【比較記事】「安定的な皇位継承の会議」における新聞報道②(読売と産経、および日経新聞)

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続いては、残りの3社です。

まずは、日経新聞です。

皇族数確保へ与野党協議
衆院議長、会期中の集約に意欲 規正法対立で停滞リスク
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80770020X10C24A5EA3000/
*電子版で、一部を読むことが、可能性です。

朝刊の4面(総合3)に掲載されました。この新聞の場合、内容的にはニュートラルですが、皇位継承問題のような無難でない問題に、きちんと紙面のそれなりのスペースを使って報じていること自体が結構ポイントで、皇位継承問題のメディアの関心のメルクマールかもしれません。

続いて、読売新聞と産経新聞です。
この2紙は、保守系の新聞なので、「つばさの党幹部3人逮捕(読売)」や「離婚後の共同親権導入(産経)」などの見出しが躍るなかで、1面に「安定的な皇位継承の会議」を持ってきたのは、非常に”らしい”と思いました。ただ、この2紙では、紙面での取り扱い方が、かなり異なります。

まずは、読売新聞です。
今回は、1面および3面を大きく使って、この話題を取り上げています。

読売新聞は、基本電子版で記事を読むことができないので、当サイトでは要約を載せていきます。

皇位継承 初の与野党協議
この1面の記事は、ちょっと与党寄りですが、昨日の会議の経過を記事にしたもの。額賀議長の発言部分(最後の一文)を引用します。

額賀衆院議長は会合後、記者会見で「可能な限り、今国会中の意見のとりまとめを目標に力を尽くしていきたい」と述べた。会合は今後、週1回開催する。

[スキャナー]皇族数確保 見解に差 与野党協議 皇位継承あり方 集約難航も
私見では、今回は元々の新聞の性格上、やや自民党よりの紙面作りな印象はありますが、産経新聞との最大の違いは、こちらは、あまりうかつなことは書きません。
この記事の下記のセンテンスを引用します。

◆自民踏み込む
一方、先細りが続く皇族の数を確保し、公務の担い手を増やしたとしても、天皇陛下より若い世代の皇族で皇位継承資格を持つ男子は秋篠宮さまの長男悠仁さま(17)お一人だけという事実は変わらない。「皇族数を確保しただけでは安定継承につながらない」との声も出ており、皇位継承資格者を増やすための議論も注目される。
 自民は協議で、〈2〉(②案のこと)の養子案を実現した上で、皇族復帰した旧宮家の男性に子どもが生まれた場合、その子どもに皇位継承資格を認める案に踏み込んだ。皇室で生まれ育った男系男子であれば現行制度上も皇位継承資格を認めうるとの考えを示したものだ。一方、立民も皇位継承について正面から議論すべきだとしつつ、具体策は示さなかった。協議に出席した野田佳彦・元首相は「色んな論点、課題がある」と記者団に述べ、男系男子以外による皇位継承の可能性も含めて議論すべきだとの考えを示した。

ここは、意見の分かれるところで、私見では、いうほど踏み込んでいないか、踏み込み方が違っているのでは?という気が致しました。ただ、読売新聞は、自民党に言いっぱなしにさせることはせず、しっかりと直後に野田元首相の対立意見を載せているところは、安心して読めます。そして、センテンスの最後の部分は、あの社説をだした読売新聞らしいと、思います。

 与野党の協議が皇位継承資格に関する議論に進めば、さらに難航する可能性がある。政府の有識者会議が「機が熟していない」として先送りした悠仁さま以降の皇位継承のあり方にどう向き合うかも立法府に課せられた課題となる。

それから、独自性がありましたのは、「女性皇族の人生に影響」…宮内庁注視という記事を載せたことです。

 「宮内庁は皇位継承の安定化に向けた与野党協議の行方を注視している。」という形ではじまり、西村長官の定例記者会見の発言を引用したあと、下記のような談話を載せております。これは、皇室サイドの重要な視点と思います。

・与野党協議では、結婚した女性皇族が皇室に残る案を巡り、夫と子どもの身分について意見に隔たりがある。
宮内庁関係者は「家族内に分断が生まれる可能性もあり、女性皇族方の人生に大きな影響を与える問題だ。慎重かつ速やかに議論してほしい」と語る。
・宮内庁幹部は、「当事者となる皇族方や宮家の意思などが十分に尊重されるような制度になれば」と話した。

