「正直なウソつき」の、『嘘だらけ』古代史語録⑨

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【第5章】

●奈良時代においても、皇位は男系継承が前提であり、天武系に継がせる事は確定していた。 女帝はその為の中継ぎである。 p203
~倉山満『嘘だらけの日本古代史』第5章より~

もし、奈良時代当時に男系継承という「自明のルール」が存在したのなら、当時の皇位継承の通例から見れば明らかに若年過ぎる文武天皇=軽皇子(当時15歳)よりも相応しい天皇候補者が、10人近くはいましたよ??

舎人皇子、弓削皇子等の、壮年の天武皇子達がそうです。

(義江明子『天武天皇と持統天皇』p80)

・・・っていうかアナタ、自分で指摘してるじゃん。草壁皇子が薨去(こうきょ)した直後、

「他にも即位できる実力のある皇子がいたような気がしますが···(倉山p202)」と。

長老即位が当たり前だった当時の常識から考えれば、まだまだ若年の「天武の孫」よりも、より経験豊富な「天武の子」の方が、仮に男系継承というブ厚い色眼鏡で見たとしても、よっぽど自然な継承だと思いませんか?

当時はまだ、兄弟・同世代による継承が通例だったのですから。

持統天皇は、倉山の言うような天智系でも天武系でもなく、あえて言うなら「持統系」を守ろうとした、と言っても過言ではないと思います。

ホントに男系継承が自明の大原則で、持統天皇が天武系による継承を望んでいたのなら、弓削皇子が天皇に即位してもいい筈なのに、その弓削本人の意見を葛野王が一喝して黙らせた上で、軽皇子(第42代 文武天皇)の即位は決まったのですから。

「子孫相承がわが国の法であり、兄弟相承すれば乱となる」と説き、弓削皇子を一喝した葛野王を、持統天皇がおおいに褒めた事からも、彼の後ろ楯に持統天皇がいた事は、明白でしょう。

持統天皇主導の、当時の通例から見ればある意味「ゴリ押し」とも取れる文武天皇即位が実現したという事は、男系(天武系)継承などというルールは当時の群臣達の間でもまだ、彼女の「ゴリ押し」を跳ね返せる程の常識としては、固まっていなかったという事に他なりません。

まあ、元々日本は「男女双系」なんだから、それが当然といえば当然なんですけどね。

もっとも、持統天皇の胸中を察するに、「アタシの孫に皇位を継がせたい!」みたいなエゴイズムでは決してなく、葛野王のセリフにも顕著なように、兄弟間での継承争いの歴史を終わらせる事で、二度と「壬申の乱」のような血みどろの戦を起こさないよう、直系継承を新たなルールとして確立させたい、という平和への強い想いがあったと拝察されます。

親→子への継承がルールとして確立されていれば、天皇候補者たる「天武系」の兄弟皇子達を、勢力の異なる豪族達が各々担ぎ上げて、皇位継承を巡る争いがそのまま、豪族同士の勢力争いの火種となる事も阻止できる、という事ですからね。

天武天皇の皇子らを排除し、兄弟継承という当時の通例を打破してまで、国家安泰のために「自分の子孫への継承」を実現させるとは、やっぱり持統さん、恐るべきリーダーシップを発揮しておられると思いませんか??

一体どこが「中継ぎ」なんだよ? 大河ドラマの主人公に抜擢してもいいぐらいの「スーパー女帝」でしょ!

主演は『ゴジラ-1.0』とか朝ドラにも出てた浜辺美波でいいと思う。

あ、でも天武天皇役は、神木隆之介よりは青木崇高とかの方が、「武人天皇」っぽくていいと思う。

頼むぜ、NHK!

文責 北海道 突撃一番

義江明子『天武天皇と持統天皇』山川出版社2014年6月25日
「④-王位継承方式の模索」

5 件のコメント

    サトル

    2024年1月16日

    「大河」で古代をNHKがやりながらないのは、まず「時代考証」の難しさ。
    (最近加速されてはいますが、まだまだ空白の1世紀もありますし)
    あとは単純に「金がかかる」からと、なにかで読んだ記憶があります。
    セットや衣装その他が「(他の歴史物に)使いまわし」ができない……とか。
    今回の「平安時代」は「女性目線」からの流れから踏み切ったんだな……と思います。
    でも。なかなか「使いまわしが出来ない」ってのは、意味深ですよね。
    (日本の)独自文化……の意味合いからも。

    基礎医学研究者

    2024年1月16日

    (編集者からの割り込みコメント)今回、編集していて段々力が入ってきたのは、男系・女系の是非などよりも、「皇室」が気を配っているのは、やはり兄弟や同世代などによる継承よりも、直系継承の方がベターということが、伝わってきたからです。個人的には、「持統天皇系」というのは、なかなか言い得て妙、と思いました。

    突撃一番

    2024年1月16日

    コメントありがとうございます。

    綾瀬はるかの場合、一回大河の主演やってるから、2度目は無いかな~と思ってたんですけどね。

    『光る君へ』も、観よう観ようと思ってはいるんですけど(平安時代の宮廷文化も勉強したいから)、オンデマンドで観れるから、いつでもいいや~と思って結局後回しになっちゃってますね~。
    いかんいかん。

    ありんこさん仰るように、傍系の皇族に天皇と同列か、それ以上の権威を集中させてしまうと、まさに持統天皇が危惧した通り、争乱の元とは言わぬまでも、「二重権威」が生まれてしまいかねない。

    陛下のご発言が封印されているのを尻目に、皇族が自由に政治的意見を公言するのは、そういうリスクもあるという事は考えなきゃダメですね。

    ありんこ

    2024年1月15日

    天皇陛下よりもヒゲの殿下を担いじゃった自称保守界隈………(´・ω・`)

    京都のS

    2024年1月15日

     持統天皇を主人公にドラマ化するなら、「聖徳太子」「大化改新」「大仏開眼」をの書いた池端俊策に脚本をお願いしたいです(この場合は大河ではなく2時間×2の前後編)。主演は綾瀬はるかを希望します。天武役は青木崇高でOKです。タイトルは「壬申大乱」です(上記3作はタイトルに「大」や「太」が入っているので)。

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