令和の有識者会議が結論として出した、所謂(いわゆる)「旧宮家子孫の養子縁組」という案について、内閣法制局が合憲だと判断した背景には、憲法第1章において規定された皇位の「世襲」による継承の維持という目的があるかとは思います。
確かに、あくまで「天皇・皇族」に限定して言えば、象徴・世襲を可能にする為、憲法第3章に規定される国民平等原則の「例外」とされる事は、憲法学上でも通説と言ってよいでしょう。
しかしながら、自民党が開催し、令和4年にまとめられた有識者会議報告書が、養子縁組による皇籍取得を想定している「旧宮家子孫」は、憲法上は無論の事、皇族としての教育を受けてきた事実も一切なく、生まれながらにして100%の「国民」です。
そもそも皇統譜に本人の名前が記載された事実すらない以上、現段階では断じて「皇族」ではないのです。
従って憲法第3章(国民の権利・義務)が全面適用されるのが当然であり、天皇・皇族に関する規定である第1章は、完全に適用外だと判断せねばならないのです。
つまり、「『(第1章規定の)世襲』を維持する為に、男系という血統を根拠に皇籍を取得させる」という事は、国民を血統によって分断してしまう行為だという事実に変わりはないのです。
園部逸夫氏が主張されるように、「言論・表現の自由」や「居住・移転の自由」その他、当事者である皇族に対して行われている人権制限すら、あくまで「象徴と世襲」という天皇制の基盤を維持する為の、最低限度の制限に留めるべきであり(園部p66)、皇族だからという理由で、制度維持に必要な範囲を超えてまで、憲法第3章で定められた人権を過剰に制限する事は、決して望ましい事ではありません。
ましてや、男系という「血統」、あるいは旧宮家という「門地(家柄)」を根拠とした皇籍取得のように、憲法第14条に定められた「国民平等の原則」に対する明らかな例外扱いを、全くの一般国民にまで拡大適用する事など、憲法学上のいかなる学説も、想定していないと言わざるを得ません。
国民に対する「男系血統」を理由とした、そのような差別的扱いを、断じて認めてはならないと思います。
祖父の代で、いくらGHQの占領政策によって臣籍降下させられたとはいえ、その「旧皇族に連なる血統だから」を理由に、孫世代の「国民」が皇籍取得できるか否かを決定してしまえば、本来は平等であるべき日本国民同士が、男系血統の有無によって職場や普段の生活環境においてお互いを差別したり、あるいは逆に「天皇の血筋」というブランド力を理由として過度に優遇されるといった、恐るべき事態を生んでしまいかねません。
源氏・平氏に連なる人々のように、単に「天皇と男系血統で繋がっている国民」なら、全国各地にいらっしゃいますから。
ましてや、そのような血統差別を「皇統」を維持する為に必要な要素として制度に盛り込んでしまえば、「皇室こそが、国民差別の元凶である」という批判の正当性を、天皇制廃止を目論む勢力に与える事にもなってしまいます。
このテーマに関しては特に、声を大にして警告させていただきます。
憲法で定められた「国民平等の原則」に例外規定を設けるという事が、どれ程恐ろしい事なのかをまず、認識してください。
参考文献
・園部逸夫『皇室法入門』ちくま新書2020年1月10日
文責 北海道 突撃一番
10 件のコメント
fei
2024年9月20日
ききゅうさん
愛子天皇への道サイト運営メンバー ふぇいでございます。
こちらでのコメントに、ブログを作りました。
https://aiko-sama.com/archives/44313
ご覧いただけたら幸いです。
ききゅう
2024年9月20日
>主権者である筈の国民
国民主権病?
権威と権力の分離というが、権力に影響を与えない「権威」は権威と言えるのか?
売国奴の政治家によって皇室が滅亡してしまうという時に、「政治家任せ」にする帝王は、「権威」なのか?
売国奴の政治家の制定した憲法と法律に「盲従」して、自ら言論を捨てて「奴隷化」し続けていいのか?
自らの存在を「政治家任せ」にしているのなら、皇室の廃絶は自業自得と言えるのではないか?
