黄櫨染(こうろぜん 櫨はぜの木 天皇陛下が御召しになる黄櫨染御袍(ほう 公家の装束の盤領(まるえり 襟をまるく仕立てたもの)の上衣(じょうい うわぎ)の櫨染はじぞめの色素原料はヤマハゼ)を一般の方が着用したとして、大阪万博の「日本の宮廷装束文化」をテーマとした実演ショーが話題になっているようです。
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天皇ご一家が御覧になっておられるという大河ドラマ、「光る君へ」でも一条天皇に扮した塩野瑛久(しおの あきひさ)さんが黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)を着用していました。
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黄櫨染を再現するために、尽力された方もいらっしゃるようです。
黄櫨染は、雛人形にも多く用いられています。きっと
即位礼正殿の儀をご覧になった方々のご要望があったのでしょう。
雅子さまが御成婚の際にお召しになっておられた若草色の唐衣にちなんで、我が家も雛人形を選びました。
黄櫨染を大阪万博で着用されたモデルさんは女性とのことで、今年の講書始の儀における大阪大学名誉教授・武田佐知子氏の講義も想起されます。
さて「魏志倭人伝」では、3世紀、30数か国を統べる邪馬台国の女王卑弥呼が、魏に使いを送り、皇帝から「親魏倭王」の金印と衣服を、もらっています。後の時代に、足利義満も豊臣秀吉も、「日本国王」の衣服と冠を賜与されて、秀吉のものは現存さえしています。卑弥呼が魏からもらったのは、中国官僚の衣服で、しかも男性用だったと考えています。なぜなら中国は女性の王を認めておらず、「女王」の呼称は、周辺諸民族以外にはなかったからです。したがって女性の王の衣服は中国には存在しなかったので、恐らく男性用の中国官僚の衣服を賜与された卑弥呼は、当然自らの権威の表象とするべくそれを着ても、男女同形の衣服を着用する邪馬台国の人々は、違和感なくこれを受け入れたのではないかと想像します。
奈良時代には、中国の衣服制に倣って天皇や皇太子の礼服が作られましたが、東大寺の大仏開眼会に臨席した聖武太上天皇・光明皇太后・そして娘の孝謙天皇の礼服は、性別を超えて、三方とも同じ白の礼服でした。そして天皇の冠である冕冠(べんかん)は、ひとり孝謙女帝の頭上にありました。古代に六人・八代の女性の天皇が現れたのは、この男女同形の礼服の存在が大きいと私は思っております。
9世紀初めの嵯峨天皇の時、男性天皇の礼服だけが中国と同じ形式に改められましたが、女帝の礼服の規定は旧態のままとし、以後天皇礼服は、男女別形態になりました。以後近・現代に至る経緯については、残念ながら時間の関係で説明を割愛させていただきます。
衣服に性差がない我が国の衣服の基層文化は、男女の相対的位置関係や行動様式、ひいては男女の理想像、美意識までも規定した事実があります。男女の境界が曖昧な美意識は、アマテラスの男装、日本武尊の女装、神功皇后の男装等の、神話伝承を生み出したのではないでしょうか。平安貴族社会において、例えば『源氏物語』などに登場する理想の男性像が女性像と重なる描写で表現され、『とりかへばや』・『有明の別れ』など、異性装の男女の「入れ替わり」を主題に、男子は位人臣を極め、女子は帝に嫁ぎ、国母となるシリアスなサクセスストーリーが、西洋とは異なり、日本では成立しえた環境がありました。このことは現代日本社会においても、美意識に性差が少ないことにまで引き継がれているのではないでしょうか。
講書始におけるご進講の内容(令和7年)古代の衣服と社会・国家・国際関係 大阪大学名誉教授
武田佐知子
「愛子天皇論」一巻の麗しい御影を彩る黄櫨染の色合いは、国民が待ち望んでいる
愛子さま立太子の先にある、ご即位も髣髴とさせるもの。
高森先生によれば、「天皇が正装として即位式に当たって身に着けておられたのは、孝明天皇までシナ流の袞冕(こんべん)十二章(袞衣❲こんえ·こんい❳+冕冠❲べんかん❳)だった。それが明治天皇から黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)に改められた。」「女性天皇の正装はわが国固有の「白の御衣(おんぞ・ぎょい)」(帛衣 びゃくえ、はくい、はくのきぬ 白の練り絹の縫腋 (ほうえき 脇を縫い合わせる) の袍 (ほう))と考えられていた」とのこと。
女性天皇の白の御衣(帛衣)こそわが国の本来の天皇の正装【高森明勅 公式サイト】
愛子さまもご訪問された大阪万博で着用された黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)から、皇太子の装束である黄丹袍(おうにのほう)、そして女性天皇の正装である白の御衣を召された御姿に思いを馳せられることにもなるのではないでしょうか。
「愛子天皇への道」サイト運営メンバー まいこ
3 件のコメント
まいこ
2025年5月12日
ダダさん、お言葉いただきありがとうございます。
「黄櫨染は日本の誇りです。守るべきものは守り、アレンジを加えて新しいものを生み出すべきと考えました。そのため、商標も『夢こうろぜん』としています」との言葉、時代に合わせて徐々に刷新してゆくのが伝統、というところにも繋がるように感じています。
れいにゃんさん、いつもありがとうございます。
記事の内容は穏やかなものではありませんでしたけれど、黄櫨染御袍を着用するモデルさんを女性とされたところに、「源氏物語」で宝塚出身の天海祐希さんが光る君を演じた姿も髣髴し、主催者側の皇室の皆さまへの想いを感じました。
「9世紀初めの嵯峨天皇の時、男性天皇の礼服だけが中国と同じ形式に改められましたが、女帝の礼服の規定は旧態のままとし、以後天皇礼服は、男女別形態になりました。」とのことですので、
愛子様が御召しになるのは袍ではなく「聖武太上天皇・光明皇太后・そして娘の孝謙天皇の礼服は、性別を超えて、三方とも同じ白の礼服」というところになるように思います。
天皇ご一家がリンクコーデをされている御様子を拝するのが、ますます愉しみになりました。
れいにゃん
2025年5月12日
元記事を見てきました。確かにモデルさんは女性でしたね。
穏やかではないタイトルに、最初は躊躇してしまいましたが、このブログを読み終わる頃には、愛子さまの即位式に思いを馳せて、心躍りました。
衣装や、またはティアラも含めて、性差を感じさせないスタイルになる予感がして、どのようなものになるのか、楽しみしかありません。
ダダ
2025年5月11日
オリジナルとレプリカとフェイクは意味合いが異なります。
・あってはならない不適切な演出
・絶対に侵してはならない禁忌 等の伝統マウントにはついていけません。
『夢こうろぜん』の開発経緯はとても面白かったです!
ご紹介ありがとうございました(≧▽≦)