機能集団が共同体化する「日本病」を癒すのは誰か?(転)

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 前稿までで日本的世間の問題点と成立過程を見てきました。
本稿では日本病(機能集団の共同体化≒世間化)を発症した世間人の症状を詳しく分析します。
まず(起)で少し触れた旧日本軍ですが、陸・海軍全体から一小隊までが全て共同体化した場合、各組織の成員一人一人が「やりがい」「生きがい」「実存」を求めて頑張ってしまいます。
例えば、自分らの働きが全体に与える影響を知りたがった結果として暗号の乱数表が一兵卒にまで拡散し、日本軍の行動は捕虜から米軍上層部にも筒抜けとなり、また補給の限界も考えずに戦線が拡大されました。
国民は国民で新聞・ラジオの好戦的報道や大本営発表に一喜一憂し、建前であっても好戦的な態度を取り、喜んで親族を戦地へ送り出し、少ない配給でも我慢を呼びかけ、異を唱えれば隣人を非国民と罵り、本土決戦に供えて竹槍で訓練し、こうした行動の全てに「生きがい」「実存」を見出しました。
このように戦時下の世間で醸成された空気は開戦にも敗戦にも多大な影響を与えたのに、敗戦を迎えると国民は「軍部に騙されていた」と掌を返し「いわゆるA級戦犯」に全責任を押し付けました。
権威を政治利用された天皇が責任を免れたのは不幸中の幸いでした。

 戦後の「トカトントン」という復興の槌音を後ろめたく思うほど感受性の強い表現者は自死しましたが、多くの世間人は迷わず復興に邁進しました。
戦後の世間人たちは、企業(機能集団)を共同体に変える日本的特性でもって日本的経営(年功序列&終身雇用)を編み出し、
戦災復興需要(内需)と朝鮮特需(外需)に日本企業だけで応えて高度成長を果たしました。
※現在はネオリベ改革により共同体としての会社は絶滅寸前。

 機能集団が共同体化する性質は政府組織も同じです。
世間人は自分らが所属する共同体(≒世間)の利益を優先するため、官僚の場合は省益最優先となります。
国や国民のために必要と考えて各省庁が要求した予算でも削ることが
財務官僚(旧大蔵官僚)の「生きがい」となりました。

 また最近では政府の新型コロナ対策分科会が共同体化し、
科学的にも法体系的にも間違った自粛とワクチン接種が国民に強要され、
コロナ感染死を減らすという目的より自粛やワクチン接種という手段が優先されました。

 さらに「皇位は男系で継ぐべき」と訴える自称ホシュ世間においては、
皇族方の願いや皇位の安定継承より男系派諸氏の男尊女卑感情や保身、メンツが優先されています。

 皆「相互承認」と「実存」で輝いていますね(笑)。

 やっと皇室問題に入れました。(結)に続きます。   

文責:京都のS

10 件のコメント

    京都のS

    2023年1月23日

     そうそう、山持七平の言った「員数主義」も「日本病」の一つ「世間病」でした。旧日本軍では天皇陛下から支給された備品を失った場合でも点検時に揃っていればOKだと言って他の部隊から調達した(掠め取った)そうですが、これも「体裁主義」や「世間主義」だと言え、つまり世間病の症状です。

    京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)

    2023年1月19日

     春にもコロナの指定を5類に引き下げというニュースがありますが、世論(世間に蔓延る愚論)次第では夏以降にズレ込むでしょう。マジに進駐軍が上陸するまで止まれないのかもしれません…。
     こういう愚論が陛下にワクチンを打たせてしまったのだと思うと…(涙)。

    京都のS

    2023年1月19日

     佐々木様、コメありがとうございます。「相互承認と実存」を求めることは世間(ワタクシとしての世間人の集まり)に埋没することを意味します。ということは世間の奴隷です。戦中なら好戦的世間に埋没し、現在ならコロナコワイ世間や男系固執世間、戦争反対世間…です。

    佐々木

    2023年1月18日

    いつの間にか結まで投稿されているとは気づきませんでした。

    転を読んで日本の相互承認と実存の求めぶりは奴隷としての相性は抜群じゃないかと思いました。

    結の感想は後日呼んで書かせていただきます。

    京都のS(サタンのSじゃねーし)

