【結言】~倉山満と、内閣法制局への苦言~
憲法で定められた「国民平等の原則」に例外規定を設けるという事が、どれ程恐ろしい事なのかをまず、認識してください。
これはもちろん、倉山氏一人に対してだけではなく、世襲継承の為の例外を認めた内閣法制局に対しても、声を大にして訴えたい事です。
旧宮家という「家柄」、あるいは男系血統という「血筋」を理由に国民を分断するというハイリスク行為が、「皇位の世襲継承」を維持する上で絶対に必要不可欠だと倉山&内閣法制局が認識しているのであれば、国民差別すら容認せざるを得ないようなレベルでの、確実な情報に基づいた「よっぽどの理由」を呈示できなければ、到底認められませんよね?
「神武天皇以来、皇位は一貫して男系で継承されてきたのだから、その伝統を崩してはならない」
というロジックこそが、男系派が主張する「よっぽどの理由」だった筈です。
ところがどっこい、これまでの高森明勅、小林よしのり両氏をはじめとする方々の活躍によって、男系派の「一大ドグマ」だった筈のこの理論も、次から次へとボロが出始め、いまや異なる立場からいくらでも反論出来るレベルの「俗説」に成り下がってしまいました。
そのたびに男系派は、
「皇位自体は女系による継承もあったが(一例:元正天皇)、男系の血を引いていない天皇はいないから皇統は男系だ」
⇩
「男系の血を持たない民間男性が皇族になった先例が無いから、その新例を作ってしまう女系天皇は認められない」
⇩
「即位後の女帝が結婚・出産した先例が無いので、愛子様に生涯未婚を強いてしまうから女帝もダメだ」
等々、ひたすらドグマのスリカエに走るばかりの有り様です。
おまけにここ数年来、義江明子氏らの研究成果も影響してか、前提であった筈の「古代からの血縁世襲による継承」すら史実かどうか疑わしくなってくると、
「国の正史である日本書紀で万世一系的に書いてあるんだから、疑うな!」
などと、一次資料ですらない『日本書紀』の記述を一言一句盲信して、自分達にとって耳障りの悪い研究成果を一切ガン無視するという「脳ミソ丸投げ思考停止状態」に突入してしまいました。
今回私が批判した倉山の新書は、まさにその典型例と言えるでしょう。
憲法に規定された「皇位の世襲」を守るのであれば、政府見解でも示されているように、女系継承を認めても違憲にはならない筈です。
明らかに合憲である方法論が目の前にあるのに、(一部のホシュ勢力にゴマを擦って)忌避するあまり、最高法規である筈の憲法の、重大な禁止事項に例外を設けてまで「国民差別」を政策として実行してしまう、その大本の根拠が、ここまでアヤフヤな理論のままで本当にいいのでしょうか?
繰り返しますが、男系カルトは日本国民を、神武天皇の男系血統という「血筋」を根拠に、二分しようとしています。「法の番人」と言われてきた内閣法制局ですら、とうとうその勢力にお墨付きを与えてしまいました。
このまま岸田政権が、令和の有識者会議が恥知らずにも提示した愚策を採用すれば、「権力による国民への血統差別」は、現実のものとなるでしょう。
だったら最低限、神武天皇以来の男系血統が、間違いなく今上陛下まで連続しているという事を、時の権力者の都合で編纂したに過ぎない日本書紀にすがるのではなく、ちゃんと「一次資料」を提示して、あるいは歴代全ての天皇のDNA鑑定でもやって、証明する事が不可欠でしょう。
国民差別の強行を、憲法上の禁止事項の例外規定として認めさせたいなら、それが最低限の「説明責任」です。
「日本人はけっこう正直に話す、という特徴」があるから、日本書紀に書いてある事はウソとは言えないだと?
(倉山p32)
そんなザル理論で、本当に国民を分断する気か!?
文責 北海道 突撃一番
7 件のコメント
黄泉瓜照令美
2024年5月1日
『噓だらけの日本古代史』を倉山氏の神武天皇実在論かと期待してかった。……神武天皇実在の確たる証拠や倉山氏の論証が読めると思ったが、期待はずれだった。
突撃一番
2024年1月23日
本文中で書き忘れたので追記します。本ブログは、
倉山満『嘘だらけの日本古代史』扶桑社2023年11月1日
に対する批判ブログの、15回目です。
突撃一番
2024年1月23日
なんだかんだで、15回に渡るお付き合いと多くのコメント、皆さん本当にありがとうございました!
SSKAさんの見識の深さには、いつも脱帽です。
是非、ブログ投稿も読んでみたいです!
