男尊女卑な輩はファラオにも呪われろ!

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 エジプト第18王朝の王族ネフェルティティ(♀:異国の王女とも言われるが出自は不明)をご存じでしょうか?彼女はアメンホテプ4世の王妃であり、王との間に6人の娘を設け、そのうちの1人アンケセナーメンはツタンカーメン(アメンホテプ4世と別の后との王子)の后だとされます。

 アメンホテプ4世は、アメン神(太陽神)を最高神とする多神教だった当時のエジプトを、アテン神(太陽神)のみを崇める一神教に改宗し、首都もテーベ(現ルクソール)からアケトアテン(現アマルナ)に移し、自らもアクエンアテンと改名しました。このアマルナ時代はアクエンアテンとネフェルティティの共同統治だったとされますが、やがてアクエンアテンの死によって17年間のアマルナ時代が終わると、アテン信仰は廃止され、首都もテーベに戻されました。また、急進的な改革によって宗教者との軋轢が多く、新都建設のために動員された民からの支持も無かったためか、アクエンアテンの事績は正史から抹消されました。上記の復古的改革は次代のツタンカーメンが行ったとされますが、少年王ツタンカーメンの即位まではネフェルティティ(アンクペルウラー/スメンクカーラー)が王位に就いていたとする説があり、であれば改革も母王が主導した可能性があります。つまり、民や神官たちの支持を繋いで王朝滅亡を防いだのは女王ネフェルティティだと言え、従って「女王は中継ぎだ」などとは間違っても言えません。

 また、約3000年のエジプト史においては、メルネイト、ネフェルソベク、ハトシェプスト、ネフェルティティ、タウセレト、クレオパトラという6名の女王が存在しており、以上から考えれば、極東アジアで言われるような「男帝は賢帝、女帝は愚帝」「女に政治をやらせるな」といった言説は儒教的男尊女卑に基づく世迷言でしかないと判ります。

 以下は蛇足ですが、アマルナ時代のアテン神信仰は中東における一神教(ユダヤ・キリスト・イスラム)成立に影響を与えた可能性があり、またエジプト古来のアメン神はキリスト教では悪魔アモンに堕とされています。そして、一神教(※シナ大陸の天帝を含む)が生まれやすい土地は男尊女卑に至りやすく多神教が維持される土地は男女が公正な地位を獲得しているというのが私の印象です。

 ちなみにユダヤ教やキリスト教で唱えられる「アーメン」はアメン神とは無関係とのことです。    

文責:京都のS

5 件のコメント

    京都のS

    2024年5月1日

     SSKA様、※ありがとうございました。
     「多神教から一神教…また元に戻る」とは、戦前戦中の「国家神道的『現人神』一神教」を指すのでしょうか?「キリスト教」の絶対的権威に対抗して戦争するには、そうするしかなかったのかもしれませんが、抽象概念としての「現人神」みたいな信仰対象を捏造しても上手く行くはずがありません。人としての天皇への恋闕こそが勇気や力の源と成り得るはずなのですから。

    SSKA

    2024年4月30日

    多神教から一神教に近付き、そしてまた元に戻る流れは近代化から敗戦、その後現在に至るまでの天皇と日本と近いものを感じます。
    女性神の宗教も女帝も他国に全く引けを取らないもので文化性に富んだ固有の歴史を卑下する意味が理解出来ません。
    万世一系、男系は儒教文化圏でしか誇れない極めて狭い価値で欧米列強の近代化に敗け大東亜戦争でも敗けたのと一神教も日本民族には合わないので、多神教と女帝の歴史から新たな叡智を学び愛子様を通じ皇室への敬愛が広まれば古い考えに拘る必要は無くなりますね。

    京都のS

    2024年4月30日

     サトル様、※ありがとうございました。でも「櫻井よしこファラオ」は出オチ感がキツイです(笑)。

    サトル

    2024年4月30日

    (最近の世界史番組の増加のなか)大変興味深く拝読いたしました。
    (個人的に好きではありますが、アク……クセが強い(笑)学者の岡本隆司氏や本村凌二氏を番組に出すNHKは、なかなか凄い。毎回ハラハラして視聴してます(笑))

    浅学ではありますが、確かに多神教社会においては、男尊女卑傾向は弱い印象がありますね。地理的、近隣諸国との……重力も考えていかないとですね。歴史は。

    余談ですが、「櫻井よしこファラオ」は相変わらずなんでしょうかね?……いや、相変わらずなんでしょうね。やれやれ……。

    京都のS

    2024年4月30日

     掲載ありがとうございました。 
     本稿は以前「陰陽師0」を題材に書いた時、『陰陽師』(夢枕獏)を独自解釈でコミカライズした岡野玲子版『陰陽師』の終盤に安倍晴明&真葛をツタンカーメン&アンケセナーメンに比定するような描写が出ていたことを思い出し、ツタンカーメンでも何か書けそうだと思って調べたのが本稿なのです。

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