引き続きまして、意地悪奸臣に囲まれた、孤軍奮闘の孔明達をご紹介します。
曹操と戦うのか否かの中、孔明は劉備達の起死回生の策として、魯粛は自分の君主の為、曹操からの降伏を撥(は)ねつけんと、孫・劉の同盟を考え、呉の地へ赴きました。そこへ、君主を軽んじ、自分の保身が大事の重臣達に囲まれ、舌戦を挑まれます。
ドンの張昭は昨今で言うとマウント大好きで、君主である、皇室や皇族に対して尊敬観られない、頭でっかち、もはやインテリ風どこへやらの知識人の如く他者をこき下ろす論調で孔明に喧嘩を仕掛けたり、青瓢箪(あおびょうたん)の名士の虞翻が曹操の大軍をただ怖がり声をあげ、孔明は冷静に分析しない2人を指摘していきます(ここまでが、前回のあらすじ)。
そこへ、歩隲(ほしつ)という文官が立ち上がり、孔明を睨みつけ、 「貴公が管仲(かんちゅう)や楽毅(がっき) とはとんでもない!さしずめ、古の蘇秦(そしん)や張儀(ちょうぎ)のように、舌先三寸でこの国を利用しようとする腹づもりなのでは?」と負けじと声をあげます。 孔明はやれやれ、とため息つきます。 「あなたはご存知ではない様ですが、 蘇秦や張儀はただの、貴方がたの様な弁舌だけの人ではありません。彼らは国を背負っていた大臣です。大軍で攻めるという曹操の脅しに震えあがって意気地なく降伏しようとしている人が彼らのことをあれこれ言うのは片腹痛いです。確かめもせず、無知をひけらかさないで下さい。」 と言葉で一刀両断していきます。 孔明は最初は涼しい顔で降伏派の重臣達を論破していきますが、聞き捨てにならない主張に腸を煮えた様子になります。
薛綜(せっそう)という文官が孔明に一礼し、孔明にいけしゃあしゃあと 「孔明殿は、曹操をどう思いますか?」と尋ねます。 これに孔明は何を当たり前の事を聞く?と言わんばかりに、「曹操は漢王朝に立てついてる逆賊です!」と答えます。 薛綜はフフンと孔明を馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、 「それは違いましょう!曹操は今や天下を半分も占めた君主で、力も金も人もあります!どう観ても、みんなが曹操が天下を治めるのは道理と言ってます。戦うなんてとてもとても、逆らうなんて馬鹿がすることです。玉子で石を撃つの如しですよ。漢は衰えてるのは明白、我々呉を巻き込まないで下さい。」 この言葉に孔明がカチンっ!と来ました。 「黙りなさい!!曹操は漢に仕えている身でありながら、衰えたと見たら取って代わろうとしているのですぞ!!これを逆賊と呼ばず、何と言うのですか!?あなたは曹操が道理だというが、あなたもこの国が弱くなったら、君主が窮地にあっても同じことをするのですか?それこそ逆賊でしょう!馬鹿な質問をしないで頂きたい!!」
孔明が言葉でこれでもか!という感じで降伏派の重臣達を叩きのめした後、魯粛と同じ主戦派のベテラン武将の黄蓋が場を治めてとりなし、ついに孔明は孫権と謁見しました。
孫権は孔明に恭しく一礼し、「孔明先生、曹操軍はどのくらいの戦力でしょうか?」と尋ねます。 孔明は初手の質問と孫権が不安そうな様子に”ん?孫権は魯粛達寄りと聞いていたが、何か降伏派の馬鹿どものせいで日和見しているぞ?”と気づきます。孔明がチラりと魯粛を観ると魯粛の顔に焦りが観えます。下手な返答すると先ほど叩きのめした降伏派がゾンビとなって孫権を取り巻く のが目に観えたのでしょう。 孔明は孫権に、「曹操は百万、劉備軍は1万ほどです。」と正直に孫権に話すと、孫権は「曹操の百万は真か?」と躊躇します。 孔明はやり方を変えようと決め、日和見の孫権に 「そこまで気にされるなら降伏派の意見を容れて降伏するのも良いですよ?」と間逆の事を言います。
