平等と格差の間(承)~場所ガチャと環境問題

Post's thumbnail

(起)のブログはこちらから

 今上陛下が浩宮殿下時代から取り組んでこられたのは水問題ですが、殿下の「世界水フォーラム」での講演や学習院大学での講義を収載した『水運史から世界の水へ』という書物を読んだ方はおられるでしょうか。実は本稿の基本テキストの一つは本書です。

 (起)から続く「ガチャ論」ですが、「場所ガチャ」には国内の都市と地方の格差もあり、それは経済的格差だけでなく、例えば電力を大量消費して快適に暮らす都市部と原子力発電所を押し付けられた過疎地との格差もあります。自然災害は仕方ない面があると言えますが、原発事故は設置時点からリスクが判っていたため人災です。浩宮殿下の前掲書の第七章「水災害とその歴史」では、1586年に北陸から機内に掛けて発災した天正地震に伴う津波が丹後・若狭・越前に甚大な被害を与えたと記されていますが、現在ここには原発銀座(敦賀・美浜・大飯・高浜・もんじゅ…)があります。つまり大阪・京都・神戸の住民に快適な暮らしを提供するために福井周辺住民がリスクを引き受けている現状は公正とは言えません。皇族は「国政に関する権能を有しない」(憲法4条)ため、講演の中では事実(400年前の巨大地震と津波が襲った地域に原発銀座がある)を提示するに留められたと私は拝察します。

 前掲書の第1章「平和と繁栄、そして幸福のための水」では地球規模での水・熱・物質の交換が語られます。太陽光を浴びた海洋面や地表面では水の蒸発と共に気化熱が奪われ、水蒸気は上空で冷やされて雨や雪として地上に降り、また熱帯で暖められた海水が寒帯へ移動して大陸を暖めるのが海流だということです。ここから少し環境問題に深入りします。地球の熱収支は「IN」も「OUT」も概ね太陽熱です。排熱法は水蒸気による大気圏外への放熱で、化石燃料は排出されなかった過去の蓄熱(太陽エネルギーで育った動植物の死骸)です。化石燃料の使用によるCO2濃度上昇という物質収支が気になるなら、植物の育ちやすい気象条件の土地(温帯~亜熱帯の火山国:日本etc.)で大規模に植林すれば光合成でCO2を吸収してO2を排出してくれます。植林に関しては「今上陛下のライフワーク「水問題」についての一考察」も参照してください。  

(転)に続く。 

文責:京都のS

5 件のコメント

    京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)

    2023年6月3日

     殉教様、またしても有難うございます。「大きな被害を受けた住民」「プチ被害を受けた都民(商品が買えない、電車が止まるなど)」「被害を全く受けていない地域の住民」という三者間の温度差は、日本人の世間体至上主義とも強く関わっているように感じます。人は「お気の毒に」「お可哀そうに」と被災者や被害者に同情しながら、同時に「自分じゃなくて良かった」と思っていたりします。そして、そんな自分を「うっかり」客観視してしまった時に感じた疚しさが「お前も関心を持て!(俺と同じ疚しさを味わえ)」「被災者の為に自粛しろ!(俺は疚しさから自粛してんだ…)」という言動に至る気がします。
     この現象は「昭和天皇の御不例」の時も起こりました。この件は最終章(結)で触れます。ご期待ください。
     植林については「今上陛下のライフワーク「水問題」についての一考察」のリンクで飛んでください。潜在自然植生に基づく植林とは何かを詳しく解説しています。メガソーラー問題については本日11:30の(転)と「自然を愛する皇族方の御心を忖度すべき」( https://aiko-sama.com/archives/23972 )を見てください。林業とグローバリズムについても、堤未果氏の『ルポ・食が壊れる』をテキストとする同ブログで扱っています。

    殉教@中立派

    2023年6月2日

    福島県民の私は、原発の話題から逃げられません。大人しく釣られます。

     施設により利益を得る住民VS得ていない住民については、ザ・議論のP151(東京ゴミ戦争・真の対立軸とは何か?)に登場します。また自然災害も、例えば  3.11のときは「大きな被害を受けた住民」「プチ被害を受けた都民(商品が買えない、電車が止まるなど)」「被害を全く受けていない地域の住民」の間で、大きな温度差がありました。また、こうした温度差について心配する人が「お前も関心を持て!被災者の為に自粛しろ!」と、「自粛警察」化してしまうのは、コロナ前からの日本人の短所といえるでしょう。
     この自粛警察にせよ、利益を得ていない住民に負担を押し付けるにせよ、「エゴが公共を毀損する」事態は各国共通です。日本の皇室(公共の体現)は、こうしたエゴにどう向き合えばいいのでしょうか。今上陛下も「国民が自力で(欺瞞に)気づかなければ、意味が無い」と分かっているからこそ、事実の指摘に留められたと思います。
     (※)一番のガチャ敗者は飯舘村など「施設の利益を得なかったが、故郷を捨てて避難する羽目になった」人たちです。本当に理不尽すぎます。

     植林は確かに大事ですが・・・「植林されたスギ花粉による被害」「三浦瑠璃的な人たちが、山の木を伐採し、メガソーラーを作る」「そもそも、日本国土の多くは森林地帯なのに、林業が冷遇されている(堤未果『日本が売られる』より)」という課題も多いです。水問題は、「水問題」だけに集中しても(多くの問題とクロスしているので)解決が難しいです。ただ、それは逆に「アプローチできる方向性の多さ」も意味しています。普段は頓珍漢な事ばかり言うSDGs派の言葉も、部分的には賛同できます。

     (蛇足)陛下や皇族方は「環境問題」「男女平等」など、左翼団体が好きそうなテーマで、講演をする機会が多いようです。男系派(自称保守)は、左翼の逆張りをしたいので、そこに不快感を覚え「天皇より、俺の言う事が正しい!」と、八つ当たりをしているように見えます。

    京都のS(サタンのSじゃねーし)

    2023年6月2日

     藤澤様、いつも極めて※しにくいSの論考に、※を下さいまして有難うございます。皇族方が話されない以上は拝察するしかありません。それから次回(明日の11:30)は、小林先生が孔子を引用して「君子怪力乱神を語らず」と仰った環境問題にもガチコミットします。君子としての小林先生が語れないなら私めが匹夫として(笑)語ってみたわけです。さらに最終章(明後日の11:30)では再び『ザ・議論』の「VS井上達夫氏」に戻ってきます。つまり氏の「天皇制廃止論」とガチで格闘し、さらにオーラスでは公論SP「愛子様を皇太子に」の意義も歌い上げています。

    藤澤

    2023年6月2日

    こんにちは。
    電気工事をやる身なので、環境エネルギー問題は他人事ではありません。
    祈るだけじゃなく、こうした状況に目を向けてくださる姿からは真剣に国民を案じてくださる、誠実なお気持ちを感じます。

    京都のS

    2023年6月2日

     ふぇい様、掲載とリンクもありがとうございます。

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。