そりゃ自慢じゃないけどね。
基礎医さんおっしゃる通りで、多分、少なくとも倉山塾の門下生よりは、俺の方がよっっっっぽど深く読み込んでますよ。この本。
そりゃ、コロナに関する倉山の論評には割と賛成出来る部分は多いけれども、少なくとも彼が女系派に寝返らない限り、俺は「倉山アンチ」でい続けなきゃならん事に変わりはありません。
こんなバカが政治家にまで影響与えてる現状は放置出来ないし、この本に関してマトモに名指しで批判してる知識人だって、俺が知る限り、一人もいないんだから。
よしりん先生ですら、残念ながら誌上では批判出来ないしね。
おまけにX上では俺もブロックされてるもんだから、「愛子様サイト」の場を借りて論破させてもらうしかないのです。
ふぇいさん基礎医さん、いつもありがとうございます!
都合の悪い論点になると主張の核心に触れる事を避け、なんとなく結論をボヤかしてサブタイトルと雰囲気でごまかそうとしてる辺りとか、重箱の隅に隠れた矛盾点までちゃんと読み込んで暴露してくれるアンチの存在は、大事にしなきゃダメだよ倉山クン(笑)!
だからさっさとブロック解除して、ガチ喧嘩しようやwww
オトモダチの竹内Y子も誘っていいからさ(*^o^)/\(^-^*)
サトルさんご指摘の通り、この『嘘だらけ』シリーズはどうやら続編も予定されてるそうで、おそらく藤原摂関時代の話とか、南北朝時代の「治天の君」の話とかも今後は出てくるでしょう。
とりあえずこちらも、次の論破祭りの為の予習という事で、『光る君へ』でも観ながら楽しみに待っていましょう!!
華やかな宮廷文化はなんかダルいし、『鎌倉殿』と違って、登場人物がとかく「藤原」·「藤原」·「藤原」だらけで覚えにくいけど、意外とおもろいです。あと、藤原氏が皇位継承を牛耳ってた時代の人間関係とかも整理しやすいので、公論戦士の皆さんにもオススメですよ。
丁度、シナ由来の律令制度に内包される父系主義的価値観が浸透して以降、元々日本にあった【男女双系】的血統観が、貴族社会においてどのように変化していったのかが、義江明子さんの本でもあまり詳しく書かれてなかったので、勉強するのに丁度いいや、と思って観てます。
セーラームーンとかエヴァのミサトさん役で有名なあの人が、一話で出番終了というのは残念だったけれども!!
サトル
2024年1月22日
本当にお疲れさまでしたm(_ _)m
倉山は相変わらず……とよ~くわかりました。
奴の著作は「血が逆流」しそうな内容ですよね、本当に。
前作?の感想にも書きましたし、基礎医さんも指摘のとおり、
「倉山支持者」って本当に最後まで読んでんのかね?とあらためて。
「裸の王様」のストーリーみたいに、「ばかにされたくないから」、わかったフリしてるだけだと思っています(笑)
馬鹿なのに、調べる……ということを放棄する。
そんな態度が故に、簡単?に小物は論破され沈黙或いは逃走する……んじゃないかと。
次は「平安時代を書く!」と意気込んでる倉山。便乗まるだし。馬鹿もまるだし。
ふぇい
2024年1月22日
大作を送っていただきありがとうございました!
本当に本当にでたらめのままの本なのだとよーくわかりました。
こんなのよく出せるよな。
倉山満の不誠実さから、日本人は正直ではないというのがよくわかります。
基礎医学研究者
2024年1月22日
(編集者からの割り込みコメント)大変、ご苦労さまでございました。「皇位継承問題」が動いているタイムリーな時期に、連載いただき、感謝致します。サトルさんの連載のときもそうでしたが、編集していて、こちらも勉強になりました。たぶん、倉山本って、このようにしっかりよんでくれる読者はいないのでしょうね。そうでなければ、この内容は様々な批判にさらされるハズで、賢明な書き手ならば、読者の意見も取り入れて記述がアップデートしてもよいはず(しかし見られるのは、すり替えのみ( ̄▽ ̄;)。まあ、彼らが改まることはないでしょうが、この連載も貴重な”記録”になったと、自分は思います。ありがとうございましたありがとうございました!
SSKA
2024年1月22日
過去に敵わない大国唐に対し背伸びして歴史を大きく見せる事で虚勢を張ろうとした先人の苦渋の選択や決断の跡ではあっても、情勢の全く異なる現代人が引き継ぐべき理想や目標ではない、その程度すら分からないのが倉山の様な男系派です。
昨夜の別投稿に寄せたコメントにも通じますが、双系派は「男女」両性(両統)の協力や共存による皇室の安泰を望むのに対し、連中が時代錯誤な差別主義を皇室に徹底させようとした結果、身勝手に待望していた秋篠宮家までも傷付けている事実に一向に気付かない振りをし続けるのでしょうか。
普段から現実の事象を無視し反論の重ねられた嘘を真実として多くの人に広めながら、自身は清廉潔白で正直者だと思い込む、そんな人に日本人代表だと語って欲しくはないですね。