空気を読まずに不安を表明しよう

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元国交官僚・大石久和氏の著書『国土が日本人の謎を解く』を読まれたことはあるでしょうか。
これは欧米から中韓までの紛争死史観VS日本の災害死史観という差異から説き興した比較文化論です。

ユーラシア大陸の歴史では、民族間紛争や宗教戦争によるジェノサイド(大虐殺)が絶え間なく起こっており、欧米人は紛争から身を守るために築いた城塞都市の中で領主と市民との関係性から公を発見すると同時に個を確立し、同じく城塞都市の中で権力者(皇帝や王)に絶対服従したのが中国人や韓国人だと述べています。
しかし日本人は、巨大地震や水害といった大規模な自然災害が多発する狭小な土地の集落で共生・共働するうちに共同体(集団)に個を埋没させてきたそうです。
それゆえ、成果主義を始めとする新自由主義や個人主義は日本人には馴染まず、互いに顔の見える程度の大きさのチームで動く時に最も力を発揮すると述べていました。

また日本人は、脳内で作用する「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質・セロトニンの量を左右するセロトニントランスポーター(放出されたセロトニンを回収してリサイクルする)が少なく、従って世界で最も不安を感じやすい民族であるようです。
このことは大規模自然災害に備えて行動する性格(の遺伝子型)が日本人の中に多く残ってきた結果だとも言えそうですが、群れたくなる原因でもありそうです。

それでは、日本人が死の恐怖による不安に恐れ戦く臆病者集団かと言えば、そうとも言いきれないようです。
欧米から中韓までの各民族では虐殺による死が身近にあり、「人為による紛争死を拒否」していたからこそ都市を城壁で取り囲んで身を守ってきたわけですが、大規模自然災害が多発する環境に暮らしてきた日本人は、集落の周囲はおろか都や宮殿にも城壁を築いておらず、従って「天為による災害死を受容」してきたと言えます。
現在のコロナ禍において「天為とも呼べるウイルス感染死」を日本人が過剰に怖がっている理由は、

①戦後日本が死を病院や介護施設へと追いやり過ぎたこと、
②マスコミの過剰報道、
③世間様が怖がる程度には怖がって見せておく世間ファシズム、


の3つが考えられます。
そして「人為によるワクチン副作用死」を恐れないフリをすることも世間ファシズムによるでしょう。

さて、以上に挙げた日本人の「集団でなら力を発揮」「不安が強い」といった特徴は、周りと同じように行動すべきという同調圧力や世間ファシズムに繋がっているように思われます。
従って、この議論は2000年代までなら前向きに捉えられたでしょうが、コロナ(自粛・ワクチン)禍中の現代日本では国民性が最悪の方向に作用していると感じられます。
ここで言う世間ファシズムとは、かつて山本七平が提唱した「空気」と同義だと思っていただいて結構です。

では、いよいよメインの論点に入ります。
日本人は世界で最も不安を感じやすい国民性であるにも拘らず、皇室が消滅するかもしれないという未曽有の危機については不安を感じないのか?という疑問が湧いてきます。

その回答としては、
日本人にとって皇室は水や空気のように当たり前の存在だと思っているからではないでしょうか。

かつて「日本人は水と安全をタダだと思っている」と言われましたが、水については国土の70%を占める山林への豊富な降雨や降雪によって保障され、国内の安全については同胞への漠然とした信頼感、対外的な安全は宗主国(アメリカ)への無根拠な信頼感に支えられています。
しかし、駐留米軍による安全保障と引き換えとばかりに水道事業(公共部門)が水メジャー(外資の私企業)に売り渡され、水がタダ(に近い価格)でなくなる未来も近づいています。
そして、日本の国土はどこを掘っても水が湧くように、皇室も当たり前に日本に存在し続けてくれると日本人は無根拠に安心しているのかもしれません。

従って「皇室が消滅するかもしれない不安」も「対外交渉の結果として国が奪われる不安」も「副作用が数多く報告されているワクチンへの不安」も、それらを覆い隠しているのは「何となく皆が同調しているから」という無根拠な安心感=世間の空気だと思われます。

