【比較記事】「安定的な皇位継承の会議」における新聞報道①(毎日と朝日新聞)

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つい先日、共同通信社ほぼオンリーで予告されたように、5月17日の午後に衆院議長公邸で、「安定的な皇位継承の会議」が、開始されました。予告とは打って変わって、このニュースは、テレビやネットニュースで伝えられましたが、では、2024年5月18日、新聞がどう報じたのか?を、以下みていきます。

今回、自分はこのような感じかと思います。

毎日>朝日≒読売>日経>>産経

毎日新聞は、ちょうど1週間前、オピニオンに私からみるとイケてない記事を掲載してしまいました。でも、毎日新聞は、皇位継承問題については、”ここぞ!”というときには、やはり外しません。今回は、朝刊の2面と5面を使い、この問題を大きく取り上げました。

「焦点」女性の「夫と子」身分は 皇族確保 与野党協議
https://mainichi.jp/articles/20240518/ddm/002/040/105000c
*デジタル版で、導入だけ読むことが可能です。

この記事は、男系維持巡り綱引き今国会の合意見通せずの2本立てで、形成されています。
前半は、政治部の竹内望(昨年12月30日に自民党懇談会のスクープ記事を出した記者)、田辺祐介(予算成立後の記者会見で、唯一岸田首相に皇位継承問題に関する鋭い質問を浴びせた記者)、および川口峻記者による記事です。

この記事、昨日の会議の状況を追うだけにとどまらず、さまざな角度から切り込んでます。
*今回議論される案は、以下になります(これは、リマインドです)。①女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する、②旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする。

毎日新聞は、表に[夫と子も皇族、あるいは夫と子は一般国民]という項目を設けて、①案の問題点をうまく整理しています(”安定的な皇位継承”につながるのかどうかをポイントにしているところが、毎日らしい)。つづいて、この記事で重要な部分を引用します。

・(①案について)参加者である立民党の馬淵澄夫氏は会合後、記者団に「(配偶者やや家族に皇族の身分が付与しないで)一体となる家族の営みが図れるのか。多くの方が疑問に思うところだと思う」と語った。

・報告書では①②案とも、対象者に皇位継承権を与えないため、与野党で意見が対立する安定的な皇位継承の問題に直結するわけではない。にもかかわらず、見解に隔たりがあるのは、先の議論を見据えていることが背景にある。
 ①案を巡っては、女性皇族の子に皇位継承権を認めた場合、父方が天皇の血を引かない女系天皇が将来誕生する可能性につながる。「男系男子で継承してきた皇室の伝統が破壊される」として、自民保守派が反対するのはこのためだ。
 一方、旧民主党の野田佳彦政権が12年、「女性宮家」創設の論点整理をまとめた経緯がある。女性皇族にも皇位継承権を認めることも視野に、夫と子も皇族とすべきだというのが立憲の本音だ(*この記述は、後半の記事にも見られる)。
 ②案についても、自民は4月にまとめた党の見解で「安定的皇位継承のために必要」と明記した上で、養子として皇室入りした男系男子の子に皇位継承権を与えることが「適切」と主張した。
 表向きは皇位継承問題と切り離して議論を行うものの、合意形成は難航が予想される。

後半の記事は、野間口陽、源馬のぞみ、および高橋祐貴記者によるもの(私見では、今回は政治部でも皇位継承問題を良く知っている記者らで記事が構成されています)。自民党の保守系議員は「議論が始まれば一瀉千里(いっしゃせんり)に進む」との見方を示し、公明党幹部も「各党で合意できれば、今国会中に法改正できる」と語っている、という感じではじまる。
 しかし、額賀氏は日程を示したものの、与党側がいうようには進まない可能性が高い。最後の1文を引用します。

・野田氏は「国家千年の計に関わる。拙速にやるべきではない」ないとも述べ、丁寧な議論を求めた 。

皇族確保 各党の調整焦点
https://mainichi.jp/articles/20240518/ddm/005/040/107000c
*議長の額賀氏の意見は、デジタル版で読めます。

