『ゴーマニズム宣言2nd season・第2巻』所収の「第32宣言・マトリックスを作った」で掲げられた図を覚えておられるでしょうか？本稿を書くに当たって筆者は、この「思想マトリックス」を描画ソフトで再現してみました（図1）。なお、筆者が一部に手を加えたため、オリジナルが気になった方は前掲書を購読または再読してください。
図1はX軸が「グローバリズム←→インター・ナショナリズム」、Y軸が「人権国家主義←→人権普遍主義」で、第1象限（①右上）：保守、第2象限（②右下）：左翼、第3象限（③左上）：自由主義サヨク、第4象限（④左下）：平等主義サヨクです。つまり図1においては、人権は神から授けられるのではなく国家が保障すると考え、かつ国民主義をベースとした国際主義の立場に立つ者でなければ保守と名乗れないわけです。しかし、各象限の説明では「①：伝統・慣習を守る漸進主義」VS「③：因習固執と近代主義」の部分に少し錯綜があり、また肝腎の皇位継承問題への態度もカバーされていません。そこで筆者は図2を作成しました。
図2ではX軸が「急進主義←→漸進主義」、Y軸が「伝統更新主義←→因習固執主義」で、①：真正保守、②懐古主義ホシュ、③革命志向サヨク、④懐古主義サヨクです。つまり図2においては、理想VS現実といった対立する価値の間で平衡を取りつつ、因習を排除して伝統を更新していく者でなければ保守とは看做さないわけです。図2は特に②「明治近代への懐古趣味」と④「戦後超近代の全肯定」がポイントです。明治期に成立した皇室典範（皇位継承制度は現行典範と同じ）や民法、選挙権に代表される男尊女卑的な体制に憧れるのが②懐古主義ホシュで、高度成長期やバブル期の経済的繁栄を裏打ちした米定日本国憲法（前文＆9条）を保守したいのが④懐古主義サヨクという意味です。②は安定的な皇位継承よりも男系主義の方が大事な人々で、④は高度成長期の核家族（男が外で働き女が家を守る）を基準にするから「何となくダンケー」な人々です。こうして、②と④が③の天皇制廃止論者を側面支援する形が続いてきました。にも拘らず国民の8割が愛子様を推している事実に常識の強かさが伺えます。
ちなみに、空気に流されやすい日本人の精神構造を完全に表すには「世間主義←→個人主義」という軸も必要ですから最早マトリックスごときでは表現しきれません。
（裏に続く）
文責：京都のS
4 件のコメント
呪術高専京都校のS
2023年9月5日
れいにゃん様、ありがとうございます。明治・大正が令和日本人に高評価なのって「鬼滅の刃」が大正期の話だってことも影響してたりして(笑)。おそらく昭和の戦前・戦中を悪く言いたいから明治・大正を持ち上げるのでしょう。実は明治の対外戦争は勝ったから高評価なだけで、大正モダンの方も一次大戦特需で儲けたカネによって享受できただけって気もするのです。「鬼滅の刃～浅草編」のモダンな雰囲気を空々しく思ってしまうのは、こういう時代背景を知っているせいでしょうねぇ…。だから、やっぱり私は「呪術廻戦」の世界観の方が好きですね(笑)。こっちは呪術界の男尊女卑的な因習ともムラ社会の暗部から生まれた呪霊とも戦いますからね。
れいにゃん
2023年9月4日
改めて確認すると、めまいがするほど、真正保守が居ない。政党は左翼しかない。( ；∀；)最近、イラストレーターのマツオヒロミ氏の書籍が売れているらしく、明治近代・大正モダンへの懐古ブームが又来ているようです。文化史では割と明るい時代という認識もあるのに、こと皇統問題を見ると、令和の頑迷固陋ぶりに驚きますね。明治近代への懐古趣味が、真実への探求心より勝ってしまうなら、言論人なんかやめてしまえ！と思います。(クライテリオンの文字をみて、ムカムカしてしまいました)
伝統更新主義←→因習固執主義この対比分かり易いです。使わせていただきます。
京都のS
2023年9月4日
（裏）…（ https://aiko-sama.com/archives/29766 ）。
京都のS
2023年9月4日
図2について。国民民主党の位置付けを作成時は今より保守寄りにしていましたが、玉木氏が再選されて男系固執の度合いを強めたことを以て公明党よりもサヨク側に旋回させました。また、三島由紀夫の位置付けでは、彼は「保守」と言うよりも「右の革命家」だと感じたので、井上達夫氏に近い場所になりました。
さて、（裏）ではジャニーズ問題もブッ込みました。興味本位でも見てやってください。