“「旧宮家の養子」内閣法制局も合憲ですか?”に対する反応(L.Kさん)

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1/13に、当サイトでは、産経新聞の正論(コラム)について紹介しました。

いい記事ではまったくなかったのですが、これに対して、重厚な意見・コメントを送られた方より報告が寄せられたので、以下に紹介します。


【L.Kさん】

【意見投稿】1月11日記事「「旧宮家の養子」内閣法制局も合憲」について

産経新聞 編集部御中

いつもお世話になっております。
皇室関連報道を中心に貴社の記事を拝読させていただいております、○○(本名)と申します。

1月11日に配信されたオピニオン記事「「旧宮家の養子」内閣法制局も合憲」を拝読しました。
https://www.sankei.com/article/20240111-BR4TQ5GIEBLIDIDSG4X7CGPCWM/?671869

端的に申し上げて、僭越ながら、見識の浅い内容だと感じました。以下に愚見を記させていただきますので、今後の議論にお役立ていただきたく存じます。

Ⅰ.「旧宮家の養子」を合憲とする解釈について
(昨年の)11月15・17日両日に衆院・内閣委員会で行われた、馬淵澄夫議員の質疑に対する内閣法制局第一部長・木村陽一氏の答弁は、総合すれば以下のように解釈されます。

『旧宮家子孫の養子縁組案(以下、旧宮家養子案)は、通常ならば憲法14条に定める「門地の差別禁止」に抵触するが、憲法2条に定める「皇位の世襲」原則を守る目的において、例外的に許容される』

しかし、この答弁には看過できない瑕疵があります。

1. まず、旧宮家養子案は、本来の目的である「安定的な皇位継承策」の議論を「時期尚早」として放棄した令和3年有識者会議で、「皇族数の確保」策の一つとして提案されたものに過ぎません。

つまり、皇位世襲原則を守る目的を「そもそも持っていない」案であるので、例外的な許容範囲から外れます。

皇位継承が危機に立たされているのは、男系継承に固執しているからに他ならず、そこを是正しないままでは安定継承策にはなりえません。

2. また、一般国民である旧宮家の男系男子孫を「血統」「家柄」「性別」により他の国民と別異に取り扱うことに変わりはないので、これが憲法14条が禁じる「門地の差別」であることは否定しようがありません。
こうした憲法違反の案が例外として正当化されるのは、皇位世襲原則という目的に適う「より合理的」、「より合憲的」、「より抑制的」な対案が他に存在しない場合に限られます。

「女性天皇、女系天皇を認める」案は、これらをすべて満たすことができます。従って、この案を採用し、それでもなお皇位の世襲が危ぶまれ、旧宮家よりも(男系・女系、男性・女性を問わず)直系に近い方がいらっしゃらない場合でしか、旧宮家養子案を正当化することはできません。

3. 尚、内閣法制局の答弁では、皇位の世襲に加え、摂政、国事行為代行を円滑に運用できることを条件としていますが、現在、これらを担える皇族方は10方おられるので、これらの円滑運用のために旧宮家養子案を実現する必要性はありません。

私は専門的な学問を学んでいない一般国民ですが、貴社と同じフジサンケイグループ傘下にある、扶桑社から刊行された『愛子天皇論』(小林よしのり氏・作)等の一般書籍を読めば、内閣法制局に対してこの程度の疑問は提示できます。

にも関わらず、憲法学者である百地氏がそうした指摘もせず、内閣法制局の権威にすがるような論考を寄せるとはどういうことなのか。それを載せる貴紙の信用にも関わることなので、厳しく問い質していただきたく存じます。

Ⅱ. 園部氏の直系論批判について
これに至っては、目も当てられません。
百地氏はこの記事から、園部氏が、「親から子へ」という厳格な直系継承しか認めないと主張しているように読み取ったのでしょうか。常識があれば、「直系から近い順に優先して継承していく」ことを訴えていることは容易に理解できるでしょう。

126代中僅か4例に過ぎない、7~10親等離れた継承を少なくないと誇張するのも見苦しいですし、そもそも7~10親等の継承を挙げたところで、今上陛下から600年・20世以上離れ、かつ生まれたときから一般国民である旧宮家子孫の先例にはなりません。

