
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」は、蔦谷重三郎(横浜流星)や花ノ井(小芝風花)らが活躍する吉原パートと、田沼意次(渡辺謙)VS松平武元(石坂浩二)の権力闘争が主軸の江戸城パートが同時進行しています。老中首座の武元や田安賢丸(後の松平定信:寺田心)は学問(朱子学)と武芸こそ武家の本分と考えるため、時代が重農主義(年貢米を介した農民と武士の経済)から重商仕儀(年貢米が豪商に買い叩かれる)へ移ったことを痛感するが故の田沼の金融政策(南錂二朱銀の鋳造&流通:武士が再び経済主権を握る)を理解せず、商人が米を高く買わないなら上様の威光を高めて言うことを聞かせるべきという空想権威主義を振り翳します。ちなみに山師(鉱山技術者)の平賀源内(安田顕)が田沼に重用された理由は新銀貨鋳造に必要な銀鉱脈探索のためです。
さて、天明大飢饉や浅間山噴火に対処できず失脚した田沼の後に幕政を担うのが松平定信で、彼は寛政改革(朱子学的規範に基づく規制強化・言論統制・緊縮財政)を過激に推進したため、田沼時代に版元(出版社)を創業した蔦重も大ダメージを被ります。また、劇中で花ノ井に貢いで遺産を食い潰した長谷川平蔵(後に火付盗賊改方=鬼平:中村隼人)は改革期の老中・定信に重用されますが、蔦重と花ノ井の絆への嫉妬も言論弾圧を激化させる原因かもしれません。
ところで、賢丸を擁する田安家と一橋・清水を合わせた3家は御三卿(8代・吉宗の血を引く将軍家のスペア)と呼ばれ、吉宗(8)→家重(9)→家治(10)の徳川宗家が絶えると、一橋治斉(生田斗真)の長男が徳川将軍家を継ぎました(11代・家斉)。
リアル現代の男系固執派が唱える「皇統の安定化には4つほど宮家が必要」説は上記の御三卿と同じ「血のスペア」です。「べらぼう」劇中の治斉は「子を生す以外にやることが無い」というニヒリズムを表明しており、やがて恐るべき怪物になると予想されます。「べらぼう」と同じ森下佳子脚本の「大奥」(男女逆転版)でも治斉(仲間由紀恵)が悪のラスボスでした。故三笠宮寛仁殿下も生前「血のスペア」という立場に苦悩されましたが、これは人間の尊厳を奪う制度だと言えます。もし旧宮家に連なる男系子孫(竹田・久爾・東久邇・賀陽)を現存宮家に養子入りさせる案が実現したら、新宮のニヒリズムが皇室の権威を瓦解させる懸念も有り得ます。
文責:京都のS
3 件のコメント
京都のS
2025年1月24日
パワー様、※ありがとうございます。御三卿については、徳川15代将軍・慶喜を例に取ると解りやすいでしょうか。御三家の一つ水戸藩の当主・徳川斉昭の七男・慶喜は一橋家(御三卿の一つ)に養子入りしました。そして、尾張徳川家出身の慶福→家茂(14代将軍)が急死すると、一橋慶喜が15代将軍に就任しました。御三家や御三卿が有っても全く万全ではないと言えます。つまり男系主義を貫く限り常に絶家の危機に晒されるわけです。
田沼意次&平賀源内&蔦谷重三郎VS松平定信&長谷川平蔵、徳川家斉VS水野忠邦、遠山金四郎VS鳥居耀蔵という各対立については複雑なイデオロギーが介在しているような気がします。前者=経済的自由&時処位に適した改革、後者=朱子学的規制、前者=重商主義推進、後者=重農主義回帰、前者=積極財政(経済主権を握る)、後者=緊縮財政(ひたすら締め付けるだけ)という具合です。そりゃ前者の時代には文化が花開き、後者の時代には全てが停滞しますわな。
パワーホール
2025年1月23日
御三卿ですが、御三家もあるのに継承システムを複雑化させていますよね。これに関しては、全然改革になっていないのではないかと思います。
また、田沼意次について述べていますが、「天保の改革」のときは田沼に近いスタンスの遠山金四郎が善玉で、松平定信に近い水野忠邦と鳥居耀臓が悪玉で「寛政の改革」のときと逆転しているのが興味深いです。私は、松平定信らより田沼や遠山の方が改革派ではないかと思います。文化の発展や身分の垣根を超えた政策を行っているからです。
京都のS
2025年1月23日
掲載ありがとうございました。「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」の要素を含むブログは以下です。
・「『べらぼう』が始まった今だから言っておきたい平賀源内異聞」( https://aiko-sama.com/archives/48334 )
・「『光る君へ』と『べらぼう』を繋ぐレイラインと愛子天皇への道」( https://aiko-sama.com/archives/49128 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37751 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/48744 )