「正直なウソつき」の、『嘘だらけ』古代史語録⑤

Post's thumbnail

【第2章②】

●北畠親房の『神皇正統記』における「第〇〇世」は、皇統を継いでいく血統=「正統(しょうとう)」の事であり、今上陛下も秋篠宮も神武天皇の七十三世、悠仁親王殿下は第七十四世である。(p97~98)

~倉山満『嘘だらけの日本古代史』第2章より~

〇「正統(せいとう)」と「正統(しょうとう)」は、どうやら意味が違うらしいですね。 北畠親房の『神皇正統記』を引用しながら、倉山はそんな事を言ってました。

倉山の解釈だと、「正統(しょうとう)」とは「皇統を継いでいく血統のこと(p97)」だそうな。

少々難しい説明になりますが、『神皇正統記』では、初代神武天皇から第97代 後村上天皇 (神皇正統記における表記は「第九十六代」) までの歴代天皇を、「第〇〇代」「第〇〇世」の二つで数えています。

例えば、

仲哀天皇は「第十四代、第十四世 仲哀天皇」

継体天皇は「第二十七代、第二十世 継体天皇」

といった具合です。

また、

「第十七代、仁徳天皇」とか

「第四十代、天武天皇」

みたいに、「第〇〇世」には含まれない天皇も、多数いらっしゃいます。 北畠曰く、仲哀天皇が「代と世とかはれる初なり(岩佐p56)」だそうな。

倉山はこの「第〇〇世」という表記を指して、「正統(しょうとう)」を継いでいる天皇と皇族だけを数えるものだと解釈しています(倉山p98)。

100歩譲って、この解釈をその通りに受け止めたとすると、

仁徳天皇も、アナタが第5章で激推ししてた「天武系」の祖である天武天皇も、もちろん草壁皇子も、「正統(しょうとう)=皇統を継いでいく血統」には含まれない、という事になってしまいますが、それでもいいのかい?

また、倉山含め男系カルト論者の多くは、北畠のいう「正統(しょうとう)=第〇〇世」の事を、男系血統の事だと短絡的に解釈する傾向もあるようですが、

この解釈だと「しょうとう」とやらに含まれない男性天皇だって、30人近くいる事になってしまいます。

その方々は、男帝なのに男系血統じゃないって事か?

ちょっと気持ち悪い言い方にはなりますが、確かに、神皇正統記に記載された最後の天皇である後村上天皇に到達するまで、「神武天皇から受け継いだ血のバトンを次世代に繋いだ天皇」という意味では、倉山の解釈も「大ハズレ」とは言えないかもしれません。「仁徳系」も「天武系」も、途中で途絶えている事は確かですから。

ダンケー目線で見ればね。

ただしその解釈だと、少なくとも皇位における男女の性差は関係なくなります。「後村上天皇に直系で辿り着かない天皇は、男帝も女帝も全員、正統(しょうとう)ではない」という事になっちゃいますから。

著書の中で、北畠親房も「父死して子立を世とあり(岩佐p57)」と記述しているように、また故・田中卓氏も「親子関係で継いでいくのが正しいが、そうもいかん場合もあるというものです(小林p332)」と述べておられる事からもわかるように、『神皇正統記』が「正統(しょうとう)」として重んじているのは、あくまで「直系継承」です。

その見方に沿えば、誠に畏れ多いけど悠仁親王殿下ですら、「神武天皇の第七十四世(p99)」どころか、「正統ではない」という事にすらなってしまいますよ。

お父様である秋篠宮殿下は既に即位の意志を否定されているのですから、今上陛下から見れば「叔父→甥」の継承になっちゃうもんね。

まさかとは思うけど、悠仁様を無理矢理「しょうとう」のポジションにする為に、秋篠宮様に即位を強制するつもりじゃないだろうな!?

それでも今上陛下から見れば、傍系に皇統が移る事に変わりはないけど。

文責  北海道  突撃一番

参考文献

・岩佐正校注 『神皇正統記』岩波書店1975年11月17日

・小林よしのり『新天皇論』小学舘2010年12月20日

5 件のコメント

    突撃一番

    2024年1月12日

    みなさん、コメントありがとうございます。

    実際、兄弟継承が常態化すれば、壬申の乱のような戦の火種になる事は、後述するように持統天皇の時から危惧されています。

    神皇正統記が「直系」を重んじる書き方をしたのも、南北朝という二重権威が発生していた時代背景と、無関係ではないかも知れませんね。

    もっとも、北畠親房が生きた時代は、平安時代以降、律令に備わる父系主義が浸透し切って、尚且つ武士が台頭していた世の中ですから、若干男系寄りの書き方になっても、仕方ないのかも知れません。

    基礎医学研究者

    2024年1月11日

    (編集者からの割り込みコメント)今回は編集していて、特に良いと思いましたね。自分、「皇位継承問題」のことを知るようになってから、かねがね、もし「~系」を問題にするのならば、それは男系か女系かではなく「直系」か「傍系」か?ということだろうと、感じていたからです。新天皇論を読んだ時点では自分、そのことがまだピンときていませんでしたが、皇室の方々は「安易に傍系に移らないこと」を意識していたことが、リマインドされました(壬申の乱や南北朝時代は、まさにそのことによる弊害だったろうと)。

    ふぇい

    2024年1月11日

    これはまずいぞ倉山満。
    悠仁さまは「正統ではない」になっちゃうよ!

    京都のS

    2024年1月11日

     明快な論理でした。素晴らしいです。

    サトル

    2024年1月11日

    今回もその知識に驚嘆しつつ拝読いたしました。
    突撃一番さんならでは。

    相変わらず倉山はオカシイのが良く判りますね。
    「自縄自縛」は、かれの性癖なんでしょうか?
    突撃一番さん。存分に吊し上げ、シバキまくってください。

    あ!いかん。倉山みたいに「本来の意味と違う伝え方、理解」してしまいました。
    「性癖」ではなく、◯◯嗜好ですね。
    知らんけど。

    論理の自縛自縛が大好きな倉山。
    構ってもらうと、もっと嬉しいのかな?

    あ~キモチワルイ。

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。