そして、最後に産経新聞です。

皇族確保へ与野党協議 皇族数確保策2案を中心に議論の見通し 自民・立民には溝
https://www.sankei.com/article/20240517-OABRMEGXDRJE7GQWDZI3YHYNAY/
この新聞については、1面はまだ読めますが、正直、次の3面はかなり他紙とは異なります。

与野党は「伝統重視」で足並み 国民の理解がカギ
https://www.sankei.com/article/20240518-K33I2LKRXNKILBRLQ2TEN3Y2IA/

これは、内藤慎二記者署名による記事です。

極めて静謐な環境で第1回の総会が開かれた」。額賀福志郎衆院議長は与野党協議後の記者会見で、日頃の熱を帯びた政争とは距離を置いた与野党間の合意形成に期待感を示した。

この書き方がすでに気になりますが、最初はまだ読めます。しかし、「女系踏み込まず」というセンテンスから、おかしなことになっていきます。

・立民関係者は「『歴史と伝統』とは男系継承という意味だ(これは、論点整理案に表記された内容を受けての話)」と解説。奈良時代に非皇族の僧が天皇になろうとしたとされる道鏡事件などに触れ、「明確な決まりが皇位の無用な争いを避けてきた。与党だろうが野党だろうが尊重しなければならない」とも強調した。
・そもそもなぜ男系継承だったのか。皇学館大の新田均特別教授は「天皇が祈っても治まらなかった疫病が、大物主神の男系子孫が祈ったところ治まったという故事がある」と指摘し、「古代の感覚では天皇の祖先祭祀も父系以外は務まらないと考えられてきた」との見方を示した。

さらに次のセンテンス「過去にも断絶危機」より

・皇統断絶の危機解消に尽力した先人は少なくない。古代豪族の大伴金村らは現在の福井県にいた応神天皇の5世孫を第26代継体天皇として招いた。江戸時代中期の儒学者、新井白石の提言で創設された閑院宮家からは現在の皇室の方々と関係が深い第119代光格天皇が即位しており、備えが奏功したといえる。

正直、これ新聞の紙面における記述か?というのが率直な印象で、自分的には脳破壊が起きそうなのですが、ここで1つおもしろいことを記述しています。

男女を問わず長子継承を掲げる外国の王室の影響なのか、最近は男系継承への理解が薄まってきているとの指摘もあり、伝統を守るには国民への情報発信が重要になる。

そもそも、男系継承への理解が国民に合意されていたのかは極めて怪しいところで、その根拠を示してほしいところですが、ある意味、記者の正直な気分を表明しているように思いました。しかし、結びがこうなってしまいますので、この記事は一体どんな読者層を想定しているのか?は、極めて疑問です。

自民幹部は天皇が古来、国の平和と民の安心を祈願してきたとして、「外国の王とは性格が異なる。古代では卑弥呼があがめられており、日本は女性差別の国だから男系継承になったという見方も間違っている」と強調。その上で「令和の国会議員には後世から『伝統を守ってくれた』と感謝されるような議論を期待したい」と述べた。

あと、これに加えて「[論点]歴史に学び、今国会で決着を(永原慎吾記者まとめ)」という八木秀次の談話が掲載されていますが、これの紹介はいらないでしょう。

なお、もう1つ皇室担当の緒方優子記者による「公務の担い手減少 宮内庁も危機感鮮明」という記事は、皇族の方々のご公務を紙面で丁寧に紹介し、天皇陛下は制度への言及に控えながらも「(皇族数の減少は)皇室との将来とも関係する」と記述されるなど、同じ紙面に掲載するのはもったいない、まともな記事もあることを付記します(m_ _m)。

