10/28の産経新聞朝刊の産経抄をめぐっては、“心ある国民”から多くの批判報告が寄せられました。続いて、10/31は産経の主張が多少トーンダウンされた記事が、そして今回(11/7)、朝刊の総合面に、少なくとも「産経抄」や「主張」とは異なる語り口の記事が掲載されました。
この記事のタイトルは、「皇位安定継承 男系で濃淡」で、ここにきてようやく、「皇位の安定継承」というキーワードがでてきました。しかし、油断ならないのは、その後に続く「男系で濃淡」です。その記事に対して、さらに意見・コメントを送られたという報告が当サイトに寄せられましたので、報告していきます。
11/6「皇位継承「男系維持」評価に濃淡 一線画す立民と共産」の記事の件
産経新聞社様
標記の記事を読みました。各党の幹部の発言がまとめられ、一応、両論併記っぽい記事ではありましたが、内藤慎二氏、竹ノ内秀介氏の偏った考えが反映され、「安定的な皇位継承」の問題を解決する気概が全く感じられず、がっかりしました。
「旧皇族の男系男子の皇族復帰案を軸に党の見解をまとめるとみられる。」とか、「内閣支持率が下落傾向にある中、自民の動きからは「岩盤」である保守層の支持を固めたいとの思惑も透ける。」とか、「保守層」が男系の皇統維持を求めているような願望を書いていますが、こんなことを求めているのは統一協会(宗教とは考えられないのでこのように称します)関係者か、男尊女卑に凝り固まった時代遅れの自称ホシュであって、「保守層」でも何でもありません。世論調査でも男系継承を維持すべきとする者は9%程度です。日本にそんなに保守層が少ないわけはないでしょう。こんな記事で皇位継承問題にあまり興味がない議員達に勘違いさせるつもりでしょうか。
記事の最後に自民関係者の「「先人が紡いできたルールを守ろう」という話だ」とかいう話を受け、「各党には伝統に基づき冷静に議論する姿勢が求められる。」と締めていますが、貴社の社員は全員「旧皇族の男系男子の皇族復帰(正しくは皇籍取得)案」で「安定的な皇位継承」問題が解消されると本当に思っているのでしょうか。
旧宮家の子孫は生まれ落ちたときから基本的人権を100%有する国民です。憲法14条の「門地」は、華族、公卿、諸侯などの子孫といったような封建的、特権的な身分を意味するのです。まさに、旧宮家の子孫のことを言っているのだから「旧宮家の男系男子」は特別な存在な訳がないのです。したがって、旧宮家の子孫の養子案は、憲法14条の門地による差別違反で不可能です。
また、元首相の故安倍氏も平成31年3月20日の参院財政金融委員会で、皇位継承の安定策をめぐり、戦後に皇籍を離れた『旧宮家(旧皇族)』の復帰について、『(旧宮家の皇籍離脱は)70年以上前の出来事で、皇籍を離脱された方々は民間人として生活を営んでいる。私自身が(離脱の)決定を覆していくことは全く考えていない』と述べていました。これは、彼が該当者を探させたものの、見つからなかったための答弁だとも解されます。
さらに、男系男子継承に固執する者の拠り所であり、2012年2月29日の産経新聞で「旧皇族(正しくは旧宮家の子孫)の大半、皇籍復帰(正しくは皇籍取得)要請あれば、一族として応える」などと書き、皇籍取得してもよい旧宮家の子孫が「いる」といい続けていた竹田恒泰氏も、最近「皇籍取得したいと思っている旧宮家の子孫などいるわけがない」と言いだし、「陛下が求めれば、赤子のうちに養子縁組をする」とか統一協会レベルの非人道的な妄言を言っています。こんなことを陛下が求めるわけもなく、国民に支持されるわけがありません。
本来であれば貴社は責任をもって、彼の虚偽の記事を掲載したことについて、誤りを認め読者に謝罪すべきではないのでしょうか。
天皇の歴史の中で女性天皇は8人10代存在し、女系継承も行われています。男系男子に限定したのは、男尊女卑の考えが強かった明治時代からのほんの百年余りです。伝統というならば男系女系に拘らない直系優先の皇位継承こそが日本の伝統といえます。さらに、その男系男子限定は、側室があって初めて可能になる制度です。側室がない現在、女系継承を公認しない限り、「安定的な皇位継承」は実現できないことは明らかです。世論調査において、70~80%の国民が女系天皇を支持していることから、多くの国民がそのことを理解されているものと思います。
先日も投稿致しましたが、園部逸夫氏の提言、
https://news.yahoo.co.jp/articles/acaddbc405c7c1bb7e6cd80f461fe388fcae4bf1
(1)皇位継承資格を女性・女系に広げる、(2)皇位継承順位は直系を優先する、(3)兄弟姉妹では長子を優先する、という2005年の報告書の結論が答えです。国民の支持率が上がるのは、こちらの提言であることは間違いないのですから、岸田首相も自民党議員も、一部の男系固執議員を除き、現実的に考える可能性が高いと思います。そうなると野党はどうするでしょう。
貴社はどうしますか?日本保守党とか参政党とかを応援して皇統断絶容認し続けますか?
