわけですか。
保坂氏:そうですね。平成の天皇、昭和天皇もそうですけど、昭和の後期、平成の天皇というのは、「自分たちに課せられている役割は何なのか」ということを自分たちで問い、そして実践していったわけですね。答えはない。それを探しながら、平成の天皇だと天皇と美智子皇后と一緒に探しながら、追悼とか慰霊とか、国民の災害があれば、国民のところに行って慰めるとか、いろんなことをやってきたんですね。
それは逆に言うと政治的なものとは一線を引きながら、天皇という存在ができうることは何かということを、問うて問うて問うて行動を練ってきたんだと思うんですよ。それが憲法と照合するというふうに考えていて、それ一つのモデルケースを作ったと思うんですね。
令和の天皇もそれを受け継いでいると思うんです。
今のその立法のプロセスを見ていると、それをですね。天皇、大変無礼な言い方になるかもしれませんが、元首にしようとしてるんじゃないか。憲法改正で
松原氏:昔に戻そうとしてるんじゃないか。
保坂氏:そういうですね、天皇を蔑ろにしてるんじゃないか。
松原氏:象徴天皇制はこういうことじゃないんだと。
保坂氏:そうですね。もっと政治的なですね。実験とまでは言わないけど、まあ国政に対する責任を負わせる形にするような、戦前のような形にするような方向を目指してるんじゃないかと僕は勘繰りたくたくなりますね。象徴天皇制っていうのは天皇が努力すると同時に、国民もそれを支えて二人三脚で作ってきたわけですよ。それをね、どういう判断かわからないけど、それでは天皇制というのは意味がないという形の発想があるんだなという感じがしますね。
松原氏:つまり逆にこの言葉を聞くとですね、要するに国民の理解が得られなければ、象徴天皇制は続かないんだよということを強く思っていらっしゃるということですか?
保坂氏:天皇というのはですね、結局、国民と一体化していかなければ、もたないっていうことは、やっぱり戦争を体験する中で、戦争で戦って天皇のために死んだ人があれだけいるのに、小泉晋三は平成の天皇に、「なぜそれなのに天皇制が残るのか考えてください」っていう説問はしましたね。平成の天皇は考えました。「天皇を憎んでも当然であるのに、なぜ存在したんだろうか」と問うて。その時、問うて選んだ象徴天皇制ってのは憲法上もそうですけど、それが平成の天皇の、平成の時代の天皇の所作の中に全部出てるんだと思いますね。
松原氏:河西さん、今の政権あるいは政治の流れを見ていると、象徴天皇制、必死で考えていらっしゃる部分。ここに何か思いを馳せているとか、敬意を持ってるということではないんでしょうか?
河西氏:私はないんじゃないかなと思うんですね。今回のその 2案で言えばですよ。公務はその先ほど言ったワンランク下の女性皇族になっていればいいっていう感覚ですよね。じゃあ養子の人はって言って、ポッと入ってきた時に。国民に理解されるっていうことをいろいろ模索してきたわけです。象徴天皇とはどういうことで、どうしたらどういう公務をやったらいいのか、そして国民と苦楽を共にするっていうあり方だっていう風になっているわけですけども、それをじゃあ理解した上で入ってきて、公務が担えるかっていうと、おそらくそんなにはできないと。すぐにはできないと思うんですよね。だからおそらくそれは分かってると思うんです。つまり言ってしまえば、養子の人にはわからない。わからないから公務は担ってもらわない。その間に女性皇族にですね、公務を担ってもらって、国民には女性皇族がやってるから、なんか今まで通りにはなってるよねっていう感じになって、養子が定着してきたところで、ポッと変わってもらうみたいなね。
松原氏:そうするとこうして引き継がれてるものが断ち切られてしまうかもしれない。
河西氏:そうですね。女性皇族はいらなくなって、結局 1世代しかいなくなりますので、もういなくなって、担っている人たちはいなくなる。そうした時に 2、 30年後に生まれてくるのは、こういう公務も知らない男性皇族だけが残っているっていう姿ですよね。それでいいと思ってるんでしょうね。
松原氏:皇室典範の改正を巡る議論の本質を皆さんに伺ってまいりましたが、会期末が7月 17日。延長もあるんじゃないかという声も出ておりますが、いずれにしても与党からすると、与党を含めて他の野党の 1部からすると、最優先でこの法案をという声になっているようであります。
さて、これどうなるのか。最後に一言ずつ皆さんにいただきましょう。保坂さん、いかがでしょうか。
保坂氏:私はですね、やっぱり天皇制はいかにあるべきか、天皇という存在は私たちにとって何なのかということを、きちんとやっぱりいつの時代も考える必要があると思いますね。それを男系男子とかそういった言葉だけで、解決するのではなくて、私たちの国にとっての意味は何なのかということを問うていく必要があると。その問うていくことの中から出てくるのは、お互いに天皇と私たちの間で良好な関係を作っていくことなんですが、それを象徴天皇制という言葉を作っていく道筋なんですね。それをね、今壊そうとしていると思って、私はこの「可及的速やかに成し遂げなければならない」というのは、それは違うだろうということで、異議申し立てをしたいと思いますね。
松原氏:はい、河西さんどういう風に見られてますか ?
河西氏:私たちにとって、みんながもちろん全員が全員オッケーだっていうことはないと思うんですけども、先ほどの世論調査でも、まだわからないっていう人が、あれだけいるわけですよね。そういうものをですね、わからない中で通してしまったら、後からこんなんじゃなかったはずだっていうことで、それこそ傷がついてしまう可能性があるわけですね。だからこそ、もっとみんなに分かってもらって、みんながそれなりに、これならいいんじゃないかっていうところを、妥協点を探るような形で、もうちょっと話し合ってほしい。だから「可及的速やか」ではなくて、もっと理解を得て、みんなが納得できれば、そんなに早くしなくてもいいんじゃないかっていう風に、私は思いますので、政府、自民、政府とか与党は、もっとみんなに理解してもらうような方策を取ってほしいなっていうふうに思いますね。
松原氏:おっしゃったように先ほど見てき見た世論調査で言うと、おそらく多くの人が養子案の意味、あるいは先ほど河西さんがおっしゃった女性皇族の扱いをどうなるかということも、おそらく理解できてないということなんでしょうか。
河西氏:おそらくそうだと思いますね。だからこれをもっと理解してもらうような説明責任っていうのが求められていると私は思います。
松原氏:声を聞くと同時に、あとは説明もすると。堤さん、どうですか?
堤氏:男系男子というのが金科玉条になっているか、そうしてる人たちがいるんですけど、そもそも男系継承が完成されたのは明治期に過ぎない。さっきみたいに明治憲法と明治典範で決まっただけです。しかもその明治憲法は、明治22年の 2月 11日に発布されるわけですけど、伊藤博文が皇位継承者は男子に限定するということを憲法で書くべきだと言い始めたのは、その 1ヶ月ほど前でしかないんです。これ明治天皇記という明治天皇の業績を詳しく記した本をちゃんと読めば、この男子継承というのがある意味、直前になって出てきたものであって、実は議論を尽くされたものではない。それがなんかずっと古からあるような議論をしている。今の議論っていうのは本当に虚構に過ぎないなと思えてなりませんね。
松原氏:皆さん、どんな風にお感じになったでしょうか。今日はどうもありがとうございました。
真っ当な意見の応酬に心洗われました。
国民の理解を得られるもの=
♪愛子天皇でええじゃないか♪
「愛子天皇への道」サイト運営メンバー まいこ