以上、ご参考までに

ナビゲート:「愛子天皇への道」サイト編集長 基礎医学研究者

3 件のコメント

    基礎医学研究者

    2024年5月18日

    >mantokunさん
    こちらも、コメントありがとうございました。産経は「愛子さまトーーク」でシマナガエのキソイとして、つい”機関紙まっしぐら”といってしまいましたが、今回の紙面みても、頭がクラクラしてきましたね。もう、個々の話は論破されてオワッテいるので、自分、”男系継承への理解”の情報発信とやらを、やってもらいたいですね。自分、「最近は男系継承への理解が薄まってきているとの指摘もあり」というのは、少なくとも産経の一部の記者はまじめに思っているのでしょうね(これは、貴重な証言でした、自分には。暗山やケケ田よりは、正直な感覚)。で、まあ、そんな理解はそもそも国民に共有されていないし、まじめにやったら、自民党の足を引っ張ること確実ですね。ついでに言っておくと、やはりあの共同通信社の世論調査の効果は、想像している以上に影響を与えていそうですね。

    >サトルさん
    いや~今回は、確かに、当サイトかなり力入っています。自分は新聞担当ですが、ほぼこの話題で埋め尽くされましたね(いや、やっとここまできたか!?という感じですね。苦難は予想されますケド)。しかし、産経新聞にはまいった~!これって、週刊誌とかじゃなくて、紙面に実際でているわけですからね~!これじゃあ、カ〇トだろ~と思いますが、相当なアセリがあるのでしょうね?ニュースとか見ていても、男系維持がまず重要みたいな解説している局はないし、養子縁組案とかもああやってテレビで解説されると、違和感感じる人、これから増えていくのではないですかね?たぶん、こういう動気が大切で、この動きこそ、暗山とかケケ田が、もっともいやな展開なのだろうな~!と、思った次第です。

    サトル

    2024年5月18日

    基礎医さん
    いつもありがとうございます

    「参考」どころか「圧巻」ですね、いつも以上に。
    (ダンケーは)徐々に追い詰められてきてる兆し……と紙面から感じますが(共通項として、「誰に向けて書いてるのか?」が顕著。)、だからこそ危険な状況…とも思います。
    注視……即応がますます強く必要だと、あらためて感じる次第です。

    mantokun

    2024年5月18日

    またまた各紙のまとめ、ありがとうございます。基礎医学研究者様の丁寧な見解と補足説明、とても助かります。

    しかし読む前から分かっていましたが、産経新聞は本当に酷いですね…。新田均の手前勝手な妄想とこじつけに長々と紙面を割いたりして、もはや機関紙ですらなく個人の日記帳か?と思いました。
    「古代の感覚では天皇の祖先祭祀も父系以外は務まらないと考えられてきた」って、それは完全に儒教の思想でしょう。女性天皇は実際に存在していたのに、だったらその間の祖先祭祀はどうなっていたんですかね?

    しかも男系男子継承の維持に動いた先人は少なくないと言いつつ、持ち出すのは神話時代レベルの5世紀の継体天皇と、そこからいきなり江戸時代後期の光格天皇って二例しかないじゃないですか。
    第一、記紀では継体天皇は大和入り以前も王号を持つ皇族として記述されているし、光格天皇は傍系だったとはいえ、後桃園天皇とは7親等の隔たりであり、前代と血筋がつながるまで遡るのは約70年。
    それに対して、今話題の旧宮家の国民男性は今上陛下とは20世600年以上も隔たりがあるんだから比較にもなりません。赤の他人です。

    故事というなら、奈良時代に道鏡の皇位継承に対して和気清麻呂が持ち帰った宇佐八幡神の神託は、「我が国は開闢以来、君臣の分定まれり。臣を以って君と為すこと未だあらざるなり。天津日嗣は必ず皇緒を立てよ。無道の人は宜しく早く掃い除くべし」であって、これこそまさに今自民党が目論んでいる旧宮家子孫の国民男性の養子案および「皇族復帰した旧宮家の男性に子どもが生まれた場合、その子どもに皇位継承資格を認める案」に当てはまります。

    それに「男系継承への理解が薄まっている」んじゃなくて、「男系男子継承に固執して、直系の皇女を差し置いて赤の他人の国民の男を皇族や天皇にすることは異常」だと思う国民の方が多いという当たり前の話でしょう。男系継承への理解を深める(?)「国民への情報発信」とやらを、さっさとやればいいんですよ。今よりさらに自民党が支持を失うだけでしょう。
    自民党はじめ与野党の男系固執の国会議員も産経新聞も新田均も、自らが「無道の人」になっている自覚がないんですね。

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