平等と格差の間(結)~そして持続可能な皇統へ

Post's thumbnail

(転)のブログはこちらから

 脱線していましたが、皇室の話に回帰します。井上達夫氏と小林先生との共著『ザ・議論』の論点「天皇制」において井上氏は、まず民主主義が多数者の専制に陥りやすいことを踏まえ、少数者の人権を守るリベラリズムの観点から、故西部邁氏の「衆愚政治批判」を肯定します。次に議論が天皇制に及ぶと、むしろ民主主義と天皇制は相性が良いから反対だと言います。天皇制のような伝統もリベラルな機能(少数者・弱者の人権擁護)を持ち得ると考えていた井上氏ですが、昭和天皇の御不例時に自粛ムードの同調圧力が高まり、天皇への求心力が大衆社会の暴走を促進したと見たわけです。これが井上氏の天皇制廃止論の論拠1です(※論拠2は本稿の(起)で論じたような皇族方の人権蹂躙)。

 しかし論拠1には錯綜があると感じます。確かに当時の自粛ムードは昭和天皇の体調悪化が原因ですが、「キッカケは何でも良いから纏まりたい」という世間のムードに「御不例をキッカケとした自粛」が利用された面は無いでしょうか?そして、これは戦前日本のマスコミや世間の好戦的世論に煽られた軍部が天皇の権威を動員したことに通底していないでしょうか?さらに現代日本の世間の「コロナコワイ」世論や「ギブミーワクチン」世論に煽られた政府が、専門家に向けられる世間の権威主義を動員したことと相似形ではないでしょうか?

 つまり民主主義の暴走については、天皇や天皇制の存在よりも日本の民主主義が世間主義でしかないことの方が問題だと言わねば「フェアじゃない」と考えます。ゆえに「天皇を戴く資格」としては「①尊皇心の保持」以外に「②世間主義の克服」も重要だと思われます。つまり論拠1に対しては資格②、論拠2に対しては資格①です。「②世間主義の克服」のためには、ある象徴的な岩盤世間の破壊が最も効果的だと思われ、その対象はカルト教団と一体化した男系派世間が妥当です。

 つまり「愛子様を皇太子に」は、資格①②を備え、論拠1・2を潰すための最重要な階梯だと言えます。その上で「天皇として大切な務めをなし得たことは幸せなことでした」と心から思っていただくことこそが公正で持続可能な皇統への道だと私は考えます。

(了) 
文責:京都のS

(参考文献)
・『水運史から世界の水へ』(徳仁親王)
・『ザ・議論』(井上達夫×小林よしのり)
・「環境保護運動はどこが間違っているのか?」(槌田敦)
・「ルポ・食が壊れる」(堤未果)
・「森の力」(宮脇昭)

14 件のコメント

    京都のS

    2023年6月8日

     まだ本ブログにコメントする人が居たとは(笑)。れいにゃん様が『テムズとともに』を本日購入と…「まだだったの?」(博多華丸大吉の出てる生命保険のCM風に)って感想です(笑)。でも、紙の本が手に入って良かったですね。
     私は映画「怪物」(監督:是枝裕和、脚本:坂本裕二)を観て感動したので、それで1本ブログを書いて送りました。ふぇい様によると明日(9日)以降に載るみたいです。「怪物」がカンヌ映画祭の脚本賞を取ったことは坂本裕二フリークの私としてはヒジョーに嬉しい出来事でした。

    れいにゃん

    2023年6月8日

    京都のS様、先日、愛子天皇論の予約に本屋に行ったら『テムズとともに』が残り一冊で平積みされていました。そろそろ本屋を諦めてAmazon予約しようかな?と思っていたので歓喜!今から読みます。

    京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)

    2023年6月5日

     文中の「キッカケは何でも良いから纏まりたい」について補足します。当時はバブル期で価値相対主義も蔓延していました。みんなバラバラでもテキトーに生きられる時代だったので、何か纏まれる切っ掛けが欲しいなぁ…という雰囲気も醸成されていたと推測できます。例えばスポーツの世界大会なんかが手っ取り早いですね。そういう空気の時に「昭和天皇の御不例」というニュースがあり、それが利用されたと考えるわけです。その現象に全体主義の匂いを嗅ぎつけることも出来ましょうが、やはり「世間主義」という原因こそ問題にすべきだと私は考えます。私が再三ここで訴えてきた「世間ファシズム」のことです。

    京都のS

    2023年6月5日

     ふぇい様、素晴らしい対応、ありがとうございました。

    fei

    2023年6月5日

    京都のSさま
    参考文献修正しました。

    京都のS

    2023年6月5日

     れいにゃん様、『テムズとともに』は読まれましたか?『水運史と世界の水へ』は『テムズ~』より学術的ですが、これも読み物として楽しめますよ?

