毎日新聞からの記事です。
両陛下訪英、「温かさ」という言葉が象徴 駐日大使が感じた両国の絆(山田奈緒・吉田哲子)https://mainichi.jp/articles/20240713/k00/00m/040/092000c
*1部は電子版で読むことが可能です。
この記事は、7月19(金曜日)の朝刊6面に掲載された、皇室スケッチという連載記事です。今回は、社会部(皇室担当)の山田・吉田記者による、ロングボトム駐日英国大使のインタビュー記事です(これは、毎日新聞単独のようなので、こういうところは、さすがです)。
ロングボトム駐日英国大使(以下、ロングボトム大使)は今回の両陛下の訪英に同行され、読売新聞には論考を寄稿されましたが、文章と語り口調による記事の違いをみるのは、個人的にはおもしろいのでは?と思います。
以下、紙面でしか読めない部分を引用していきます。
今回の訪問では、日英間にそうした協力関係(※皇室と王室の関係の重要性を認識し、人類の未来に向け世界が直面する問題にともに力を合わせていくような関係)があると示すことができました。例えば、欧州最大級の生物医学の研究拠点「フランシス・クリック研究所」を天皇陛下が訪問されたことです。
自分、ロングボトム大使が「フランシス・クリック研究所」訪問に関する部分をけっこう話されていたことが結構意外でしたので、さらに引用していきます。
インフルエンザや小児疾患などの健康問題に取り組む日英の研究者たちから、研究内容や両国の研究協力について話をお聞きになりました。
説明者の1人、バネッサ・サンチョ清水さんは、重症化する感染症の遺伝学的な基盤を研究しており、それはイギリス人研究者のジョン・ガードン博士と山中伸弥博士の研究をベースにしていると陛下に伝えました。ノーベル賞を共同受賞したガードン博士と山中博士の先行研究があるからこそ、病気への新たな対処法を見つけられるそうです。世界をリードする研究機関はすでに日本とつながっており、さらなる共同関係を望んでいるのです。
自分は、ここまで科学の話を語るロングボトム大使、およびそれをきちんと記事にした山田記者らに感謝します。[正直、肝心の研究者がここで語られるような歴史観・倫理観があるのかどうかはちょと怪しいところですが(両陛下が訪問された、生理学者のオックスフォード大のデニス・ノーブルさんや、ダダさんがブログで言及された細胞生物学者の永田和宏さんのような方は、けっこう例外的)]。ただ、正直、私、この記述から内容を理解することができませんでしたので、敬意を表しまして、以下に補足させていただきます。
・「重症化する感染症の遺伝学的な基盤を研究」とは、小児ヘルペス脳炎(childhood herpes simplex encephaliti)などのウイルス性感染症における、宿主側(ヒト側)で重症化に関与する遺伝子変異(*この言い方はちょっとおおざっぱですm(_ _)m)を特定する研究のことを指しているのだと、思います。これは、同じウイルスが感染しても、なぜか重症化しやすい人とそうでない人がいることが疫学的に観察されていて、その問題に挑んだ研究なのだと思います(バネッサ・サンチョ清水さん自身の記述をみると、自然免疫に関係する、TLR(Toll-like receptor)9の調節も関連するようです)。
・一方、「ジョン・ガードン博士と山中伸弥博士の研究をベースに・・・」の部分は、おそらく自己抗体を産生(*)する患者さんの細胞からiPS細胞を樹立し、そこから神経細胞に分化させて、どのような自己抗体と反応するのかをアッセイする系のことを指しているのだと思います。
*自己抗体を産生…本来、免疫系のB細胞から抗体が産生されるときには、自己、非自己関係なく抗体は産生される。しかし、様々なメカニズムによって(代表的なところでは、拒絶反応に関係するHLA)自己が発現しているタンパク質などを認識できないようになってる。ところが、何らかの原因でその認識が緩むことがあり、そうすると自己を攻撃して細胞を障害する。それが、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、すなわち自己免疫疾患として現れる。
で、自分はこの両者がどう結び付きのかはよくわからなかったわけですが、ニュースなどでは、バネッサ・サンチョ清水さんは「65歳以上になると、自己抗体を持ちやすい」と日本語で説明し(けっこううまかったです)、陛下が「僕は64歳なのですが、大丈夫ですか?」といわれて、場が和む場面がありました。
この後には、訪英を通じた両国の関係の素晴らしいさを語っておられるのですが、最後の部分を引用します。
訪英が国王陛下と天皇陛下のご即位から間もない時期に実現したのは、特別なことであり、両国の強い絆(きずな)、王室と皇室の強い友情と関係を再確認する素晴らしい機会だったと思っています。
まさに、皇室・王室の存続を前提にした、未来に向けての対話だったのでは、ないかと?
ご参考までに
ナビゲート:「愛子天皇への道」サイト編集長 基礎医学研究者
2 件のコメント
基礎医学研究者
2024年7月21日
(編集者からの割り込みコメント)
>パワーホールさん
「皇室スケッチ」とは直接関係のない部分ですが、「重症化を・・・」という部分は、科学者としてみると、人類がウイルスと共存してきた刻印(DNAの)を発見するようなものなので、間接的にはウイルスの共存ということにつながるのでは?自分、今回の記事からは、英国が企画したとはいえ、陛下がここまで訪問先に興味をもったことは驚きで、その様子を英国人であるロングボトム大使が感想として紹介されたことに、さらに驚きましたね。皇室の大切さは、意外に外国の立憲君主国に属する方のほうがよく見えているのかもしれない、という1つの事例なのではないかと。
パワーホール
2024年7月21日
「重症化する感染症の遺伝学的な基盤を研究」とのことですが、こういう研究をウイルスとの平和的共存実現のために行ってほしいですね。それに、日本の自称感染症専門家達もマスクやワクチンだと騒ぐのをやめて研究に専念してほしいです。