第三回全体会議の議事録「皇族数確保のための第1案『女性皇族の婚姻後の皇族の身分保持』」の論点「配偶者及び子の皇族 の身分及び皇位継承資格について」の法制局の見解について
『愛子天皇論』に照らして、あらためて取りあげてみます。
「皇族数確保のための第1案『女性皇族の婚姻後の皇族の身分保持』」に対する各党・各会派の意見の要点
令和7年2月17日 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく 政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議(4頁)
○ 内 閣 法 制 局 第 一 部 長 ( 佐 藤 則 夫 君 ) 内 閣 法 制局 で ご ざ い ま す 。
御 質 問 い た だ い た 点 に つ き ま し て 、 ま ず 憲 法 十 四 条 に つ い て お 答 え 申 し 上 げ た い と 思 い ま す 。
ま ず 、 皇 族 の 範 囲 に つ き ま し て 、 皇 室 典 範 、 す な わ ち 法 律 に 委 ね ら れ て い る と い う と こ ろ で ご ざ い ま す 。
そ の 上 で 、 こ の 具 体 的 な 制 度 が 、 今 御 検 討 の 中 、 必 ず し も 明 ら か で は な い と 認 識 を し て お り ま す が 、 一 般 論 と し て 申 し 上 げ ま す と 、 憲 法 第 二 条 は 法 の 下 の 平 等 を 定 め た 憲 法 十 四 条 の 言 わ ば 特 則 を 成 す 規 定 と 解 さ れ ま し て 、 こ れ を 踏 ま え て 、 皇 室 典 範 、 現 行 の 皇 室 典 範 に お き ま し て は 、 皇 位 継 承 者 を 男 系 の 男 子 に 限 る 旨 を 規 定 し 、 同 時 に 、 皇 室 典 範 十 二 条 に お き ま し て 、 女 性 の 皇 族 、 婚 姻 の 際 は 皇 族 を 外 れ る と い う こ と な ど を 規 定 を 置 い て お り ま す 。
こ の よ う に 、 こ の 皇 位 継 承 者 を 男 系 の 男 子 に 限 る と い う こ と を 踏 ま え て 、 女 性 皇 族 の 配 偶 者 の 方 と お 子 さ ん と が 皇 族 の 身 分 を 有 し な い と い う 制 度 を 検 討 い た し ま し て も 、 憲 法 十 四 条 と の 関 係 に お い て 問 題 が 生 ず る も の と は 認 識 を し て お り ま せ ん 。
そ の 関 連 で 、 今 度 は 憲 法 二 十 四 条 に つ い て お 話 を し た い と 思 い ま す 。
ま ず 、 憲 法 二 十 四 条 一 項 の 規 定 に つ き ま し て 、 最 高 裁 の 判 決 に お き ま し て 、 こ の 憲 法 二 十 四 条 の 規 定 と い う も の が 、 両 性 の 本 質 的 平 等 の 原 則 を 婚 姻 及 び 家 族 の 関 係 に つ い て 定 め た も の で あ る 、 夫 た り 妻 た る の ゆ え を も っ て 権 利 の 享 有 に 不 平 等 な 扱 い を す る こ と を 禁 じ た も の と 説 示 を さ れ て い る と こ ろ で ご ざ い ま す 。
こ の 点 に つ き ま し て も 、 一 般 論 で 申 し 上 げ ま すと 、 配 偶 者 の 方 に 皇 族 の 身 分 を 有 し な い 、 そ う い う 案 に お き ま し て 、 例 え ば こ の 参 政 権 で す と か 政 治 活 動 の 自 由 な ど 婚 姻 や 家 族 と 関 係 し な い 権 利 に つ き ま し て 、 そ の 内 親 王 あ る い は 女 王 た る 配 偶 者 の 方 と の 間 で 差 異 が 生 ず る 状 態 に な っ た と し ま し て も 、 こ の 点 に つ き ま し て も 基 本 的 に は 憲 法 二 十 四 条 一 項 の 適 用 が 問 題 と な る も の で は な い 、 こ の よ う に 考 え て お り ま す 。
