朝日新聞からの記事です。
皇族数確保、議論大詰め 与野党協議の議事録 識者が読み解き
https://www.asahi.com/articles/DA3S16207359.html
*デジタル版で、一部を読むことが可能です。
毎日新聞が特集記事を出して以来、皇位継承問題に絡む記事が全国紙で続きます。この記事は、2025年5月5日、朝日新聞朝刊の22面に掲載されました。冒頭を引用します。
安定的な皇位継承に向けた与野党協議が大詰めの段階に入っている。議長らは皇族数確保策について今月にも取りまとめ案を提示する見通しだ。しかし、公開された議事録を識者に読み解いてもらうと、緻密(ちみつ)さに欠ける議論のありようや、重要な視点の欠落が浮かび上がった。
まず、憲法学者の大石眞・京都大名誉教授の見解について抜粋します。
大石氏は、自身は養子案に慎重な立場としたうえで「皇室制度の円滑な運用は憲法の『要請』という前提に立てば憲法との整合性を問う議論をほぼ乗り越えることができる可能性がある」。法制局としては「踏み込んだ」発言で、制度具体化の糸口になるとみる。
これは、内閣法制局の進め方の法理論的な解釈に関することで、自分はこの部分については、正直しっくりこないところがあります(しかし、情報提供として載せます)
ただ、皇位継承のあり方については、岸田内閣の下、有識者会議や自民党などが「今後議論を深めていくべきだ」としており、現行のまま男系男子に限定するのか、女性・女系にまで拡大するのかという議論は与野党協議の主題から外れた。
こうした点について、大石氏は「大事な問題は先送りにしてしまうという日本の政治のあり方が、ここでも問われている。現在の検討内容では、一時的に皇族数を確保することができたとしても、いずれ皇位継承の問題が出てくる」と危惧する。
つづいては、笠原英彦・慶応大名誉教授の言及について。
(議論が「きちんと整理されていない印象がある」と前置きし)皇統に属する男系男子を皇族の養子とする案は「憲法や皇室典範に抵触し、皇位継承上の深刻な問題を引き起こすおそれがある」との懸念を示す。特に、養子の対象を旧11宮家の男系男子の子孫に限定することは「憲法14条が禁ずる、門地による差別にあたるおそれがある」と指摘する。皇籍を離れた男系男子の子孫は旧11宮家以外にも存在し得るためだという。
笠原さんの言及は続きますが、この記事でポイントとなるのは、【皇位継承制度のあり方(国民の理解・支持 得られるか)】のセンテンスかと。
(母方で天皇とつながる「女系」天皇への道を開くとの警戒が背景にあることをふまえて)「男性皇族と結婚する女性は皇族になるが、皇位継承権はない。女性皇族と結婚する男性やその子についても同様でいいのではないか」と。
自分は、”その子”という部分についてはちょっと気になりますが、(これだと、「皇位の安定継承」につながっていかないので)これまでの制度との比較で論じているのは、1つ評価できると思いました。
そして、小泉内閣で内閣法制局長官を務めた(すなわち、平成の有識者会議にたずさわった)阪田雅裕弁護士の談話です(その箇所を引用します)。
平安時代の皇位継承のケースや近世以前に皇族に準じた扱いをされた有力者がいたことなどの事例を踏まえての議論が目立つことに違和感を覚えたという。
「伝統は大事だが、それよりも、現在の大多数の国民の価値観に合った象徴たる天皇とは、という問いが議論の原点であるべきでしょう」
小泉内閣で首相の私的諮問機関として設置された有識者会議は、皇位継承制度を検討する基本的な視点としてまず、「国民の理解と支持を得られる」ことを掲げた。阪田氏は、憲法が天皇の地位を「主権の存する日本国民の総意に基く」と定めていることを踏まえ、「これからの天皇制のありようを見据え、国民の賛成を得られるものを作り上げる作業こそが求められている」と話した。
この記事は、皇室担当の中田絢子記者らによって書かれたものですが、中田記者は皇室担当→政治部→皇室担当ということから、皇室の記事については、今年1月にも良質な記事が提供されています。なによりも、毎日新聞からはじまった、「記事の連鎖」が始まっている様子がみえてきているので、良い傾向と思う次第です。
ご参考までに。
ナビゲート:「愛子天皇への道」サイト編集長 基礎医学研究者
13 件のコメント
daigo
2025年5月6日
私も朝日新聞に意見投稿しました。
養子縁組案は門地による差別です。
ゴロン
2025年5月6日
私も朝日新聞にお礼の投稿をしました(5/6付の「皇室の行方」の阪田氏のインタビュ2ー記事に対して)。