ようするに「女系を認めれば王朝が変わる」「女帝は中継ぎ」「万世男系」といった伝統ならぬ因習も、「何となく皆が同調しているから」という世間の空気に支えられていると考えられます。
そして、皇室論議における澱んだ空気の発生源を辿れば、「伝統保守」を詐称する声の大きい熱心派に行き着くはずです。
であれば、「不安」なら「不安だ」と空気を読まずに表明すべきです。
それは「皇室が消滅する不安」も「国が奪われる不安」も「ワクチンへの不安」も同様です。
特に「皇室が消滅する不安」は、男系(因習)ホシュ共同体に負けないぐらい大きな声で叫びましょう。
決して個を埋没させることなく、ヴォーカルマジョリティーとして。 

そして、ココで是非が問われたこともありますが、あえて言います。
「愛子様を皇太子に!」と。
もちろん続けて「皇室を戴くに相応しい国民に!」とも。      

(メールより) 文責 京都のS

6 件のコメント

    ただし

    2022年2月10日

     お話し自体が、非常に面白く、引き込まれました。そして、勉強になりました。
     どうも、ありがとうございました。
     Sさんのお話し、もっと色々聞きたいです。

    『空気を読まずに不安を表明しよう!』は、胸に刺さりました。
     流行語大賞へ、ノミネートして欲しいです☆

    京都のS

    2022年2月8日

     L.K.様、「共同体を守る(そして共同体に守ってもらう)ことが日本人の最大の行動原理」という件は、『戦争論』最終章のラストに「自分を一番自由にしてくれる縛りを大切にしよう」みたいな言葉がありますが、それに通じるものがありますね。「すごく納得いく流れ」だったなら安心です。
     ダダ様、四方を囲む海はシナ文明から適度に距離を取るのに役立ったはずで、そのことは日本が紛争死史観へと変わらずに済んだ理由でしょうね。
     基礎医様、「不安を表明して無闇に共同体をかき乱すこと」とは「空気を読まないこと」ですから、日本社会では嫌がられますよね。そして、不安を表明すべきという結論に「一瞬意表を突かれました」か。
     私は先日「前科者」という映画を観てきましたが、劇中には友人が主人公に向かって「○○ちゃんの弱さは武器だからね」と言う件がありました。そこから考えるに、あえて自分の弱点を晒せば、場合によりけりですが、相手の緊張を解きほぐすことが出来ます。
     共同体の内で力を発揮する「”密かな力”」とは、そういうものかな?と考えたりもします。

    基礎医学研究者

    2022年2月8日

    興味深く読ませていただきました。まず、最初に言及されている箇所「成果主義を始めとする新自由主義や個人主義は日本人には馴染まず、互いに顔の見える程度の大きさのチームで動く時に最も力を発揮する」。自分の職業である研究分野においても、まったくその通りかと思います(何か、あえて不得意な振舞をしている人が多いと感じます)。
    そして、本論の中心「「不安」なら「不安だ」と空気を読まずに表明すべきです。」一瞬意表を突かれましたが。。。なるほど、そのような劣等感、あるいは「負い目」と思っていることを表明することは、果たして弱さを見せていることになるのか(実は、”密かな力”を感じますかね)?個を確立するとは、そのようなことなのでしょうね。だから自身を持って、”愛子さまを皇太子に!”

    ダダ

    2022年2月7日

    今回も勉強になりました
    四方を海に囲まれた地理も、社会形成に影響を与えたのでしょうね。

    保守派がいう伝統(男系継承)は、シナ文化に染まることなので、、私としては国民の可逆性を信じて、愛子天皇を実現させたいです!

    l_k

    2022年2月7日

    ご投稿いただきありがとうございました(^^)
    日本人と欧米人の精神構造の比較には興味があるので、勉強になりました。

    共同体を守る(そして共同体に守ってもらう)ことが日本人の最大の行動原理になっていて、だから不安を表明して無闇に共同体をかき乱すことを避ける傾向があるように思えます。
    共同体を守るのも大事ですが、不安を受け止めても揺るがない強固さが無ければ、結局は共同体が崩壊するのを見過ごすだけになってしまいますね。
    今、目の前で起きているのはそういうことなんだと思います。

    私にはすごく納得いく流れに見えましたが、読み方が浅いですかね(^^;)
    参考文献がどこから出ているかというのは気にしませんよ。

    京都のS

    2022年2月7日

     これが載るとは思っていませんでした。男系派の本部たる産経新聞社から出た本を参考図書にしている文章ですから。しかも、なかなか強引な論理展開ですから。世間ファシズム(空気)に水を差すには声を挙げるしかありません。そのためには、まず2月と3月のゴー宣道場に応募、あるいはネット視聴です。

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