【まるで論破祭りのような、日々是皇室】国民民主・大塚耕平氏に問う!「倭の五王」は、父系継承か!?(下)

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  1. 【結 言】~大塚耕平氏への反論~
    なんだかんだで全6回シリーズになってしまった今回の文章、この突撃一番が結局何を言いたいかというと、以下のようなカンジです。
  •  4~5世紀にかけてのヤマト王権の盟主は、政治的実力者の中から「群臣による推挙」によって選ばれており、倭の五王とて、必ずしも血縁関係による継承とは限らない。
  •  父系主義を基盤とするシナ(南宋)から官職を与えられる事によって、冊封以前には半数近くを女性首長が占めていた倭国にも、シナ由来の「父系主義」が浸透していった。
  •  それにもかかわらず、飯豊青尊の事例にもみられるように、冊封以前の社会の基盤となっていた「双系的血統観」が、倭国から完全に消滅したわけではない。

以上、それぞれの倭王の「血縁による世襲継承」すら怪しくなってきたというのに、おまけに「父系主義」そのものがシナ輸入で、それも100%模倣しきれたわけでもないという事まで明らかになったのに、一体どうして「今まで一度の例外もなく男系血統(神武天皇のY染色体?)が維持されてきたからこそ、皇室は尊いのだ」などと言えるのでしょうか?

大塚氏をはじめとする男系固執派が、そのような主張を貫くのであれば、少なくとも今回、私が紹介したような「世襲否定説」は、何がなんでも潰しておかなければならない「天敵ロジック」の筈ですよね?(「王朝交代説」とまで呼んでいいかどうかは、まだ決めかねています。)

でなければ、男系派がいくら「民間男性の血が皇室に入ったら易姓革命だ!」と連呼したところで、こちらとしては

「でも、世襲断絶の『先例』なら、古墳時代に既にありますよね?」で、話はオワリですから。

父系どころか「一貫した世襲継承」そのものに疑義が提示されている以上、「倭の五王」全員の血液から、間違いなく「神武天皇のY染色体が検出された!」という事実を、推論ではなくちゃんと確定したデータを準備した上で、真っ向から反証する責任が、男系派にはあるのではないでしょうか?

今から天皇陵の「墓暴き」でもやってみてはいかがですかね?

大塚さん??

【結言の蛇足】~倉山満氏への苦言~

ダメ押しで釘を刺しておきますが、「『世襲』を否定してしまったら、天照大神以来の血統も絶えているという事になってしまうじゃないか! 女系天皇賛成派は、自ら墓穴を掘っている!」

・・・などと反論しても無駄ですよ。大塚さんのオトモダチの、「ストロング皇室史学者」さん(笑)。

皇統を語るのに、「神武天皇以来の男系血統」なる生物学的要素を持ち込んだのは、他ならぬ男系カルトの側なのですから。

こちらとしてはあくまで、「皇室の弥栄を危うくしてまで、男系血統なるものにこだわる根拠が、そもそも存在しない!」と主張しているだけですからね。

仮に古墳時代に世襲がまだ確立していなかったとしても、だからといって21世紀の日本に君臨していただいている天皇・皇族を、「存続させなくていい」という理由にはならない筈ですから。

天照大神に関しては、高森師範が再三に渡って主張されているように、またついでに言うと、私のこれまでの投稿ブログでもクドクドとボヤいてきた通り、血統云々よりも

「有史以来、『皇祖神』として人々から篤い信仰を受けてきた」

という事実の方が重要なのであって、そもそも生物学は関係がないのです。

最後に、
愛子様サイトにお集まりのみなさん、ここまでお付き合いいただいて、誠にありがとうございました!
血統主義」に拘泥するという事は、こんな落とし穴もあるのだという事を、酒の肴にでも流し読みしていただけたら幸いです!!

文責 北海道 突撃一番

●参考文献
・義江明子『女帝の古代王権史』ちくま新書2021年3月10日
・白石太一郎『古墳とヤマト政権』文春新書平成11年4月20日
・宇治谷孟『全現代語訳 日本書紀』講談社学術文庫1988年6月10日
・『別冊宝島2140 古墳に秘められた古代史の謎』宝島社2014年3月24日
・倉山満「言論ストロングスタイル vol.185」 『週刊SPA!』2023年2月14日号 

4 件のコメント

    京都のS

    2023年4月1日

     突撃様、私も万世一系は(万葉一統すらも)ファンタジー(幻想)だと思いつつ、でも建前では信じた振りをして語っていたります。だからというわけじゃないですが、ダンケー派が「皇統は万世男系だ」などと言ってたりすると「旧宮家が伝えるという『皇室タイプのY』あるいは『伝統のY』に『間男のY』が混じり込んでいないことを証明してみろよ」と言って反論します(笑)。それは、皇室の直系にも「間男のY」が混じる可能性に怯えつつの反論です。ここで「群臣推挙説」の方を採用すれば、より大事なのは聖域で育ったことで受け継ぐ可能性の高まるエートスだと逆説的に言えます。

