神代から続く常識に立ち返ろう!

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山本七平の『日本的革命の哲学』を読まれたことはあるでしょうか。


同書には「継受法」「固有法」という概念が出てきます。中国から取り入れた「律令」が継受法で、日本古来の不文の常識から立ち上がった「貞永式目」が固有法という位置づけです。「式目」には女性が家の当主となる場合の決め事も書かれており、それが日本の常識だったことが窺えます。


また「養老律令」は継受法であるにも拘らず、継嗣令に「女帝の子もまた同じ」という原注(女系継承を認めることを示す注釈)があり、それは我が国に深く根付いた常識が顔を出したものと思われます。では我が国の常識とは一体どのようなものでしょうか。

 日本人の祖先の多くは縄文人ですが、縄文時代の日本やそれ以前(日本列島に到達する前)の伝承が反映されていると考えられる日本神話には、海洋民的な要素が非常に多く見られます。


東南アジアや太平洋島嶼地域の一部の海洋民では、男性は働かず遊びに興じ、主として女性が働くという文化的特徴があったためか、父系よりも母系が重視されていたようです。


また『古事記』神代記には女神の側に主導権のあるエピソード(女神の方から気に入られた場合しか結婚できない:イザナミ・ヤガミヒメ・スセリヒメ・トヨタマヒメ…)が多くあります。


1万年以上も続いた縄文時代が日本人の基層なのですから、後から流入した儒教の影響が数百年ほど続いたとしても、基層から溢れ出るスピリットとしての常識は揺るがなかったと思われます。

 隋・唐の影響を受けた律令時代から遣唐使廃止以降の国風文化の時代を経、やがて武家が力を持つ武断的な時代に入って男性性のプレゼンスは爆上がりしましたが、
それでもなお「貞永式目」のように女性の権利を認める決め事があったという事実は、それが日本の伝統(常識や慣習から因習が削ぎ落されたもの)だったからと言う他ありません。

 伝統保守派を自認している方なら、日本神話から続く伝統に立ち返ってみませんか?


リベラル派を自認している方なら、女性を尊重していた日本の歴史的事実にも目を向けてみませんか?


 つまり、女性天皇・女系天皇を認め、皇位継承は双系の直径長子優先とし、女性を当主とする宮家の創設も認めてはどうか?ということです。

(メールより)文責 京都のS

11 件のコメント

    京都のS

    2022年5月31日

     以下の論考は、このブログとも関連します。
     「古代女性史から解き明かす皇位継承のジェンダーバイアス」(義江明子:https://news.yahoo.co.jp/articles/e52149cd7081d3de76cd2c02bcc0068229230034?page=1)によれば、双系システムが日本のオリジンだと判ります。

    ※後からカテゴリー追加できるなら「書籍」も追加してください。

    ただし

    2021年6月28日

    とても面白く、そして楽しく、勉強をさせて頂きました。日本の歴史を学ぶことは、楽しいですね。
    いわゆる男系派は、マクロな視点がたりないのだと気付きました。勉強不足なのに知識をひけらかそうとするから、痛い状況になる。それが公に大いに影響を与えているのだから、笑ってはいられませんが。
    為になることを学ばせて頂き、感謝いたします。

    京都のS

    2021年6月26日

     ちなみに『日本的革命の哲学』は、関岡英之氏の『拒否できない日本』最終章で、TPPへの対処法として紹介されています。また、この『拒否できない日本』は小林先生の『目の玉日記』で、白内障を患った先生が同じ本を何冊も買ってしまった記録として描かれた大ゴマで最も多く描かれていた本です。

    京都のS

    2021年6月25日

     ダダ様、ナクラ様、感想ありがとうございます。タルト様、継受法が漢意の発露、固有法が大和心の発露で間違いないと思います。西洋の男女平等は「アダムの肋骨からイブがつくられれた」とするキリスト教的男女観への自己批判から生じたと思われます。戦争に明け暮れる時代が再び来ない限りは普遍的な考え方になっていくのは間違いなさそうです。