突撃一番
2024年9月20日
>政治家に任せるべきではない
だったらまず、自分が動きなよ。
皇室典範を改正出来る国家機関が「国会」しかない以上、どんなに騒ごうが現憲法上、皇統問題は「政治案件」です。
政治的発言が出来ない天皇陛下の「託宣」に頼ってる時点で、主権者である筈の国民の側が、責任を放棄したも同然だよ。
「皇室の弥栄」実現は、我々の責任です。人任せにしようとすんな。
ききゅう
2024年9月20日
皇統を政治家に任せるべきではありません。
天皇陛下は毎日、皇祖神をはじめ八百万の神々に祈っておられます。
何らかの託宣はないのでしょうか?
政教分離だの、国政の権能だのに縛られて、御神意よりも憲法や法律を第一にしていては、皇室も亡ぶのは致し方ない。
基礎医学研究者
2024年9月19日
>ききゅうさん
畳みかけて悪いけど、自分も「では、あなたはどうするのか?」ということをお聞きしたかった。でもそれだと、結局「何もしない」ということになるのでは!
突撃一番
2024年9月19日
それは単なる「傍観者」のつぶやきに過ぎませんよ。
ききゅう
2024年9月19日
総裁候補者の発言に、皇室の未来が見える。
男系派の国会議員が「有識者の報告書」に従うことは確実。
悠仁様に男子がない場合、「旧宮家の子孫」の皇籍取得は最優先。
女性天皇は、「男系女子」のみ。
「女系も含めて議論する」という言葉は、「旧宮家の子孫」に皇籍取得させるための理屈で、「明治天皇の皇女(女系)の血統により、現在の皇室と血筋が近い」ことをアピールするために使われる。
女系天皇は、「旧宮家の子孫」の男系男子が誰もいなくなった時にはじめて議論されるだろう。
突撃一番
2024年9月19日
お二人ともコメントありがとうございます!
法制局と国会議員、両者に共通して言える事は、「皇室と国民の区別が、ちゃんとついてますか?」という点がどうにも頼りない所ですね。
「国民が皇族になれるか否かを、血筋で決めるのは違憲だ!」とコチラは言ってるのに、「皇族という特別な身分になるんだからいいじゃないか!」等と、明らかに思考の時系列が完全崩壊したような返答をしているくらいですから。
しかも、「法の番人」たる法制局がだよ。
彼等の論理を聞いてると、
「ウンコする前にケツ拭いたんだから、拭かなくていいじゃないか!」
と言ってるのと、変わらんと思います。
断言します。法制局員のパンツは、ウンコまみれです!!
あと、ききゅうさんへ。
「女系の血統だから」という理由で、皇族の継承順位を不当に下げない為にも、
【男女問わず、時の天皇の直系長子優先による皇位継承】
これを、寸分狂わず政治家に実行させなければなりませんね。
我々国民は既に「傍観者」という立場を脱し、政治家をして正しい政策を実行させるように導かねばなりませんから。
是非ききゅうさんも、地元の国会議員の選挙事務所へ、要望を届けてみてください。俺の文章を、全コピーして戴いても構いません(宛先くらいは変えた方がいいけど)。
出来れば「愛子天皇論」も持参でね。
基礎医学研究者
2024年9月19日
(編集者からの割り込みコメント)(国会議員に問題を解決するために前進しようとする意思があると仮定しての話ですが)例の内閣法制局の答弁に触れるのはよかったですね。このときのやり取りは、馬淵議員の本領発揮でしたが、自分、良いリマインドになりました。
>ききゅうさん
(ブログ主は突撃一番さんだから自分があまり言わない方がよいと思うのですが)だから、何なんでしょうか?ためにする議論のような気がしていますが。それって、男系であれ女系であれ、皇室で育たれたという環境のことは一切考慮に入れず、血統の論理だけの意見のような気がしますが?
ききゅう
2024年9月19日
憲法第九条のように、解釈改憲が行われるかもしれません。
旧宮家は、男系では天皇との血筋がかなり遠くなりますが、女系では明治天皇と血筋が近くなります。
「男系男子の血統と明治天皇の女系の血統を併せ持つ」として、優先される。
現在の女性皇族が一般男性と結婚して生まれた子供は、女系の血統のみだということで、皇位継承順位を下げられる。