・・・
「皇室のゆくえ」「「皇族数確保」は安定的な皇位継承が目的国民の価値観に合う議論を」について
小泉内閣で内閣法制局長官を務めた阪田氏のインタビュー記事の掲載ありがとうございます。愛子さまの即位を前提とした平成の有識者会議の内容がよくわかって、素晴らしいと思います。
小泉内閣で、皇室典範改正をして「男女問わず、直系長子優先」の制度になっていれば、現在、くだらない男系継承固執制度の議論に時間と金を費やす必要がなかったのにと、残念でなりません。故・安倍氏を含め男系固執議員どもの罪は極めて重いと思います。
現在の皇位継承の議論の基礎となっている令和の有識者会議の結論は、安定的な皇位継承を完全に無視し、男系継承固執ありきの議論で進め、憲法違反の疑義がある中でまとめられたものであり、阪田氏が関わった2005年の有識者会議とは比べものにならないお粗末で酷いものだと思います。
内閣法制局も阪田氏がいたころとは異なり、全体会議に出席されても、無茶苦茶な理屈で政府案にお墨付きを与えようとする御用法制局に成り下がっています。
ほとんどの国民が「女性天皇」に賛成です。天皇陛下のお子様である愛子さまに次の天皇になって頂きたいのです。これが「国民の価値観」であり「国民の総意」といえます。
阪田氏の言う通り、「安定的な皇位継承」という根本に立ち返り、2005年の有識者会議の結論について、全体会議とかいう静謐な環境などではなく、国会でどうどうと議論すべきだと思います。
今後も、国会に真っ当な安定的な皇位継承問題の議論を促す記事を期待しています。
あしたのジョージ
2025年5月5日
朝日新聞も一歩踏み込んだ記事を出してきましたね。
いい事だと思いました。
本筋の問題を誤魔化して先送りしようとしていてもいずれ行き詰まると思います。
ていうかその時はもう手遅れです。
今のうちに手を打たなければ皇室はお終いになってしまいます。🤔
ダダ
2025年5月5日
朝日新聞に意見投稿しました。
***
お世話になります。
5月5日の記事『皇族数確保、議論大詰め 与野党、月内にもとりまとめ案』を読みました。
大石眞京都大名誉教授、笠原英彦慶応大名誉教授、阪田雅裕弁護士の三名による批判はとても読み応えがありました。
しかし、そもそもですが、皇統問題(皇室と国民の在り方)に、この様な専門的な知識や見解は不要なはずです。
今回の与野党協議で露わになったのは、伝統を隠れ蓑にして、何が何でも男尊女卑(女性差別)を正当化したい国会議員の醜態であり、一方的な議事進行による言論封殺でした。
象徴天皇の長子である愛子さまが皇太子・天皇になれない制度はおかしい。この常識的な国民感情こそが、皇室と国民の紐帯です。
私たち国民の常識・感性は、保守を名乗る議員の尊皇心よりも遥かに尊いと、自信をもって言えます。
一部の国会議員によって、皇室が支配されていることが腹立たしいです。
今回の記事は、拙速な終結を目論む政府を牽制する上で有効だと思いました。
今後も政府の詭弁に騙されず、継続的に批判して下さるようお願い申し上げます。
***
以上です(`・ω・´)ゞ
SSKA
2025年5月5日
>基礎医学研究者さん
補足ありがとうございます。
憲法を停止させる瞬間なんて大東亜戦争後の様に戦争に敗けたり占領された期間や現代でも緊急事態など、政府が通常の機能を失った本来の意味での危機的状況に限られるのに、政府の中枢にいる官僚や権威のある学者が全く必要が無いものに対し過剰な危機煽りと歪んだ現状分析に基づいて誤った判断を下そうとするのが男系支持派には特に顕著だったので、あくまでも記事の中の一意見に対してですがきつく書いたのと、別トピックの読売新聞の社是に対しても同様の動機から何度か批判コメントをしたり社に送ったりもしています。
冷静に法の範囲で対処すれば済む話を不安とヒステリーによって血迷った頭でおかしな方向に導いてくれるなと憤りを感じますし、当記事の中田記者の様に良識的な対応が出来る方が一人でも多く増えて欲しいと切に願っています。
サトル
2025年5月5日
>基礎医さん
返信コメントありがとうございます。
ま、「彼」の場合(万が一…)、かえって「悦ぶ(喜ぶ…ではない)」気もします(笑)
私も中田記者には注目したいですね。
で、ここは「新聞社の人」さんに、確認(聞きたい…ではない)したいとこですが、中田記者の経歴も気になるところ。
皇室担当→政治部→皇室担当の異動経歴で得る知見について。
それと、各新聞社の担当同士は「顔見知り」であること。
当然、誰が何を書くか…書いたかは気になるハズ。社の方針…に、どこまで追従するのかも興味深い。