    突撃一番

    2023年3月31日

    改めまして、6回に渡る掲載と多くのコメント、ありがとうございました!
    がんばって文章書いてよかったです。
    基礎医学研究者さんにも、膨大な量の編集作業、本当にお手数おかけしました。

    もしかしたら普段、愛子様サイトをご覧になっている皆さんの中にも、『記紀』神話や、皇統譜に記された天皇の系譜に異議を唱える事に、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

    実際、高森明勅師範ですら、御自身の著書の中で、8代にわたる「オワケの臣」が、代々の君主に仕えてきた事を根拠としつつ、雄略天皇以前から皇統は繋がっていると述べておられます(『日本の10代天皇』幻冬舎新書)。
    しかしながら、第25代武烈天皇が子を残さないままで没したのち、大伴金村をはじめとする群臣たちの合議によってヲホドノミコ=継体天皇を迎えた事からも(まさに従来の「群臣推挙システム」に沿って選出されたのが、継体天皇。)群臣たちが代々仕えた王が、必ずしも「血縁による世襲」だとも言い切れないようです。

    また、律令制度の影響下で編纂された日本書紀に、本居宣長が「からごころ」と批判したような、シナ流の父系主義的傾斜がみられる事に加え、欠史八代の天皇の実在性がいまだに疑問視されている点を鑑みても、必ずしも『書紀』の系譜に関する記述が、100%史実を反映したものだと断定する事も出来ません。

    むしろ、「神話からの連続性」という天皇の世襲継承の最も重要な根源を、初めて確立したのが持統天皇の時代になってからだという点を鑑みても、「神武天皇以来の生物学的な血縁の連続性」にこだわる必要も無いのかもしれません。

    ついでに言うと、今回私が提示した「世襲断絶説」は実際、男系カルトにとっては甚だ都合が悪い説のようで、Twitter上で議論しても、ちゃんと血縁の連続性を説明できた男系カルトは、谷田川も含めて今のところ皆無です。
    割とマシな方の反論でも、「神話が公式の歴史書だから正しいんだ!」「『一貫して男系継承』が政府の公式見解だから…」みたいな、脳みそ丸投げ思考停止ロジックばっかりです。

    無論、私も義江氏の解釈を妄信するわけではありません。今のところかなり説得力があると思って支持していますが、今後の勉強次第で見解が変わる可能性だって、勿論あります。
    ただし、男系カルトはもう、「神武天皇以来、一貫して男系継承だ」などと、どっか一ヶ所でも信憑性が崩れたら、全てが崩壊するようなロジックをドグマにしてますから、それがいかに脆弱なものであるかは、浮き彫りになったかと思います。

    「世襲断絶説」は、ニューヨークの便所の落書きを消す上では、意外と使える説かも知れませんよ。

    基礎医学研究者

    2023年3月31日

    (編集者からの割り込みコメント)まずは、連載終了、ご苦労さまでございました。今回も勉強させていただきました。なるほど、この連載を通じてすごく思うことは、結局のところ「皇室」が受け継ぐものは何か?ということでございます。自分は祭祀王としての”エートス”であり、それは「皇室」という聖域の中で育まれまれるだと思いますが、これを感じとれるのか?それとも「オレさま」的な「男系継承」と言い張るのか?これこそが、心ある国民であるかどうかの運命の分かれ道と、改めて思った次第です。

    京都のS

    2023年3月31日

     突撃様、いやーお疲れさまでした。なかなかストロングな読み物でしたよ。某ストロング憲政(タンコブ谷田二の相方)なんかより余程(笑)。
     群雄豪族推挙説なら最も先鋭的な王朝交代説だと言えます。だから皇室制度は、血統よりも皇室という聖家族(聖域)の文化の方が重視されてきたと見る他ありません。
     そういえば西部師匠も、「『女系』にも『女子』にも皇位継承できるように皇室典範第二条を変更したほうが良い」という文脈の中で、「(天皇の象徴機能は)『血』統よりも『家』系を重視する方向で維持されてきた」と語っていました。
     また、『誡太子書』を座右に置くような「帝王学」を授けられた皇太子殿下や天皇陛下の行き方は、血統よりも聖域における文化的エートスの方が大事だということの証左だと思われます。秋篠宮様が「皇太弟」に就くことを渋られる理由は帝王学を受けたか否かでしょうし、その帝王学を受け継がれるのは直系の愛子様を置いて他におられません。某家の何某が入っても一朝一夕に身に付くものじゃありません。血統より人格、血統より家の文化、血統よりエートスですよね。
    ※上記の西部氏については「マージナル・マンとしての天皇(下)」( https://aiko-sama.com/archives/22465 )を参照してください。最後に番宣かよ(笑)。

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