「どう生きるか」を他人に決められて堪るか!(前)

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 宮崎駿氏の最新作「君たちはどう生きるか」をご覧になった方はおられるでしょうか。
(以下にはネタバレあり)
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 本作の舞台は昭和19年の日本で、軍需産業の工場を営む男の息子・牧眞人は空襲で母を失い、疎開した先でアオサギによって異世界へ誘われ、そこで冒険を繰り広げるという物語です。舞台が作劇の難しい時代ゆえなのか、本作は隠喩を多用したファンタジー作品となっていました。

 眞人の迷い込んだ異世界は人の生死を司る世界で、鳥と人間が対立していました。主な登場人物(?)は、キリコ(鳥と戦う女性:元の世界では婆やの一人)、ヒミ(鳥と戦う女性:元の世界では眞人の母ヒサコ)、ナツコ(眞人の叔母で継母)、アオサギ(眞人を異世界に連れ込んだ)、ペリカンたち(生まれる前の魂を食い荒らす存在)、インコたち(軍国主義者の隠喩)、インコ大王(権力者の隠喩)、大叔父(異世界を成り立たせている影の存在:元の世界でも眞人の大叔父だった故人)といった人々です。

 そうなのです。インコとインコ大王は戦前日本の隠喩です。本作を賞賛する左翼はインコたちに軍国日本と天皇を見出すのでしょうが、私は大叔父こそが天皇だと考えます。インコは好戦的な空気を自家中毒的に醸成した日本的世間であり、インコ大王はマスコミや世間に担がれた軍部の指導者に過ぎません。昭和天皇は立憲君主ゆえ意思を明示できませんでしたが、言うまでも無く平和を願っていました。

 劇中の大叔父は13個の石を組み立てて異世界を構築していましたが、悪意の無い新しい石で戦争の無い世界を再構築する仕事を、血縁者である眞人に継いでほしいと願っていました。結果的に眞人は元の世界に戻ることを決断しましたが、もし眞人が異世界の再構築を担った場合、手続き上は大叔父から祖父への傍系継承、次いで祖父→母→眞人という女系継承になったはずです。ただ、眞人は大叔父の仕事に意義を見出せず、跡を継がなかっただけです。

 以上をリアル日本の皇位継承問題に重ねると次のようになりましょう。男系・女系・男子・女子に拘わらない継承制度に改め、かつ「どう生きるか」は各皇族方に決めていただき、同時に天皇・皇族という生き方を可能な限り「やりがい」「生きがい」「実存」に満ちたものとする努力を国民は絶対に怠ってはならないということです。

文責:京都のS

4 件のコメント

    京都のS

    2023年8月26日

     後編は( https://aiko-sama.com/archives/29559 )です。

    京都のS

    2023年8月26日

     reinyan様、※ありがとうございました。極左は基本的に天皇にも戦争責任アリと考えますし、明治維新革命で君主をギロチンに掛けられなかったから、GHQ革命で今度こそギロチンに掛けられると期待したのに、それも叶わなかったので落胆していました。だから、せめてファンタジーの中で天皇に比定できるキャラを悪辣に描く作品を過大評価することで憂さを晴らしているのでしょうねぇ…。
     ちなみに、「どう生きるか」は宮崎作品の中では駄作の部類に入るのでテレビ放送を待つべきかと(笑)。

    reinyan

    2023年8月25日

    最近の小説や漫画にファンタジーが多いのは、考証も厳しくなり、最新の説に対して読者の目も厳しくなったから、無用のクレームを避けた結果だと聞きました。
    昭和19年が舞台で宮崎駿監督が『天皇』を意識しないわけはなく、インコ大王という権力者に天皇を当てはめるのは無理があります。(左翼思想では軍国日本も天皇も権力者に一括りされる?)京都のSさんの考察の通りかもしれませんね。(因みにまだ観てません(>_<))

    京都のS

    2023年8月25日

     後編も本日中にアップしていただけるようです。後編の題材は「文藝春秋9月号」の記事です。

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