Ⅲ. 天皇陛下のご意向を寄り添う姿勢について
冒頭で、政治の世界では男系継承維持が大勢であることを強調していますが、重要なのはそこなのでしょうか。(そもそも岡田幹事長は、昨年10月31日の記者会見で、「(皇族女子と婚姻を伴う養子は)皇族の皆さまの婚姻の自由を無視してやるのはちょっと考えにくい」と発言しています。)

一番大事にすべきなのは、他ならぬ、天皇陛下を始めとする皇室の方々のご意思だと私は思いますが、貴紙ならびに百地氏はそのようには考えないのでしょうか。

昨年11月22日に、西村泰彦・宮内庁長官は、記者会見で安定的な皇位継承に課題があると明言し、自民党に対して、要望があれば説明に伺うとまで発言しました。「天皇の代弁者」とも言われる宮内庁長官が、自民党が「懇談会」を発足したタイミングでこのような踏み込んだ発言をされたことの意味を、私は「皇室の方々のご意思に寄り添う」観点から重く見ています。

貴紙ならびに百地氏が、天皇を戴く公民としての姿勢を取るならば、ぜひとも西村長官へのヒアリングを実現し、天皇陛下のご意向を伺うよう自民党ないし国会に求めていくべきだと思いますが、そのような考えは持っていないのでしょうか。

Ⅳ. 結び
結論として、根本的に百地氏は、天皇陛下のご意向に寄り添う姿勢よりも、男系継承を維持することしか考えていないことが分かります。

飛鳥・奈良時代までの双系的継承の時代の後、
平安時代以降、長く続いてきた男系継承に対して
親近感を抱くのも心情的には理解できます。

しかし、そのために(百地氏にとっては専門分野でもある)憲法解釈を歪めたり、直系優先継承という当たり前の考え方を否定しにかかったり、あまつさえ天皇陛下のご意向を無視までして皇室の存続を危ぶませるのでは、いったい何のために男系継承を維持するのか、という疑念が膨らむ一方です。

本当に男系継承が日本・皇室にとって大切な伝統であると考えるのならば、権力を笠に着て物事を進めようとするのでなく、最低限、上記のような疑問に論理的な反論をすべきです。

遅まきながら、他紙では男系継承にこだわらない、柔軟な論調が展開されてきています。自分の殻から抜け出し、現実に向き合うことが、貴紙の信用を保ち、今後の発展のために必要なことです。
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L.Kさん、ありがとうございました。ほとんど、論文を読んでいるような気分でございました。このくらいの重厚さがあるのならば、記事の掲載から少し遅れても、その効果は絶大なのではないですかね(重量級の右ストレート、という感じ(;^_^A)。で、L.Kさんの内容については、ここまで言われてしまったら、いわゆる”ぐうの音も出ない状態( ̄▽ ̄;)”と思いますが、いかがでしょうかね?そして、最後に重要な指摘をされていまして、年末・年始の毎日新聞、最近の女性自身や女性セブンなどの女性誌、サンデー毎日、そして、朝日新聞が展開しているアンケートなど、現在、国民が望んでいることに向き合おうとする姿勢と対比させるのは、重要な視点かと思いました(基礎医学研究者)。

2 件のコメント

    L.K

    2024年1月21日

    基礎医さん、掲載していただきありがとうございました😄
    サトルさん、コメントいただきありがとうございました😄
    産経についてはもう手遅れかとも思いつつ、記者達の僅かに残る良識に訴えるつもりで書きました😁
    「愛子天皇」で世論が盛り上がったときに、「国民の一部」を代表する新聞としてどう動くのか見ものです。

    サトル

    2024年1月21日

    L.Kさん
    相変わらず見事です。
    ここまでしっかり書かれたら、『普通』羞恥心で身悶えする……と思いますね。

    身悶えして「改める(実際はトーンダウンでしょメンツから)」か、さらに見苦しい「醜態」を晒すのか。
    易でいう「地に堕ちる」を望んでるなら別ですが、再生はもうないと思うけど。

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