日本国憲法
第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第24条
1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
皇室典範
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第十二条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
「こ の 具 体 的 な 制 度 が 、 今 御 検 討 の 中 、 必 ず し も 明 ら か で は な い と 認 識」とは、「女 性 皇 族 の 配 偶 者 の 方 と お 子 さ ん と が 皇 族 の 身 分 を 有 し な い と い う 制 度」が、「今検討中なので、明確ではない」ということ。
一般論では、憲法第二条・皇位の世襲は、憲法14条・法の下の平等の特則(当事者の合意で法の定めと異なる定めをすることができる規定=例外)であり、これを踏まえて皇室典範第一条・皇位は男系男子、第十二条・皇族女子は婚姻後、皇族の身分を離れることが規定されている。→国民と、天皇・皇族に身分の違いがあることを踏まえて、現在の皇室典範が規定されている。
「女 性 皇 族 の 配 偶 者 の 方 と お 子 さ ん と が 皇 族 の 身 分 を 有 し な い と い う 制 度」は憲法14条・法の下の平等の問題が生じない、および、憲法第24条第1項・夫婦が同等の権利を有することを基本の適用が問題になるものではないのは、女性皇族の配偶者の方とお子様が子が国民のままで身分の違いがあったとしても、そもそも特則(例外・特例)なので憲法違反ではない。
憲法第14条と24条は第三章・国民の権利と義務の中にあります。
日本国憲法 全文
法制局の見解は、要するに「女性皇族が婚姻後に皇族の身分保持をしても人権はない」ので「配偶者の方とお子様が国民のまま」であっても、憲 法 二 十 四 条 の 規 定 する「 両 性 の 本 質 的 平 等 の 原 則 を 婚 姻 及 び 家 族 の 関 係 に つ い て」「権 利 の 享 有 に 不 平 等 な 扱 い」は問題がない。
女性皇族は憲法上は特例なので、家族と身分が違っても問題はないとのことですが、一方で国民のままの配偶者の方の立場からすれば、家族である女性皇族と身分が違えば、「権 利 の 享 有 に 不 平 等 な 扱 い」となり、憲法違反になるのではないでしょうか?
「皇室は人権の飛び地」論にアクロバティックに結び付けて「配偶者の方とお子様が皇族になると、皇位継承資格が生じる=女性・女系天皇に繋がるので、国民のままにしておきたい」ということになると思います。
『愛子天皇論』(SPA!2025年1月28日号掲載)には「皇室は人権の飛び地」論について
・法学者・長谷部恭男(はせべ やすお)氏の「天皇にも、皇族にも、国民の権利は一切認められない」という憲法解釈の一つに過ぎないこと
・法学者・園部逸夫(そのべ いつお)氏は「天皇は基本的人権を持つ『国民』に含まれ、『皇位の世襲制』と『象徴という地位に伴う務めの性質』から必要最小限の特例・制約が認められるとする」「園部氏によれば、これが通説で、政府の解釈も同様」 と描かれています。
「生身の人間」に対して余りにも冷酷無比な憲法解釈の一つに過ぎない「皇室は人権の飛び地」論で、特例を肥大化させてしまっている法制局の見解。
「天皇は基本的人権を持つ『国民』に含まれ、『皇位の世襲制』と『象徴という地位に伴う務めの性質』から必要最小限の特例・制約が認められるとする」という通説に立ち戻り、真に安定的皇位継承に資する見解に、アップデートしていただきたいと思います。
「愛子天皇への道」サイト運営メンバー まいこ
2 件のコメント
ねこ派
2025年3月17日
『……一 般 論 と し て 申 し 上 げ ま す と 、 憲 法 第 二 条 は 法 の 下 の 平 等 を 定 め た 憲 法 十 四 条 の 言 わ ば 特 則 を 成 す 規 定 と 解 さ れ ま し て…… 』
と内閣法制局第一部長は答弁しているけれど、この解釈を受け取る側は、これを絶対視してはならず、せいぜいが、通説の一つ、学説の一つ、とでも思うべきなのではないか?
