「緩やかな王殺し」を絶対に許すな!

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 思想史家 渡辺京二氏の著作に『近代の呪い』というものがあります。
 本作には「フランス革命再考」という1章が設けられており、渡辺氏によるとフランス革命に至る前史として、まずフランスが近隣国に負けない中央集権国家へと変わるには貴族領主や宗教勢力などの中間団体を抑える必要がありました。しかし、既得権者である貴族は近代化に反発したそうです。

 当時の身分制は、①聖職者、②王侯貴族、③平民で、フランス革命は平民(③)が王(②)を倒したと思われていますが、上記のように②の中でも王族(②-1:近代化したい)と貴族(②-2:旧体制の利権を守りたい)は対立していました。
 また資本家(③)がカネで地位を買って成り上がった貴族(②-2’)も多く、逆に貴族(②-2)が資産を産業に投資して資本家(③’)になるケースもあり、身分制は混沌としていました。
 そして、本当に平民(③)を抑圧していたのは王(②-1)ではなく貴族領主(②-2)でした。   
 そんな時、パリに集まっていた三文文士や法曹崩れのジャーナリストが「王政は職人のギルドや農村の共同体までを中間団体として排除したいのだ」と民を煽り、さらに「王族は倫理的に乱れている」などと憶測や嘘を交えてスキャンダラスに書き立てました。こうした背景から勃発した革命でしたが、結果として王族だけが処刑され、本当に民を抑圧していた貴族の利権はナポレオン登場まで残り続けました。民を扇動する文士を援助していたのは貴族領主(②-2)や資本家(②-2’)でした。

 今から日本は真の近代化を果たさねばなりません。


 男系に固執する政治屋や三文文士に騙されたまま、革命的な王殺し(似非近代化)をやらかしてはなりません。
 特に日本では今「皇統の男系維持」(※側室制度を止めた時点から男系継承は不可能)という「緩やかな王殺し(皇統断絶に至る)」が進行しているのですから、今次の参院選では我々はよくよく考えた上で投票する必要があるのです。 

 急いで付け加えます。

 7月8日、選挙演説中の安倍晋三元首相が銃撃されました。選挙戦という言論を戦わせる場面で暴力に訴えることは許されざる行為です。本稿の論旨は「緩やかな王殺し」を批判するものですが、「急進的な(元)領主殺しも絶対に許すべきでない」という立場です。 


文責  京都府 京都のS

4 件のコメント

    京都のS

    2022年7月11日

     本稿は参院選当日の6時に上げていただいたブログでしたが、安倍晋三氏への同情票がプラスされた圧倒的な自民党勝利を止めることには全く寄与できませんでした。このことに忸怩たる思いがあるのは勿論のこと、日夜国民のために励んでくださっている皇族方と尊皇心を持つ国民の皆さまに対し、私は本当に申し訳ない思いで居ます。

    京都のS

    2022年7月10日

     ダダ様、ありがとうございます。とことん議論を蔑ろにしたのが安倍政権の7年半でした。空気に流されやすいから独裁者が生まれやすいのかと思いきや嫉妬心も強すぎて独裁も許さないのが日本という国のようです。世間の空気が全体主義を形成し、それが結果として独裁制みたいな効果を発揮します。戦前も戦後もです。
     共産主義って結局は官僚主義+全体主義ですから、強権ロベスピエール体制は共産主義的な側面も強かったのでしょう。全体主義だから自由は欠片も無く、党の要職と平民の間で格差が極大化するから平等でもありません。密告を奨励するので友愛も博愛も殺されます。何が「自由」「平等」「友愛」だ?て感じです。扇動家に騙された民の破壊衝動による王殺しでした。
     共産主義についてもう一つ。カネの総量が金銀の量で決まる時代なら、外国を侵略して奪うか国内で持っている資産家から召し上げるかしかありません。金本位制を脱した現代でも資産税が話題に上がります。ケインズ主義は共産主義みたいに言われますが、政府の予算は徴税した分しか無いと思っていると最終的に資産税を召し上げるしかなくなり、その状態(分捕ったモノを分配)こそ共産主義です。ケインズ主義とは、新自由主義(大恐慌までの米英)と共産主義(ソ連)との間で平衡を取る中で発見(米国のニューディール・日本の是清財政…)され、生み出された英知だと思うわけです。
     ちなみに立憲民主党の泉健太氏代表が掲げる政策を見ていると「この人はケインズ主義も理解しているな」と感じます。

    ダダ

    2022年7月10日

    フランス革命で目指した民主主義はいまでいう共産主義に近いものだった(富裕層の財産を取り上げて民に分配。経済的な平等。)と記憶しています。
    民主主義は大衆政治として知識人に不評でしたが、ナポレオンのような独裁者を生み出した歴史があります。しかしナポレオンは大衆の支持を得ていました。

    民主主義は独裁者を孕む。だからこそ現代の民主主義国家では議会政治が執り行われていますが、日本では多数決=民主主義という勘違いから議会軽視が目立ちます。
    投票=主権発動。政治を変えていくには国民が選択するしかありませんが、独裁を望んている国民もいるのかも知れません。。

    今回の事件の容疑者について、個人的な恨みが動機と報道されています。
    安倍政権への義憤ではないことに唖然としています。

    京都のS

    2022年7月10日

     本稿は『フランス革命についての省察』(エドマンド・バーク)や『ゴーマニズム宣言SPECIAL民主主義という病い』(小林よしのり)を再読せず、『近代の呪い』の「フランス革命再考」だけを再読して一気呵成に書き上げたものです。悪しからず。
     本日は参院選の投票日です。ただでさえ与党有利と伝えられているのに安倍氏への同情票まで加わる可能性があります。有権者各位には冷静な投票行動を促したく思っております。

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