こんだけ「記名記事」が目立つ…たたせると。
わたしは今、読売新聞社に大変興味があります(笑)…性格悪いんで。
世界最大の発行部数…は、ある意味足枷になるのも理解してますが、書かない…は逆にプレッシャーがかかりますからね(笑)
どうすんの?読売新聞社さん!…と、思っています。
(その点、日経さんは少し気楽でしょうが)
基礎医学研究者
2025年5月5日
>SSKAさん
コメントありがとうございました。今回、不公平がないように載せたのですが、大石先生のこの部分は、よくわからないのですよね。ビシッと言っていただきましたが、言われているような疑問を感じますよね。ちなみに、以下に朝日新聞の記事を補足します。
—————
「タイムリミットが近づき、政府や与野党が知恵を出し合い、建設的な議論が出来始めている」。憲法学者の大石眞・京都大名誉教授は、今年に入っての議事録を読み、そう受け止めた。
重視したのは、3月10日の全体会議で、内閣法制局が示した見解。佐藤則夫第一部長が、皇室制度を円滑に運用することは「憲法自体が要請するところ」とし、天皇の血を引く人を新たに養子として皇族とすることも「憲法自体が許容しているのではないかと考えられる」と述べた。
—————–
ご参考までに
SSKA
2025年5月5日
大石氏の
>憲法の『要請』という前提に立てば憲法との整合性を問う議論をほぼ乗り越えることができる可能性がある
憲法2条の世襲が性別を問わない意味なのに、下位に当たる皇室典範1条男系原則が優先されて憲法の他の項目を覆せる可能性とは一体どういう理屈なのでしょう。
憲法には条文に基づいた法秩序を守る為の「要請」やそれを行う義務が本来備わっていて全く壊さずに維持する案(女性・女系天皇)があるのに、平然と無視して越えられると言ってのけるのは学者を称する人として随分乱暴な議論だと思います。
基礎医学研究者
2025年5月5日
みなさん、コメントありがとうございました。朝日新聞、仕事しましたね(自分は、この中田記者もなかなかのものだと思う)。
>ふぇいさん
たしかに、すべての識者に通ずるのは、不十分で問題あり!ということですよね。自分は、大石さんの法理論解釈を見たときに「えっそれだと、内閣法制局のやり方を支持することになるのか?」と不安になりましたが、どうやらそうではないようですね。
で、そうですね。この論調は、天皇制廃止には結びつかないですね、どう考えても( ̄ー ̄)ニヤリ
>サトルさん
なるほど~自分、意識的に強調したわけではないのですが、たしかに「あの方」につながっていきますね。って、これでもし「朝日新聞」に配達証明書付き文書とか送ったら、話題になるかも(しかし、そのときのダメージははかりしれないかも( ̄ー ̄)ニヤリ)。
>まいこさん
ありがとうございます。なるほど、この識者の選び方は、令和、平成の有識者会議のたずさわった人ということか?バランスよいですね。しかし、こういう読み解きが記事になるのは大きいし、まいこさんやまーさんが行っている「議事録読み解き」も先見の明があったということで!
サトル
2025年5月5日
あ、もちろん、令和の有識者会議の
歴史学者(名誉教授)に対する意見…であると思っていますし、政府筋の「選別」であることは、知ってます。
さらに、嫌いだからなんでもかんでも結びつけるのは、「愚の骨頂」…とも認識していますが、当の「学者」は、政治家にアプローチしている「痕跡」は見られない。怪しげな番組には出ているが。
アプローチしている痕跡があるのは、百地と八木…ではあるが、彼らは「憲法学者(一応)」
そんなことを頭に入れながら…の私見です。
まいこ
2025年5月5日
記事のご紹介ありがとうございます。令和の有識者会議のヒアリングで意見を述べた2人の学者と、平成の有識者会議の際の内閣法制局長官に、全体会議への疑義と真っ当なところもある意見を語らせる、朝日新聞、今回は仕事をしましたね。
サトル
2025年5月5日
今から書くことは、深読みしすぎ?の私見です。
赤字の部分を読んで思ったこと。
これは「アイツ」のこと…だな…と。
あくまで私見ですが。
そんな気がしてならない。
また「配達証明」をつけるのかしら?
あと朝日に限らず、各新聞社は「知っている」…とも思う。
ふぇい
2025年5月5日
朝日新聞が、阪田雅裕氏の意見を載せているのが大きいですね、
色々な方の意見で、今の段階で色々取りまとめをするのは時期尚早
養子案はおかしいのでは?と見えるのがいいです
天皇制廃止に結び付く感じの記事ではなさそうなのが良かったです。