変なのです。
法令の条文では、一般論として申し上げますと、まず、原則を掲示し、次に、特則が置かれます。何条第1項が原則で、同条第2項以降に特則が続くのが通例であり、また条文中に但し、というのがあれば、それ以降が特則です。
つまりは、先に原則を掲げ、後に特則が続くのです。
ところが、内閣法制局第一部長が言っているのは、憲法で先に掲示されている第2条を特則とし、だいぶ後に続く第14条を原則としており、あべこべです。
しかも、第2条は天皇に関する条項、第14条は国民に関する条項、君臣の別という観点からすると、両条項を特則・原則として関係付ける解釈は、私は、間違っているように思います。
電車は乗車券だけで乗れるのが原則で、特急券がないと新幹線や特急に乗れないのが、いわば特則です。
鉄道に当てはまるルールと、飛行機に当てはまるルールとを関連付けるのは、無理が生ずるでしょ。
内閣法制局第一部長の言っていることは、このような譬えで評価できる代物で、要するに、変だな、おかしくないか? というのが、私の抱く疑問です。
それから、同じく内閣法制局第一部長が述べた、
『……一 般 論 で 申 し 上 げ ま すと 、 配 偶 者 の 方 に 皇 族 の 身 分 を 有 し な い 、 そ う い う 案 に お き ま し て 、 例 え ば こ の 参 政 権 で す と か 政 治 活 動 の 自 由 な ど 婚 姻 や 家 族 と 関 係 し な い 権 利 に つ き ま し て 、 そ の 内 親 王 あ る い は 女 王 た る 配 偶 者 の 方 と の 間 で 差 異 が 生 ず る 状 態 に な っ た と し ま し て も 、 こ の 点 に つ き ま し て も 基 本 的 に は 憲 法 二 十 四 条 一 項 の 適 用 が 問 題 と な る も の で は な い ……』
というのも、おかしい。変です。
そのような解釈が通用するのなら、男女逆の場合を考察するに、雅子さまや紀子さまなどが、ご結婚された今の状態のまま、皇族の身分を離れ、国民に戻ることが可能になるのでは?
そういうことが可能になるよう立法したり、皇室典範を改正したりしても構わず、それは憲法上は問題ない、となるのでは?
内閣法制局第一部長が言うまでもなく、憲法の原則は、男女平等なのだから。
突撃一番
2025年3月15日
参政権とか政治活動の自由って、そもそも法制局が言うように「婚姻や家族と関係しない権利」と言えるのか?
絶対違うと思う。
家族の支えがあってこそ、選挙戦を戦える候補者だって大勢いるだろうから。
配偶者が皇族のままだと、それも絶対に、制限がかかってしまうでしょう。
逆に、「愛子内親王様の夫でございま〜す!」というブランド力が、政治活動に利用される危険性だってゼロではないじゃないか。
その程度の、カタギの大人なら誰でも想定出来るリスクすら、内閣法制局には何故わからないんだ!?
おい第一部長!!
•••それはそうと、園部逸夫氏の言う、皇族に対する権利制限は「象徴・世襲」という制度を維持する為の、必要最低限であるべきだという見解に、自分も大賛成です。
「ジェンダー平等」の価値観を皇室典範に取り入れ、女系継承まで認めれば、世襲制度が壊れるどころかむしろ、より盤石なものになるのは目に見えてる事ですから。
制度維持に必要な範疇を超えてまで、過度に皇族の人権を制限する事なんか、絶対に許してはならない!!
参考文献
・園部逸夫『皇室法入門』p66