    2023年1月17日

     ダダ様、その件は(結)で扱っています。お待ちください。

     殉教様、まず「30年代の会社は機能集団であり、必ずしも共同体ではなかった」の件ですが、機能集団が共同体化するのは日本人の習性ですから、そのようになる目は常在しています。集団就職で上京した青少年を吸収したのは大企業から「3丁目の夕陽」的な町工場まで様々ですが、その頃の会社は規模の大小に関わらず家族のように振る舞っていた(会社は社員のもの・福利厚生の充実…)ように思います。そう出来たのは多くの企業が朝鮮特需で儲かって余裕があったことが大きな理由だと考えられ、会社が家族という傾向は景気が減速(鍋底景気)しても続き、レーガン特需(対ソ軍拡需要)によるバブル景気も余裕を持続させました。また高度成長(朝鮮特需)とバブル景気(レーガン特需)という成功体験の先例が「会社は家族」的傾向(共同体化)を現在まで強化させてきました。
     そして、バブル崩壊+緊縮不況+グローバル改革不況の現在は、企業に一切の余裕が無いから「会社は株主のもの」であり、家族とはなり得ない非正規社員しか雇われず、にも拘らず「会社は家族」的な感覚のまま「利益を出せ=共同体に尽くせ」と言われ、見返りの無い「滅私奉公」を強いられるというブラック化が続いています。
    ブラック上司「共同体(会社)の利益になることをしろ!→皆の為に俺は共同体(会社)に身を捧げて(正社員としてww)働いてきたぞ!(外需で楽に儲けたがねww)→何だ、お前らは碌に外需も取れず(グローバル不況?緊縮財政?コロナ自粛不況?戦時コストプッシュ?んなこと知らねーよww)、『共同体の利益』にならん奴め、けしからん!」
     会社が家族でも共同体でもなくなったのに「リストラ要員の非正規であっても会社に身を捧げろ」「コロナコワイ世間の手前、多少死ぬかも知れんが低リスク世代も含めて全員ワクチン打て!」という状態です。消極的エゴイズムから転化した積極的エゴイズムを発動しているのは誰でしょうか。どの世代でしょうか。
     世代で分断したら国民統合の象徴としての陛下に迷惑が掛かることも承知していますが、問題点の抽出には必要と思われたので敢えて書きました。

    殉教@中立派

    2023年1月16日

     「やりがい」「生きがい」「実存」という「自身の損得を超えた価値」の為に頑張れるのは、確かに美点ではありますが。
     「共同体の利益になる事をしよう→みんなの為に、俺はお注射を打ったぞ→何だ、お前だけお注射を打たないとは『共同体の利益』にならん奴め、けしからん!」に転じてしまった昨今。「世間の目」からの保身を図って迎合するのは「消極的なエゴイズム」であり、そこから実存を得ていく中で「積極的なエゴイズム」に転じていくのでしょう。エゴイズムでありながら「自分は利他の精神を持っている!」と勘違いしているので過ちに気づかず、他者を攻撃します(そのなれの果てが、オウムで出世した幹部たちでしょう)。
     最初は違和感を持っていた人もやがては取り込まれ、疑問にも思わなくなっていくのが恐ろしいです。だからこそ共同体の外から、啓蒙する意義があるのでしょう。

    (余談というか蛇足)
     戦前のサラリーマンについて。1930年は、全職業人口においては7%(農民がとても多かった時代)。現代の感覚だと、高学歴エリートであり、平均年収も(現代換算で)5000万円以上。
     このときの会社は機能集団であり、必ずしも共同体ではなかったと思います。戦後・サラリーマン比率が増加という流れの中で、増えすぎたサラリーマンを統括する手段として「共同体化」が進んだのでは。そして、そうした日本的経営が結果として「ジャパン・アズ・ナンバーワン」になったので、上手くいった先例を維持しようと「共同体化」が固定されたと考えています。

    ダダ

    2023年1月16日

    空気より法を重視する時代は来る(作れる)のでしょうか。
    共同体の中であっても、世間ムラの長老に責任意識が皆無なのは残念です。

    京都のS

    2023年1月16日

     Kd様、コメありがとうございました。まさに「日本人って…(絶句)」みたいなことが多発してますよね。社会の中の最小単位が「個人じゃなく世間」な日本人が利他の精神を発揮する時は「共同体(≒世間)のために」であり、世間と私(わたくし)の利害が対立していたら「滅私奉公」(戦争なら出征からの特攻、コロナ禍ならワクチン接種)となりますが、世間の多くと私(わたくし)との利害が一致している時は、世間から逸れた人に対して利己的に残酷に振る舞えてしまいます。醜いものを見続けた3年間でした。どうすりゃイイの?と思ってしまいますが、(結)をお待ちくださいませ。
     それと、殉教様、カルトの話題が出るのは(結)だったようです。

    kd

    2023年1月16日

    日本人は利他的だと思っていましたが、究極の利己主義だったのではと感じています。コロナ禍、男系固執カルトを見ているとよくわかります。その上で今後どうするか、子供たちの明るい未来のために何ができるか、考えなければなりませんね。示唆に富む記事、非常に勉強になりました。ありがとうございます。

    京都のS

    2023年1月16日

     笹師範、「国民性(という言い訳)に逃げ込まない」ための、負の国民性を克服するための、現時点での私からの回答は次回(結)です。

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