これには先ほど叩きのめされた降伏派の重臣と孫権、主戦派である魯粛達が呆気にとられ、 孫権はそうか、と一応納得するも、ふと孔明に 「ん?降伏が良いというのなら、何故劉備殿に降伏勧めんのだ?」と尋ねます。 「ええ?劉備様は貴方様と違って漢に忠誠を誓ってますし、大義を大事にしますから。名君なら例え一人になっても降伏なんて絶対にしません。」 とサラリと言ってのけました。 これに孫権が激怒し、「何だとっ!劉備に降伏させないくせに俺に降伏勧めるとは!!」と席を蹴って退出しました。
降伏派は「何だコイツ、言ってる事が違うじゃないか!やはり愚か者なんだな。」と孔明を冷笑して安堵をしつつ退出しました。
魯粛は血相を変え、「話、違うじゃないか!」と孔明に詰め寄ります。 「いや、すみません。孫権殿があまりにもおかしくて。」と悪びれず言いのけると、魯粛は”はあ!?”と気色ばみます。 「だって、孫権殿は曹操の数ばかりを気にして、どう勝とうかと尋ねないですから。百万の軍勢でも勝つ方法あるのに。」
魯粛はハッとし、孔明に真かと念を押すと孫権に謁見します。 孫権は最初は機嫌悪く魯粛に当たりましたが、魯粛から孔明の真意を聞くと、孔明に再度謁見しました。孔明は「敵は百万、されど降伏したばかりの兵もあり、烏合の衆でもあり、また彼らは陸の戦いには慣れてますが、水軍での戦いには貴方がたより慣れていません、また、南方の気候が北出身の兵が多くいため、体調崩しやすくいです。」と指摘します。 「此度は水軍が要になるでしょう。孫権殿の軍にとってとても有利かと思われます。」 孫権はなるほど!と納得し、皆を集めて主戦派で動くと宣言します。
今回はここまでです。
次回は揺れ動く孫権の気持ちとあの名軍師と呼ばれる人と孔明の駆け引きです。 (三国志編その8、赤壁編その4)に続きます。
文責 神奈川県 神奈川のY
3 件のコメント
神奈川のY
2025年3月6日
基礎医さま、あしたのジョージさま、コメントありがとうございます!
基礎医さま、三国志の面白さは戦の駆け引きもありますが、舌戦も面白いですよね。
特に劉備軍の見せ場の一つでもあり、数えてませんが、繰り返し色々な物で観ているところです。実際の舌戦または外交でどんなやり取りがあったか興味津々です。もっとけちょんけちょんにされてたのかもです。
あしたのジョージさま、
孔明は中々の食わせ者でございます。
蜀には癖が強い、もとい個性がある人たちが揃っていますが、孔明もその一人ですね。剣部隊の面々と共通しているところかもしれません。孔明は劉備達を背負って奮闘する肝っ玉母さんタイプかもです。
あしたのジョージ
2025年3月6日
孔明は、実にしたたかですね。
何とか上手い事、孫権の重い腰を上げさせてしまいました。
何を心配しているのかを感じて、そこの心配をなくしてあげる事によりやる気を起こさせる、頭が良いとしか思えません。
軍師というのは、ある種精神科医のような面があると思ってしまいました。
基礎医学研究者
2025年3月6日
(編集者からの割り込みコメント)寄稿、ありがとうございました。いまさらながら、三国志のおもしろさは、戦の部分だけでなく、このような舌戦の部分にも、あると思っていました(これは、自軍の軍議も含めて)。で、この部分について自分が改めて学んだことは、主君への思いが強ければ、あらゆる詭弁を弄して目的を成し遂げる、ということですかね(相手が、最初から保身のために主君を売ろうとしていることが明白であるから、まともに相手する必要もないですしね)。だから、呉の論客の前と君主の前では、目的のために言い方を変える!というのは、学ぶ点ですかね。
*自分、三国志演義では、この部分、やけに孔明のすごさが目立ち、他の群臣はまるで引き立て役のようですが、実際は、重臣を説き伏せるために、かなりの弁論を駆使したのではないでしょうか!?