弁護士のゴー(茅根豪)と申します!
馬淵衆議院議員が、11月17日に、再び内閣法制局の木村第1部長に対し、旧宮家の復帰案について憲法14条に違反しないかを質問されました。
木村第1部長
現時点では、まあ具体的な制度を、あの念頭に置くことは出来ませんので、一般論として申し上げます。まずあの前提と致しまして、憲法は第14条において、「法の下の平等」を定めつつ、その特則の規程と解される第2条におきまして、「皇位」は「世襲」のものとし、また第5条および第4条2項におきまして、「摂政」、「国事行為の委任」、の制度を設けておりまして、これらの制度を円滑に運用することは憲法の要請するところであり、このために、現在一般国民である皇統に属する方を、新たに皇族にすることを可能とする制度を、法律によって創設することについては、憲法自体が許容しているものと解されます。
さてさて、この答弁に対して既に批判が起こっていますが、以下で、皆さんも一緒に考えてみませんか。
正直びっくりする答弁ですよね。曖昧さがのこるものの、木村第1部長は、素直に理解すれば「国民を血筋で差別して、旧宮家の血を引く者だけを選抜する立法をしても、憲法14条の平等原則に違反しない」と聞こるような発言をしたことになっちゃいますからね。
そうだとすれば、とても納得できる内容ではありません。湧き上がる疑義を何点か挙げたいと思います。さすがに今後時間が経つにつれ、より具体的で実証的な批判が、憲法学者、法哲学者、人権団体、与党内部、野党、地方議会、マスメディアなどから噴出すると思います。
①「皇統に属する」って?
さて、木村第1部長は、「現在一般国民である皇統に属する方を、新たに皇族にすることを可能とする制度を、法律によって創設することについては、憲法自体が許容している」と述べました。
ところで、「皇統に属する」って何でしょうか。天皇の血統に属している者という意味合いだと思いますが、自分のご先祖様が天皇の血縁に繋がる人は何万人もいるでしょう。ひょっとして私のご先祖様にもいるかもしれません。
しかし、そのくらい多く存在していることから分かるとおり、今どき自意識過剰ぎみに血統へのこだわりを持っている人でない限り、自分の先祖がどこかで天皇の血筋に繋がっていたとしても特別な意識は持たない人が大多数だと思います。
そもそも、一般国民の通常の感覚からすれば「皇統に属する方」と言ってみても、仰々しく、真顔で言っちゃったら失笑されるような類いの話に聞こえると思います。自分たちと何の違いがあるのですか?? 大昔に天皇へ血筋が繋がっていた人も、今は完全にただの一般国民であり、焼き鳥食べたり、血圧気にしたり、パワハラで悩んだりするような、自分と何も違わない、ただのオッサン、オバサンだとの感情しか持てません。
そうすると、「皇統に属する方」などと選抜してみても、その段階でかなり胡散臭さを拭えず、尊敬どころか冷ややかな感情を抱いてしまいます。おそらく対象とされる可能性がある方々は当惑されるでしょうし(当たり前だ)、その様な記事や証言は既に存在しています。
一部の人をつかまえて、何か準皇族でもいるかのように扱う風潮を許すべきではありません。「それって、ただの一般国民じゃん! 普通のオッサン、オバサンじゃん!」との直感は当たっています。そのような庶民感覚を無視して話を進めれば、国民間に差別を認める不幸な未来が訪れることは間違いありません。
②に続きます。
7 件のコメント
ねこ派
2023年11月20日
内閣法制局第一部長木村陽一氏の答弁を読むと、彼には尊皇心が薄いことが、透けて見えると共に、疑問を覚える私です。
まずは、疑問についてから。
答弁では、
前提と致しまして、憲法は第14条において、「法の下の平等」を定めつつ、その特則の規程と解される第2条ー
と木村氏は言っていますが、これが、疑問です。
法令では、通常、先に原則や前提を掲げ、後で、特則や例外を規定します。
但し書きなどは、その前にある規定の、特則や例外です。
ところが、木村氏の答弁は、憲法において、後に出る第14条を原則・前提のように扱い、先に出る第2条を特則と解している。
法令の本来のあり方とは、逆ですね。これが、オカシイ。
憲法は、第1章から第11章までありますが、第1章には「天皇」、第3章には「国民の権利及び義務」、との標題が掲げられており、それぞれにおいて、幾つもの条項が並んでいます。
法令の本来のあり方に基づけば、先に出る天皇関係の条項が原則・前提で、後に出る国民の権利・義務関係が特則・例外、というわけですが、憲法は、そのように読むべきではないでしょう。
かといって、法令の本来のあり方に反して、逆に読むべきでもない。
何故なら、歴史的に、天皇と国民の別は明確にする、即ち、君臣の別は揺るがせにしない、という大原則があるからです。
憲法は、それを前提として、読まなければならないことを、内閣法制局は、分かっているのでしょうか?