    京都のS

    2023年6月5日

     殉教様、ありがとうございます。皇族方のマスク着用の件ですが、これは尾身茂を御進講の講師に選んでしまうような宮内官僚の見識ゆえなのでしょうかねぇ…。論拠3ですか。人材確保などと言えば不敬に当たりますが、考えておくべきかもしれません。相応しいかどうかは、まず帝王学を施してみて、それに対する感受性で測るしかないのかもしれません。
     その後段については、以前「天気の子」を題材に私が「皇族解放論をどうする?」と設問し、自分で回答してみました。「『囚われた皇族方を開放すべき』論と我々はどう向き合えばよいか?」( https://aiko-sama.com/archives/8942 )を参照してください。

    京都のS

    2023年6月5日

     れいにゃん様、世間主義克服のための「外圧de突破」はグローバリズムの弊害で懲りたはずなんですがねぇ。私がリベラル氏(真正か左翼の偽装かに拘わらず)を信用しきれない理由は、日本人は外発的にしか変革できないという言い分なのですよ。だからこそ象徴的岩盤世間を崩しましょう。そして「愛子さまを皇太子に!」

    殉教@中立派

    2023年6月4日

     前回は「CO2が多い→だから温暖化する」の原因&結果を再考し、今回は井上達夫氏の「天皇がいる→だから大衆社会が暴走する」で、同様の試みをしています。あのコロナ騒動は、確かに天皇とは関係なく起きましたね(皇族方が未だにマスク着用だったり、陛下のお言葉でオリンピック無観客になったりしましたが、あくまで騒動の僅かな一面にすぎません)。
     世間主義は、少数派(弱者)の権利を抑圧するので、リベラリズム的にはNO。そして上皇陛下は、少数派と握手することで「象徴天皇制」を模索しました。マトモなリベラリズム、保守、天皇の3者の行動は、矛盾せずに一致しているといえます。

     さて、あえて井上氏の立場から論拠3(?)を言うなら、ザ・議論のP44、P200ですね。「反転可能性テストの結果、生身の人間に『無私』を強要できない。それが出来る人材を、必ず得られるかも分からない」・・・つまり、天皇は反転可能性テストの「正義構想」と合致しない上、(高邁な精神を持つ)人材確保にギャンブル性があるので、安定して続く保証はない(だから天皇制廃止だ)というロジックです。

     ただこれは「自由を制限され、無私を強要される天皇が可哀そうだ。だから外に出してやろう」という、オールド左翼の屁理屈ともつながります。れいにゃんさん&L.Kさんが指摘する通り「本人を慮るふりをして、外から勝手に(皇族方の意志を)決めつけている」「陛下や皇族方の中には『前向きな気持ち』も確かにあるので、そこも拝察しなくては駄目」という事。
     人材のギャンブル性については・・・まあ、武烈天皇やヒゲの殿下(男系派。ケケ田に指令を出して、男系言説の広告塔にした)のような人材では、流石に厳しいので、何とも言えませんが。リヒテンシュタインは人材重視ですが、それでは「直系血統・聖域性・君臣の別」に引っ掛かりそうです。とはいえ論拠1・2を崩すだけでも大きいので、グダグダ悩まずに行動あるのみですね。

    れいにゃん

    2023年6月4日

    世間主義の克服は、困難な道に見えます。先のゴー宣道場で宇野常寛氏が言ったように、外圧で突破するのが早いのかもしれない。確かに今までも、政策ではそうだった。でも、事は政策ではなく、国の根幹・有り様に関わることです。自分が心地よく過ごせる為に権威を利用して世間を守る、そんな下らない岩盤に穴を開ければ、自ずと「愛子天皇」誕生に導かれると信じています。

    京都のS

    2023年6月4日

     (参考文献)に挙げたものの書名に間違いがありました。正しくは以下です。

    ・『水運史から世界の水へ』(徳仁親王)
    ・『ザ・議論』(井上達夫×小林よしのり)
    ・『環境保護運動はどこが間違っているのか?』(槌田敦)
    ・『ルポ・食が壊れる』(堤未果)
    ・『森の力』(宮脇昭)

    京都のS

    2023年6月4日

     本稿が井上達夫氏の天皇制廃止論に対する私からの回答です。以上を読んでも「フェアネスじゃないね」と仰るなら、今!自分が生きている意味を全く見出せていない多くの一般人が居る中で、辛いことも多いけど自分が生きる意味を精一杯に感じながら生きておられる皇族方のガチャ結果は、プラスとマイナスがトレードオフじゃないですか?と逆に問いたいです。そして、現状ではマイナス側に傾き過ぎている感があるから、それをプラマイゼロに持っていこうとする動きが「愛子さまを皇太子に」なのですよ!とも力説したいです。
     ふぇい様、ありがとうございました。「世間主義の克服」という難問は、日本人論シリーズを書いてきた私(S)が最も心を砕いてきたことです。ようやく「象徴的な岩盤世間の破壊」という回答に辿り着きました。今まで戦後日本人は、弊害の多い世間を外圧によって破壊することしか考えてこなかったわけですが、やっと我々は内発的な行動を起こして弱点克服に向かおうとしているのではないか?と感じます。その号砲は当然「愛子さまを皇太子に!」です。

    ふぇい

    2023年6月4日

    京都のSさま

    投稿ありがとうございました。

    「世間主義」によってこのコロナ馬鹿騒ぎが起きてしまった日本
    岩盤をこわすのは、
    愛子さまを皇太子に
    ここですね!
    こちら成し遂げるために、
    これからもよろしくお願いします!

    京都のS

    2023年6月4日

     (結)まで読んでいただき、ありがとうございました。国民が「資格①②を備え、論拠1・2を潰す」ことが出来たなら、皇族方の「親ガチャ敗者」感も薄まると思うのです。ゆえにこそ、保守側とリベラル側の2方向から公論SP「愛子さまを皇太子に」は重要だと考えるわけです。

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。