ここには、5紙で唯一、昨日の会議でできた各党の調整争点がでてきています。すべてを紹介できないのですが、以下に立憲民主党と共産党の意見を引用します。

・女性宮家の創設を 立憲民主党・馬淵澄夫氏
私たちがまず掲げているのは、女性宮家の創設だ。女性皇族が婚姻後も皇族として残り、その子と配偶者に皇族の身分を付与するかしないかは両論併記しており、これをしっかり議論すべきだ。
・女性天皇に合理性 共産党・小池晃氏
女性天皇を認めることは憲法の条項と精神に照らして合理性を持つ。女系天皇も同じ理由から認められるべきだ。
(*なお、昨日の額賀氏の記者会見を聞いているかぎりでは、論点まとめ案を事前に提出していない先の共産党に加えて、社民、れいわ、沖縄の風のような党が女性天皇容認も含めた議論を、といっていたのは、意外に目を惹きました(逆にいうと、男系維持が第一のような意見は、目につかなかった、という事です)。

続いて、朝日新聞です。

皇族数の減少、宮内庁に強い危機感 与野党協議は難航避けられずhttps://www.asahi.com/articles/ASS5K3D4KS5KUTIL04HM.html?iref=comtop_7_04
*デジタル版で、1部を読むことが、可能です。

朝日新聞は、3面(総合面)の半分を使って、この問題を掲載しています。朝日は、政治部と社会部記者混成チーム(笹川翔平、小手川太朗、および中田絢子記者)の記事構成で、私見では、「皇室」に寄り添った記事を最近多く掲載し、かつ政治部のときに公明党の論点整理案の経過をいち早く報じた、中田絢子記者の貢献は、大きいと思います。
 紙面には、「自民・維新『女系天皇』に懸念 立憲配偶者や子、議論必要」というタイトルが書かれているのは、今回の①案の対立点をうまく表現していると思います。家系図の掲載も、皇族の現状、および皇位継承順位の不安定さをリマインドしていました。

これに加えてよかったのが、5紙の中で唯一、名古屋大准教授の河西氏の談話を掲載していること。以下、主要な部分を引用します。
(上皇さまの退位からすでに5年以上が経過おり「遅すぎる!」と指摘した上で、

・各党間の協議は、細かな制度面での議論になると一致点を見いだすのは容易ではないとみているが、「今、一定の結論を出さないと悠仁さまが即位するころには、支える皇族方がほとんどいないという事態にもなりかねない」と指摘する。

・ 与野党が「静謐(せいひつ)な環境」で議論する重要性を主張することについても「皇室制度が多数の国民の理解のもとで安定的に成り立っていることをみれば、結論には民意を反映させ、大多数の国民が賛成できる環境をつくるべきだ」と話した。

いかがでしょうか?

ナビゲート:「愛子天皇への道」サイト編集長 基礎医学研究者

6 件のコメント

    ダダ

    2024年5月21日

    毎日新聞に意見投稿しました。
    ・立法事実がないだけでなく安定的な皇位継承に寄与しない法律を推し進めていることが理解できない。
    ・憲法を毀損する自民党案に対して妥協点を探ることが、立憲民主主義および憲法改正権を持つ国民として適切な態度とは思えない。
    ・立憲君主である象徴天皇に対し違憲違法となる皇族数確保案を提案しているのだから、国会議員は憲法擁護義務を放棄した悪人。
    ・皇室を破壊するのは女系天皇ではなく自民党。
    ・法倫理を持ち合わせていない議員には退場してほしい。

    朝日新聞に意見投稿しました。
    ・河西秀哉准教授のコメントに共感できる。
    ・特例法の付帯決議「女性宮家の創設」すら検討せず、皇統断絶の危機を招いている国会議員の責任は重い。
    ・安定的な皇位継承に必要な女性女系天皇の公認と女性宮家創設は自民党案と異なり、憲法を毀損しない。
    ・愛子さまか悠仁さまではなく、愛子さまと悠仁さまに心を寄せるべき。

    基礎医学研究者

    2024年5月18日

    >mantokunさん
    コメントありがとうございました。そうですね、当サイトでは「本当に必要な議論はこれだ!」という期待をこめて「安定的な皇位継承の会議」のタイトルをつけていますが、「皇族確保の与野党協議」というタイトルは、毎日だけではなく結構使われているのですよね(これだと、たしかにmantokunさんいわれるように、読者をミスリードする可能性があるので気になるところですが、何かあるのでしょうかね?これは、自分にも謎です)。で、やはりこういうのも含めて、結局のところは、読者の後押しで、新聞の覚悟度合も決まっていくのでしょうね。今回、自分、やはり毎日新聞が読者の後押しを感じていると思ったのは、「女性皇族にも皇位継承権を認めることも視野に、夫と子も皇族とすべきだというのが立憲の本音だ」という踏み込んだ表現を用いていたこと。もはや、民意はそちらにあると見切ったのでしょうね。そして、両論併記といわれている意見など、本当は無視しても良いと主張したいのでしょうね(まあ、そこまでは書けないと思いますが)。これからが、新聞社にとっても重要になってくるので、頑張ってもらいたいものです。

    >SSKAさん
    コメント、ありがとうございました。まさに、おっしゃる通と思います。そして、野田議員はご推察通り、やはり難しいかじ取りをされていると、自分も感じました。国民の後押しが、やはりエネルギーになっていくのは間違いないですね!

