「正直なウソつき」の、『嘘だらけ』古代史語録④

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【第2章①】

●日本書紀に欠史八代のエピソードを残したのは、男系継承の正統性を訴える為だ (p81)
~倉山満『嘘だらけの日本古代史』第2章より~

〇ウソこけーーー!!!

・・・と、思わず絶叫したくなるぐらいの大珍説だけど、よくよく考えたら本書のタイトルが『嘘だらけの日本古代史』だから、一応主旨には沿ってるのかな。。。

とりあえずアナタがつけてる、眼科とかで検査に使ってるやつみたいなブ厚い色眼鏡を外して、よ~く考えてくださいね。

天武天皇が『日本書記』編纂を命じてから720年に完成するまで、一体何名の女帝が即位されたと思ってんの? ちなみに720年といえば、美貌の女帝・元正天皇の治世ですよ。

なかでも第41代持統天皇は、のちの文武天皇即位宣命にもあるように、「天にます神」の坐し(よさし)を受けて即位され、「現御神(あきつみかみ)」として天下を統治した事が強調されています(義江p139、p151)。

尚且(なおか)つ天孫降臨神話が成立したのもこの頃であり、持統天皇が即位の正統性を「天照大神との系統的連続性」に求めようとしていた事は、貴方が金科玉条に掲げる『日本書紀』の記述を盲信したとしても、明白でしょう。

なにより、持統天皇の和風諡号(わふうしごう)は「高天原広野姫(たかまのはらひろのひめ)」なのですから。

持統天皇即位の経緯については、本サイトに私が投稿した過去ブログ「国民民主・大塚耕平氏に問う!「倭の五王」は、父系継承か!?(中の中編のオマケ)」の中でも、群臣推挙システムの歴史的変化に沿って詳述してます。

丁度、貴方のオトモダチをボロクソに批判したブログですから、読んどいた方がいいと思うよ。

天孫降臨神話成立の過渡期とも言える時代に歴史書を編纂した人々にとって、女性神・天照大神との繋がりよりも「男系継承」をアピールする方が大事だったってか?? 

んなわけあるか!!

後述するように、冊封体制以来、群臣達の間でほぼ常識となっていた「男帝へのこだわり」も、推古天皇のカリスマ性によってこの頃には既に払拭されています。神話を編纂した群臣達に、「男系継承=神武天皇以来の国の伝統なんだ!」みたいな価値観があったなどとは、認められません。

仮に100歩譲って、「万世一系 = 男系」みたいな編集方針が彼ら編纂者の胸中にあったとしても、それは『書記』があくまでシナ向けに自国の正当性をアピールする為の史書であり、男系社会であった唐王朝に認めてもらう為の「からごころ忖度」が働いた、という以上の意味は持たないよ。

文責 北海道 突撃一番

参考文献

・義江明子『女帝の古代王権史』ちくま新書2021年3月10日

「第五章 持統-律令国家の君主へ」

4 件のコメント

    SSKA

    2024年1月11日

    儒教文化圏(最大国は唐)に対するPRでもあるので、女性を重んじる我が国独自の価値観(天照神話、実在する複数の女性天皇)と伝統的な血統で国が存続している正統性とを両論併記していると考えられる為、倉山の様に女を扱った記述は無視して良い等と身勝手に言うのはただの男尊女卑であり、国を上げて事業を行った為政者や編纂者に対する冒涜に当たります。
    国内の継承理由に触れるならば、壬申の乱の勝者とその子孫が圧倒的な権威を持つ事実がこの時代は特に重要で儒教的価値観に即して行われた外交的配慮とは別の話です。
    「欠史」の採用については記録として曖昧なものを史実の一部として取り入れた事で儒の価値観の土俵に上がり、それに染まり始めた危うさを後世の視点から感じます。
    他国へのマウントの為に国の年数を水増しや粉飾しているのに近いので、後の歴史検証により否定されたものは伝承に留め史実として扱えないですし、数字を過剰視する価値観も現代の企業におけるデータ改竄や与党の違法な手段を用いた政治献金に通じる為に注意すべきであり、公明正大な姿勢を保つ皇室がこの考えに与さないのも改めて良く分かります。
    歴史に対する解釈や思考法が過去に限らず、現在の行動をも歪み誤らせる危険性を保守界隈は先の敗戦から学ばず、余りにも軽視しがちです。

    突撃一番

    2024年1月11日

    みなさん、コメントありがとうございます。

    シナ向け忖度を日本のオリジナルと勘違いしちゃう人は、「小林よしのりライジング」の笹先生の文章を読んだ方がいいですね。

    縄文人がいかに女性を重んじていたのかが、よくわかります。
    卑弥呼で有名な弥生時代においても、日本列島の豪族の約3~5割を、女性首長が占めていた事もわかってますから。

    あと、推古天皇 & 持統天皇が発揮された、類いまれなるリーダーシップについては、この後のブログで詳述してますんで、ヨロシクです!

    基礎医学研究者

    2024年1月10日

    (編集者からの割り込みコメント)今回も、おもしろく読ませていただきました。倉山のそれは、”為にする議論”の典型です。一方、突撃さんの最後の部分、「女性神・天照大神との繋がりよりも「男系継承」をアピールする方が大事だったってか??(そんなわけあるか!)」はつい強調してしまいましたが、最後の解釈、Chinaに対して(冊封体制を抜けるために)自国の正当性をアピールするというのは、当時の国際情勢を考えると、妥当な解釈だと自分も思いましたね(目立とうと思って、妙なことをいうんじゃね~倉山(# ゚Д゚)ですね)。

    サトル

    2024年1月10日

    今日もおもしろかったです。
    本当にお疲れさまです。

    「んなわけあるか!」まさにその一言。
    「嘘だらけ……」に副題として、
    「論理破綻の倉山妄想日記」とでもつけて欲しい。

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