第1章の天皇に関する条項群と、第3章の国民の権利・義務に関する条項群は、それぞれ分けて、読むべきです。
木村氏の答弁において伺えるのは、内閣法制局は、そういう読み方をしていないようであり、むしろ、ごっちゃにしているようである、ということ。
だから早くも答弁段階で、「現在一般国民である皇統に属する方」という発言をしてしまって、国民を「皇統に属する方」と「皇統に属さない方」との二つに分け、両者の間に差別があってもよし、とする、明白な門地による差別を肯定してしまっています。
答弁は、内閣法制局の人間によるものですが、憲法違反の色が濃厚です。
次に、尊皇心の薄さについてです。
第2条におきまして、「皇位」は「世襲」のものとし、また第5条および第4条2項におきまして、「摂政」、「国事行為の委任」、の制度を設けておりまして、これらの制度を円滑に運用することは憲法の要請するところー
との答弁ですが、「円滑に運用する」とは、どういう意味なのでしょうか?
内閣法制局は、憲法において天皇が為すべきと規定されている国事行為などは、所詮は儀礼的・形式的なことに過ぎず、それが円滑に遂行される状態になってさえいれば、即ち、そういう制度が円滑に運用されるようになっていれば、それでOKなのであり、だから天皇には、それなりの人間を据えれば足りる、などと不遜にも思っていないか?
そうだとすると、尊皇心が薄い、と言っていいでしょう。
内閣法制局の人間は、もとより官僚です。
官僚とは、言わば、学校秀才・学歴秀才の権化みたいな連中です。
なので、官僚が仕える時の政権や、政府与党にとって、都合のいい答えを出すことには、非常に長けている。
答弁では、憲法の要請とか、憲法自体が許容、などと言っていますが、実は、憲法なんか大して尊重していなくて、やはり忖度官僚らしく、時の政権や、政府与党という権力者の意向に従うばかりなのでしょうね。
私は以上のように、内閣法制局第一部長木村陽一氏の答弁から、尊皇心の薄さと、疑問と、それから学校秀才・学歴秀才の弊害を見て取りました。
あと、答弁では、憲法の要請とか、憲法自体が許容とか言うことで、憲法に逃げている印象を持ちましたが、忘れてはならないのが、憲法とは、国民が要請したものである、ということです。
国民が許容しない憲法は、存在しません。
そして、不遜な言い方ですが、国民は天皇を許容しており、女性天皇・女系天皇を許容するものです。
突撃一番
2023年11月20日
生まれてこの方一般国民で、「皇統譜」に名前すら載った事も無いような人を指して「皇統に属する」と呼んでしまっていいのかどうか、長年疑問でしたが、やっぱりおかしいと思う。
世襲継承を可能にする為に「国民の血統差別」を容認するのであれば、最大限、違憲にならない努力を尽くしてからでないと、到底「合理的区別」とは認められません。
歴代自民党政権は「違憲にならない為の努力」を、やった形跡が全く無いじゃないか!
そのくせ、一足飛びに国民差別の政策に飛び付くなど、怠慢にも程があるぞ!!
女系継承を認める事が優先です。
サトル
2023年11月20日
「ゴーさん」の、解りやすく、キチンさした筋道(論理)と共に、併せて「寅さんなら必ず言うであろう直感からの言葉」に導く文と洞察に、「保守」の言葉が浮かびます。ありがとうございます。
ききゅう
2023年11月20日
一般国民の中から旧宮家の子孫を選び出して、皇籍を取得させるのは、「門地による区別」であって、「門地による差別」ではない、という詭弁をどう論破すればいいのですか?
れいにゃん
2023年11月20日
そうですよ。一般のオジサン、オバサンですよ!古代から『君臣の別』を重視してきたからこその『皇位は世襲』なのに、何をサラッと『皇統に属する』を『歴代天皇の血統に繋がっていると解釈していいよ〜』みたいな答弁を国会でしているんでしょうか?!それなら木村さん、あなただって差別されて対象者にされる可能性あるんじゃないですか?
テムジソ
2023年11月20日
この弁護士は「血統に属する」と「血縁に繋がる」という別の概念を同一視して、あたかも同じ意味であるとペテンを述べている。
「血統に属する」=父方のみor母方のみで特定の系統に繋がる。皇室で言えば「父方のみ」。
「血縁に繋がる」=単純な血の近さ。血統は問わない。
京都のS
2023年11月20日
ゴー様、先日の道場、お疲れさまでした。安定感のある「保守ぶり」でした。本件も見事な法制局論破です。