今後は、「安定的な皇位継承」について真剣に考えて記事を掲載して頂きたいと思います。
(ゴロンさん)
—————–
実は、自分に比べると、ゴロンさんの意見・コメントは、かなり厳しいと思います。ゴロンさんは、「一線画す立民と共産」については直接は触れていませんが、おそらくこれは、皇位の安定継承に興味のない「ダンケー」におもねって、女系天皇容認は左翼のようなレッテル貼りをしているのでは?というイメージかと思います。一方、自分は、ここについては、違う立場の政党についてはもはや無視できない状況ということへの葛藤が、記事から感じられました。ただ、この新聞が油断ならないのは、「(でも)あくまでも、まず男系継承」があって、それを起点に「皇位の安定継承」を考えようという記事構成になっているので、これでは「皇位の安定継承」にはつながらない、ということはゴロンさんもきっちり伝えています(せっかく、記事のタイトルに「皇位安定継承」と入れているのにね(。-人-。)。最後にお伝えしたいこと、読者はしっかり見てますよ~(基礎医学研究者)
産経新聞さま
11/7、朝刊総合面(6面)に内藤慎二、竹之内秀介記者署名による記事、「皇位安定継承 男系で濃淡」を読みました。これまでの論調とは異なり「皇位安定継承」というキーワードを記事のタイトルに出されたのは、よかったと思います(内藤慎二記者は、以前より「皇位継承問題」については、産経新聞さんの中ではニュートラルな記事の書かれ方をされてきた方なので、わかるような気がします)。現時点での各党のまとめについても、それぞれの党の発言がうまく整理されている、と思います。
ただ、気になるところもありまして、“男系で濃淡”というのは、どのようなことを指しているのでしょうか?電子版の記事を見ますと「皇位継承「男系維持」評価に濃淡 一線画す立民と共産」とありますが、これではまるで、まず男系が正当であり、「皇位の安定継承」というのも、ベースは男系維持を安定化する!ということにつながりませんか?でも、今回は記者の書き方にも葛藤を感じるところはありまして、電子版の“「男系維持」評価に濃淡”というのは、側室制度が廃止された状態で、憲法上問題が指摘されている「旧宮家の復活案」を本当にもってこれるのかどうか?というのが、見て取れます。維新などは、なぜか令和の有識者案を前面に押し出そうとしていますが、岸田首相ら政府与党である自民党は、そこは少し異なると思います。だから、首相は10月30日の予算委委員会で「喫緊の課題であるという強い認識を持って議論に参加していただきたいし、自民も貢献をしていきたい」とされ、男系継承などというキーワードは用いていないのだと、私見では思います。それから、“一線画す立民と共産”については、左翼とか皇室破壊のような過激な言葉を使うことなく、正確に伝えられたところに、フェアなものは感じます。
それで、ここまでくると、さらに建設的なことを書きたくなるのは、今回のような各政党の動きがあるからこそ、国会における「皇位の安定継承」議論が重要になってくるのではないでしょうか?やはり、男系維持がまずベースにある考え方には無理がある、というのは、国会の議論を通じて明らかにしてほしいと、思います(あくまでも、その意見が「皇位の安定継承」につながるのかどうか?が、ポイントです)。
いずれにしましても、産経新聞さまが読者の意見を多少は取り入れ、今回のようなトーンの記事を出されたことには、一定の評価をします。今後の「社会の公器」としての役割に期待します。
(基礎医学研究者)