    SSKA

    2024年5月18日

    毎日の整理は先の見通しまで正しく伝わりますし、朝日は基本と河西氏の説明が大きいです。
    地上波の報道でも徐々に取り上げられ自民案は無理との印象は広がると思いますが結論はまだ読めません。
    提出が最も遅いのに速やかにと言う自民はとことん舐めています(立民以外もですが)。
    共産は良くも悪くも護憲と戦後民主主義を守るで政策は親皇室では無いのに結果として近くなった、れいわは全くの無関心なんですね。
    野田氏の言葉からはかなりの覚悟を感じますが、精神的にきつそうに感じるので応援を欠かさない様にしたいです。

    mantokun

    2024年5月18日

    各紙の比較ありがとうございます。ずっと仕事が忙しくて色々感想なども書けていませんが💦こちらのサイトでは毎日情報を確認させていただいています。

    毎日新聞さんが皇室報道に一番安定感があり、「女性皇族の「夫と子」の身分」が重要なのはその通りなのですが、この見出しだと、論点が様々に存在しているように見せかけようとする自民党その他の男系固執逆賊議員どもの思う壺になってしまうのではないかという懸念も持っています。

    論点は「皇位継承を直系長子優先かつ性別不問とするよう、今すぐに皇室典範を改正するか否か」のただ一点です。女性皇族の夫と子供を皇族にしてもいいかなんて議題を論点にするのが、そもそも間違っています。そんなことを焦点にすること自体が、不合理な男尊女卑思想に基づく異常な発想でしかありません。男性であれば、親の代から名字を持つ国民でさえ皇族に据えるつもりのくせに(男系固執派の連中はなぜこれが王朝交代だと思わないのか謎)、生まれながらの皇族である今上天皇の皇女には皇位継承権を認めず、ご結婚後も皇室に留まってもらいながら、夫と子供の身分は国民とするとは一体どういう了見なのか。これが極めて時代錯誤かつ非倫理的な男尊女卑思想に基づく発想でなくて何なのか。

    まして、現在の皇室から20世600年も離れた、父の代から国民の男性だけを直接皇族にし、あまつさえ皇位継承権まで認めようとは論外もはなはだしい。実現しようもない、統一協会とその手下の国会議員ども以外誰も望んでない議題を、さも実現可能性があるかのように話し合うなど、時間と労力の極限の無駄です。もう一刻も時間の猶予などないというのに。

    保守を嘯きながら極左の機関紙に成り下がった産経新聞はともかくとして、他の新聞各紙には、圧倒的多数の民意に背いて愛子さまに皇位継承権を認めることを断固として拒否し、無意味な議題で仕事してます感を醸しだしながら、姑息な時間稼ぎを狙う男尊女卑議員たちの無作為を徹底的に炙り出し、糾弾することを願います。

    基礎医学研究者

    2024年5月18日

    >takahireさん
    コメントありがとうございました。なるほど、3大ブロック紙の1つ中日新聞にこの話題が記事になったのは、安心しました(貴重な情報)、ありがとうございます(m_ _m)。当サイトのタイトルは上掲のようにしましたが、確かに中日新聞だけがこのタイトルを使っているわけではないのですが、あまりいい気はしませんね。それと、令和や共産については、そういう意見があってもよいと思います(実際、思想的な危うさに関しては、正しい指摘)。でも、こういう言う意見がまったく紹介されないと、立憲民主党が国民の声を一番代弁しているにも関わらず孤立無援となってしまうので、与党へのけん制という意味では、額賀議長が記者会見で紹介していたトーンは、私は悪くないと、思った次第です。

    takahire

    2024年5月18日

    5/18(土)中日新聞28面に、各党見解がのっておりました。
    タイトルが「皇族数確保を巡る各党見解」でいやな気持です。
    (安定的な皇位継承でしょう!)
    私は穿った見方をするので、「令和新選組」と「共産党」は同じカテゴリーにいれてしまうのですが、令和新選組は反天皇ですね。そして、共産党からは法律の匂いしか感じません。距離を取るべきだと思います。

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