マージナル・マン(境界に立つ人)としての天皇(下)

Post's thumbnail

※マージナル・マン(境界に立つ人)としての天皇(上)はこちらからご覧ください

 産経新聞に「【正論】『半神半人』の仮構でなる天皇制度」という西部邁氏の記事
(2004年7月20日 https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/01291/contents/207.htm )がありました。

 その第1節のタイトルが「女系女子にも皇位認めよ」です。
まず男系新聞とも呼ぶべき産経新聞にコレを載せた西部氏の迫力に驚きます。

 皇室論議における第一の論点として西部氏は「女系」にも「女子」にも皇位継承できるように
(皇室典範第二条の)「継承の順位」を変更したほうが良いと言います。

 その最大の理由として、国家を統合する象徴機能は皇室において
「血」統よりも「家」系を重視する方向で維持されてきたことを挙げます。
これは男系の血より女子を内包する家の方が大事だという意味に解釈できます。

 また国民の時代意識は国家を象徴する「皇室」の連続によって示され、
その連続性を表すために皇室は日本史上で最も長く持続してきた神道系の儀式で国家を宗教的次元へ接続し、それゆえ皇室は祭祀王族だと言います。
つまり、皇室は日本の政治を日本文化の根底をなす日本人の宗教感覚へ橋渡しするためのマージナル(境界的)な「機関」だと言うわけです。

 上記を踏まえれば第二の論点「皇太子ご夫妻の人格問題」も違った見え方になると西部氏は言います。
日本国民の歴史意識における「聖と俗」の境界線上に在すと仮構される皇室は、俗の側から見れば皇室関係者の人格を論じることは可能ですが、
聖の側から見れば彼らには神格が宛がわれているはずで、従って「半神半人」が天皇制という文化制度の本質だと言います。
半神としての虚構ゆえに皇室関係者は俗世の規範(憲法・法律)によって人権の多くを剥奪され、
そうした残酷を為す日本国民は、それゆえ皇族方の半人としての側面についてはプライヴァシーを最高度に保証すべきだと言うわけです。
これは自称宮内庁関係者や週刊誌記者どもに釘を刺した形です。

 第三の論点は「皇太子妃が『皇室外交の拡充』を望んでおられる(らしい)こと」です。
皇室は国内的には国民統合の象徴という意味で求心的な存在ですが、
国際的には国境という境界線上で外交における文化的な元首として遠心的に振る舞うと西部氏は言います。
その振る舞い方についても「皇室の自主性は認めない」という残酷を為す民衆に対し、
国内的にデモス(民衆)がオクロス(衆愚)になるにつれ、
対外的にインターナショナリズム(国際主義)がグローバリズム(世界主義)に変質するにつれ、
国柄とその象徴たる皇室の家柄が溶解するのは必然だと嘆いておられ、
ここでも一部の世論に苦言を呈しつつ皇族方を守っていました。

 以上、(上)(下)を通読すれば、神と人とのマージナル・マン(境界人)としての皇族方にあっては

男女の境界など問題にするまでもないという結論になりはしないでしょうか?

 本物の保守思想家が去ってから早5年が経ちました(合掌)…。  
文責:京都のS

5 件のコメント

    ダダ

    2023年1月26日

    京都のSさん
    過去投稿は覚えていたので、Sさん経由以外では言説を知らない、とするべきでした〜。。
    プレイバックありがとうございました。

    京都のS(サタンのSじゃねーし)

    2023年1月26日

     西部師匠に関するブログなら「師匠の思想で以て高弟2名を弾劾ス」( https://aiko-sama.com/archives/18469 )や「男系派ってバカジャナカロカ?」( https://aiko-sama.com/archives/20626 )もどうぞ(笑)。

    京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)

    2023年1月26日

     ダダ様、ありがとうございます。さすが西部師匠ですね。弟子デシ詐欺師たちとは一線も二線も画しています。○○天皇から数えて▲世孫の××氏ごときが聖域で育ってこられた内廷皇族ご一家に遠く及ばないことは常識です。常識を放棄する保守など聞いたことがありません(笑)。

    ダダ

    2023年1月25日

    西部氏の言説は全く知らないのですが(スミマセン!)、
    国家と皇室は表裏一体。象徴は完結しない。血よりも家。祭祀王族(半神半人)等々、とても勉強になりました。

    藤井聡と施光恒が西部氏の弟子筋とは信じられません!

    京都のS

    2023年1月25日

     掲載、ありがとうございました。

     西部師匠の弟子を名乗る男系ホシュ派に問います。アナタ方は無念の自死を遂げられた師匠に背を向け続けて平気なのですか?

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。