天皇制と立憲主義を考えてみる…(その5)象徴天皇制は、何によって支えられているのか

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サトルです。

ここまで、 立憲秩序は、どういう時に弱るのか? 、制度正統性は、何によって支えられているのか? 、「国民の総意」とは何なのか? 、立法府は、何を担うべきなのか? などについて、ワイマール憲法、小室直樹氏、井上達夫氏などの論考も足掛かりにしながら、少し整理してみました。

今回は、「象徴天皇制は、何によって支えられてきたのか?」について、少し考えてみたいと思います。

【「象徴」とは、何なのか】

日本国憲法第1条では、天皇は、 「日本国及び日本国民統合の象徴」 とされています。ただ、ここで難しいのは、「象徴」という言葉が、かなり抽象的なことです。

例えば、

・権力者なのか?   ・祭祀者なのか?
・文化的存在なのか? ・国民統合の中心なのか?

など、様々な理解があり得ます。

しかし少なくとも、現代日本において、象徴天皇制が比較的安定して受容されてきた背景には、「非権力性」が、かなり重要な位置を占めてきたように思います。

【「権力」と距離を取るということ】

戦後の象徴天皇制では、・政治的中立 ・国民への接近 ・慰霊 ・被災地訪問 ・「語りすぎない」自制などが、かなり重視されてきました。

これは単なるイメージ戦略というより、「権力と距離を取る象徴」としての振る舞いだったように見えます。

特に、平成以降の皇室は、「権威を振りかざす」というより、「国民に寄り添う」 「国民と共に在る」方向へ、かなり重心を置いてこられたように見えます。

だからこそ、政治権力そのものとは異なる種類の信頼を、長い時間をかけて形成してきた側面もあるように見えます。

【「目に見える象徴」が持つ意味】

前回、井上達夫氏の論考にも少し触れました。興味深いのは、非常に論理性を重視する井上氏が、あえてと言うべきか、

・被災地での振る舞い    ・国民との距離感
・膝をついて話を聞く姿勢  ・政治権力との距離

などにも触れていることです。つまり、象徴というものは、単なる制度条文だけでは成立しない。むしろ、「この人たちは、国民統合の象徴として振る舞おうとしている」という姿が、国民から“目に見える形”で積み重なっていく。

そこに、現代象徴天皇制の安定性を支える、一つの重要な要素がある。井上氏も、ある程度、その現実を踏まえて議論しているように見えます。

【「慣習法」としての立憲秩序】

小室直樹氏は、「憲法は本質的には慣習法である」という趣旨のことを、その著書で述べています。

つまり、立憲秩序というものは、単に条文が存在しているだけではなく、

・自制 ・共通理解 ・振る舞い
・「この線は越えない」という感覚 ・制度を支える文化

などによっても、維持されている。私は、象徴天皇制にも、かなり同じことが言えるように感じています。

つまり、「血統」や「制度条文」だけではなく、

非権力性 、国民との接続 、「象徴としての振る舞い、長年の信頼などが積み重なることで、現在の象徴天皇制は、比較的安定してきた部分があるのではないか?

現段階では、そのように考えています。そして、こうした「振る舞いの蓄積」もまた、広い意味では、一つの伝統と呼んでもよいのではないかと考えます。

【「熱量」だけでは、象徴は維持できない】

最近の皇位継承問題では、かなり強い熱量も見られます。もちろん、危機感そのものや、そこから生まれる熱量を否定したいわけではありません。いえ、そんなはずはありません。熱量は、ときに社会を動かす大きな力にもなるからです。

ただ一方で、熱量「だけ」で象徴制度を支えようとすると、

敵味方化 、政治利用、陣営化、感情的加熱…なども起こりやすくなる。

ここは、かなり慎重に扱う必要があるようにも思います。

なぜなら、象徴というものは、「権力闘争の中心」へ近づきすぎると、逆に不安定化していく側面もあるからです。

【「制度として、どう持たせるのか」】

最近、私は、「誰が正しいか?」だけではなく、「制度として、どう長く持たせるのか?」という視点が、かなり重要になってきているように思っています。

もちろん、現段階で完全な答えがあるわけではありません。

しかし少なくとも、(可能な限りの)安定的な皇位継承を考える際には、

・国民の総意 ・立法府 ・立憲主義 ・象徴性 ・非権力性 ・制度正統性

などを、どう接続していくのか。

そこを、丁寧に整理し続けていく必要はあるように感じています。

【次回予告】

次回は、「“伝統”とは、何なのか?」について、

・慣習 ・歴史 ・制度変更 ・「男系」の位置づけ ・近代以降の皇室制度なども含めながら、少し整理してみたいと思います。

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