最新の歴史研究は古代の皇位が双系継承だったことを示す

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歴史民俗博物館では、昨年「性差(ジェンダー)の日本史」というタイトルで、日本の歴史における男女の役割区分に関する最新の研究成果を示す展示が行われ、最近その図録を入手しました。
その図録に書かれていた興味深い話を、以下にご紹介いたします。

図録の一番重要な指摘は、古代日本は皇室も含めて元々双系社会だったということです。
7世紀末以前の日本では親族構造が双系だったことが、系譜の記録から判明しています。
それは皇室も同様であり、古事記において天皇の子は、父母が「娶(みあ)いて生む御子」という定型句とともに出生順に男女区別なく「〇〇王」と記されており、父母の血統を受ける点で御子たちは男女均等の立場にあったようです。

また考古学の分析により、古墳時代前期には女性首長は全体の3割から5割を占め、地域の盟主的首長となった女性もいたことが判明しています。
さらに埋葬された女性人骨の妊娠痕の分析から、女性首長が子供を産んでいたことも分かっており、女性首長からその子へ地位が継承された可能性が示されています。

こうした古代日本の双系原理の社会構造は7世紀末から8世紀初めの律令国家体制導入によって変わり、天皇の御子は「皇子」と「皇女」、氏々男女は「官人」と「宮人(くにん)」に男女で区分され、異なる待遇・役割が定められるなど、父系原理・男性優位のシステムが8世紀を通じて浸透していったとされます。

さらに図録は近代までの流れも記述しており、近世末まで女帝の即位が制度的に排除されたわけではなく、その他の女性も「家」の奥の構成員として政治的役割を担っていたのが、明治になって政治空間から排除されていったことを史料によって明らかにしており、その流れで女帝も制度的に否定されたと説明しています。

このように現在の歴史学の成果は、古代日本が双系社会で皇位も双系で継承されたことを示しており、男系派が主張する「伝統」は、女性が政治から排除された近代の価値観に基づく偏見にすぎないと言えます。
国民の圧倒的多数が女性天皇・女系天皇を支持しているという事実は、近代の歪んだ価値観にとらわれない日本本来の素直な感覚を示すものではないでしょうか。

政府・国会には、謙虚に歴史から学び、皇位継承から男系の縛りを早急に外すよう動いていただきたいと思います。

文責 東京都 りょう

4 件のコメント

    ねこまる

    2021年2月12日

    新鮮な知的興奮を覚えました。
    日本は元々双系社会であったのですね。
    島国であったからこそ、という気がします。
    結局この国は他国から文化を入れる時、良きものだけでなく悪しきものも入れてしまった。それが今に続くという事は、とても残念な事だと思います。
    一刻も早く取り戻さねば、と思いました。

    基礎医学研究者

    2021年2月7日

     貴重な資料の情報を提示していただき、感謝しております。古代日本は皇室も含めて元々双系社会であったということは、「皇統問題」を考える上で、協力な証拠であると思われました。私個人としは、りょう様言われます”さらに埋葬された女性人骨の妊娠痕の分析から、女性首長が子供を産んでいたことも分かっており・・・”の箇所に非常に説得力を感じました。少なくとも、男系主義者が主張している「Y染色体説」よりはよっぽど科学的根拠が大きいと思います(Y染色体は、おおざっぱには組み換えを起こさずに次世代に継承されますが、遺伝メカニズムからいきますと、Y染色体の同じタイプを持つものは、集団中にかなり存在するはずなので、これが「皇統」を保証するなどというのは、何とも怪しい話かと)。いずれにしまても、本来の日本の歴史・伝統に沿う形で安定継承が行われ、愛子さまが皇太子になれるよう皇室典範が改正されることを望みます。

    ダダ

    2021年2月4日

    日本が古代より双系社会だったことは、大切な指針になりますね!
    歴史研究も面白い!と思いました。投稿ありがとうございました。

    「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉があります。
    男系派は正に後者で、自分の男女観を投影させているだけ。
    天皇は歴史を学び、その上で伝統を変化させているわけですから、天地の隔たりを感じます。

    タルト

    2021年2月3日

    国立歴史民俗博物館の図録に、日本の歴史の男女の役割区分に関する最新の研究成果において、7世紀末以前の日本では親族構造が双系だったこと、皇室も同様であり、古事記において天皇の子は、出生順に男女区別なく「〇〇王」と記されており、父母の血統を受ける点で御子たちは男女均等の立場にあったと書かれていることを教えていただき有難うございました。
    女系天皇容認というと「男系男子天皇を否定するのか」と反発する人がありますが、そうではなく、どちらも認める日本古代の「双系による皇統継承」に還るということなのだと思います。近代思想が明治の日本にもたらした男尊女卑の誤りを修正して、男女分け隔ての無い、古代の良きものをよみがえらせる、日本の新生を切望しています。

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