    京都のS

    2021年6月25日

     「列島に塁移入した」の部分は「列島に流入した」です。申し訳ありません。

    基礎医学研究者

    2021年6月25日

    京都のS様
     基礎医学研究者でございます。わざわざ、返信ありがとうございます。いや、まさしくおっしゃる通りでございます。DNAレベルのお話は、時間スケールをどのように設定するかの問題はあるとしても、様々な場所から祖先が入ってきてハイブリットされたと、私も思います(基本的には、埴原和郎 の「二重構造モデル(日本に存在する祖先は縄文人で、その後弥生人と混合し、ハイブリッドで現在の日本人集団が形成される」で大体は説明つくのだろうと)。さて、このコメントでも補足いただきましたが、日本神話に与えた影響の大きさから考えれば、水平型=東南アジア海洋民というのは大変興味深く、私個人は、柳田國男が提唱された「海上の道(琉球諸島や台湾島を通って日本人の祖先がやってきた)」を彷彿させられた次第です。私は人類学の専門家ではありませんが、ヒトの遺伝病を考えるときに、どうしてもヒトの成り立ち(特に日本人の成り立ち)には大きな関心がありました。
     今回も勉強になりました。少なくとも私レベルでは、一歩議論が深まりました(感謝致します)。

    京都のS

    2021年6月25日

     基礎医学研究者様、貴重な見解をありがとうございます。日本人のDNAは列島に塁移入した各人種のハイブリッドだと思っています。シベリア系や中央アジア系が北から、東南アジア系や太平洋島嶼系が南から入り、その各人種が列島内で混ざったのが日本人の祖先だから、日本人は列島内で誕生したとしても問題はないと考えられます。
     ただ、ここでDNA配列とは異なる文化的な子孫となればいかがでしょうか。日本神話のエピソードは大きく「垂直型」と「水平型」とに分けられると思われます。造化三神や高天原からの天孫降臨は垂直型で、オノコロ島での国生みや海との関わりが深くなる日向三代などは水平型です。前者が大陸由来、後者が東南アジア由来と考えられます。日本文化の基層となっているのは、日本神話に与えた影響の大きさから考えれば、水平型=東南アジア海洋民の方ではないか?というのが私の見解です。

    基礎医学研究者

    2021年6月24日

     興味深く読ませていただきました。山本七平の『日本的革命の哲学』については読んだことはなく、継受法と固有法については勉強になりました。”縄文時代の日本やそれ以前の伝承が反映されていると考えられる日本神話には、海洋民的な要素が多い”というのは意表を突かれましたが(最近の縄文人のゲノムを直接解析した結果では、1.縄文人のDNA型は東南アジア系とは異なり、日本で誕生した可能性のあること、2縄文人の集団構造は単一ではなく複数構造であった可能性のあることが挙げられていた)、私見では、非常におもしろい論考でした。そして何よりも、こうした「双系の歴史」を保守もリベラルも見つめ直してみては?という、京都のS様の結びには、激しく同意であります。

    タルト

    2021年6月24日

    山本七平の「継受法」と「固有法」について、ご紹介いただき、ありがとうございました。前者が「からごころ」、後者が「やまとごころ」に基づく法だと言えるかなと、思いながら読みました。日本人のルーツとされる縄文時代も、海洋民族的な要素があり、父系よりも母系が重視されていた社会であり、奇しくも、それが今日の世界的潮流である「男女平等」と一致したわけですね(私的には男性も女性もフェアーな扱いを受けるという意味で、「男女公平」の言葉も好きですが)。いずれにせよ、日本人の立ち返るべき原点、「常識=良識」が、男系派が主張する「男尊女卑」でないことだけは、間違いないと思います。

    ナクラ

    2021年6月24日

    山本七平さんは、好きな書き手の一人でしたが、「日本的革命の哲学」は未読です。
    山本七平さんは、「日本人とは?」を考え続けていたので、今回の紹介は、理解しやすく納得できました。
    日本人の常識とは言われる通りなものと思います。

    ダダ

    2021年6月24日

    継受法と固有法、勉強になりました。
    ありがとうございました!
    日本民族はそのスピリットで双系社会を獲得したわけですよね。
    その伝統を守って行きたいです。

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