【論破祭り】女は「皇長子」じゃない!?小物ronpaに学ぶ、「シナ男系」 (後編)

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さて、時代は敏達天皇から少々下りますが、西暦にして681年とされる天武天皇10年頃といえば、ちょうど飛鳥浄御原令の成立前後の時代なので、「天皇」「皇后」「皇太子」等の称号が確立される過渡期といえます。

その頃までには、天皇の子を意味する「皇子」という称号も、その他の「王」とは区別して使用されるようになっていたそうです。

普通、天皇の娘であれば「皇女(ひめみこ)」と表記されるところではありますが、飛鳥寺東南にある飛鳥池遺跡からは、天武天皇の娘で、のち伊勢斎宮として派遣された女性なのになんと、「大伯皇子(おおくのみこ)」と表記された木簡が発見されています(義江p134、135)。

まだ男女別による称号が未分化であった、シナ律令導入以前の時代の名残だったのかも知れませんね。 ある意味、本物の「ジェンダーフリー」と言えるのかも!?

さらに、「愛子様サイト」にお集りの皆さんにはすっかりお馴染み、

養老(及び大宝)継嗣令第1条の、このフレーズについて。

「皇兄弟・皇子みな親王とせよ(女帝の子も亦同じ)。」

直訳すると、「天皇の兄弟も子も、みな親王とせよ」となり、( )内の注釈を踏まえれば当然ながら、女帝の子であっても皇位継承資格を認める規定だったのは勿論です。

美貌の女帝・元正天皇も、母親である元明天皇の即位と同時に、その娘として「氷高内親王」となった説は有力ですが、男系カルトの皆様方が言うことには、

「元正天皇は元明天皇の娘としてではなく、文武天皇の姉として『親王』になったんだ。 だから女系継承ではないのだ!」

という御高説。

まあ、この説自体は、高森明勅先生も『日本の10代天皇』の中で同じ可能性を指摘されているし(高森p202)、それなりに説得力のある意見ではあるんですけどね。 ただし、これも「兄弟」という文言に「姉妹」の意味も含めないと成立しない説なので、どっちみち「男女双系」が前提となってしまいます。

ついでに言うと、継嗣令では「親王とせよ」と謳っておきながら、『続日本紀』では氷高「内親王」と既述されている事にも顕著なように、「親王」「内親王」も特段、当時の日本社会の中では厳密に区別されていなかった事も、「シナ流」の完コピ律令ではない、「日本流」の用法と言えるでしょう。

シナでは「兄弟」「親王」に、女は含みませんから(義江p173)。

さて、こんな風に見ていくと、現代の皇室典範第2条の「皇長子」という文言から、いちいち「女」の意味を除外する事がいかに馬鹿馬鹿しく、尚且つ「シナ男系主義」にどっぷり洗脳された思想なのかが見えてきますね。

「愛子様は皇長子であるにもかかわらず、ただ『男系男子』という規定だけが即位の障害となっている」

と解釈するのが、マトモな日本の保守思想家が取るべき態度だと言えるでしょう。

一回目ブログでも冒頭で触れた、女優でも男と同じように「俳優」と呼ぶ風潮が盛んな事も、或いは古代「男女双系」社会への原点回帰として、歓迎すべきなのかも???

しらんけど。

文責 北海道 突撃一番

参考文献

・義江明子『女帝の古代王権史』ちくま新書2021年3月10日
・高森明勅『日本の10代天皇』幻冬舎新書2011年5月30日

5 件のコメント

    さらうどん

    2025年3月9日

    受験勉強的な意識で知識を埋めようとすると、それは知識じゃなくて蘊蓄になってしまうのでしょうね。やっぱり感性や動機が大事です。理屈を追い過ぎると動機の部分の「芯」がグラつくんじゃないかなと思います。自分を冷静に客観視するためにもそういう部分は大事なのかなと。

    突撃一番

    2025年3月9日

    掲載&コメントありがとうございます!

    特に平安期以降の天皇は、藤原氏の傀儡みたいな扱いだったのは有名ですが、自分の娘を天皇に嫁がせて「次の天皇」を産ませるには、「天皇=男」が都合が良かったのでしょうね。ある意味、「天皇」という地位より「藤原氏の都合」の方が上位だったと言えるかもしれません。

    同じく続日本紀についても、編纂されたのは平安期なので、律令に含まれるシナ男系主義が、貴族たちの間にも浸透した後の時代ですから、元正天皇が「草壁皇子の血筋」を強調する書き方だったのも、その影響だったんじゃないかと今のところは考えています。

    「男女による称号の分化」も、律令が浸透していくにつれて段々厳密に分けられるようになったらしいです。

    基礎医学研究者

    2025年3月9日

    (編集者からの割り込みコメント)今回も、寄稿ありがとうございました。そういえば、確かに、最近「女優」という言葉がでてこなくなりましたね。「女優」という言葉が強烈にインパクトあったのは、美内すずえさんの大作「ガラスの仮面」の初期に主人公北島マヤの「顔ぶたないで!あたし「女優」なんだから!!」というエピソード。閑話休題
     それに絡めて、王に最初の段階では、皇室の方々の名称も大きな区別がなかったというのは、なかなか考えさせられますね。で、むしろ現代こそ、かなりの無理をして「男系男子」を続けようとしていることがわかるエピソードで、これからの立法府における「皇位継承問題」の議論でも、無理筋の部分が日々、国民の前にさらされることを、望みます(そうすれば、国民の声はもっと大きくなるでしょう)。

    ありんこ

    2025年3月9日

    男系派っていうのは結局のところ皇位なんてものは性別よりも重要じゃない立場としてしか思ってないんですよね。
    彼らは何よりも本邦において性別が大切と思っていて、皇位なんて最も偉い立場だとは思っていない。
    物事の価値判断が天皇であることよりも男だ女が優先させられるというのは、天皇は優先順位の低い価値と言うこと。
    先日の則天武后の女系継承の話もありましたが、それだけ「皇帝」の地位の価値があると言うことの証明でしょう。
    本来最も尊い地位というのは男女を越えて当たり前でしょう。
    皇位が最も尊い立場じゃない事が伝統なんて有り得ますかね?ないとしか言いようがない。皇帝が男しか存在しない男の称号としての皇帝とかいう世界じゃないんですよね本邦は。天皇は男も女もいるんだから。

    宜しければご教示下さい

    2025年3月9日

    続日本紀派は他に「草壁娘としての即位」だの「続日本紀が正史で、元明や元正がどう扱われているかが一目瞭然だからですよ。元明は天命開別天皇之第四皇女、元正は天渟中原瀛真人天皇之孫。日並知皇子尊之皇女、とあって、母は出ないんですよ」
    と講釈たれてましたが、元明ー元正は「皇位」継承したので母ー娘でしょう。
    彼等は自分の都合の良い物だけを「聖典」化して、無理くり歴代10代8名の女系天皇を「父方が皇族なら男系女子だ」とか屁理屈捏ねるんですよね。

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