後に語られる三国志の見せ場の一つに、赤壁の戦いがあります。実質の大陸の覇者、曹操、江東に(曹操の勢力圏とは)独立に統治されている呉・孫権、および、弱小で叩いても叩いてもしぶとく歯向かって来る劉備、との戦いです。
曹操は覇道による天下統一の為、劉備・孫権は自主独立のため、すなわち、劉備は後漢を立て直し帝を支える王道、孫権は中立の立場で自国安寧を保つ為に戦います。 孫権は忠臣、周瑜・魯粛と共に国の為に戦うと決めました。 しかし、開戦に踏み切らせた一人、(呉の降伏派を舌戦でボコボコにした)劉備軍の軍師・諸葛亮孔明に周瑜が危機感を持ち、演義では周瑜が孔明と劉備を排除しようと動きます。まず、周瑜は 劉備をお城に招いてあわよくば殺しちゃおうと劉備を呼び寄せる為、 孔明の兄であり、平穏に治めるやり方を好む、諸葛瑾を劉備の同盟の使者にしました。 これは劉備に警戒させないため、穏やかな外交する魯粛と相性を観た為です。 劉備は周瑜の企みなど考えず普通に同盟者として呉に赴きます。ある話では、劉備の義兄弟、臣下達は心配し、こっそり(または堂々と)と義弟の関羽がついてきたりして、孔明が周瑜の殺意に勘付き、暗殺しようとする劉備に危害を加えられないよう裏で立ち回ったりします。
ちなみに、大陸で言う同盟の意味ですが、これは強い者が弱者を利用して支配するか、使い捨てにする意を持ちます。表では”盟友、何かあればすぐ馳せ参じて力になろう!”と美辞麗句が耳に良く聞こえますが、所詮はよそ者、利用価値なくなれば切り捨ててやろう“という打算があります。 かの有名な三国志ゲームでも、天下統一しようとした際(さい)、自軍以外を滅ぼさないといけない理由にも伺えるところです(最初は何でみんな仲良く天下統一しないのだろうと思いました)。 同盟で盟友になっても気が抜けないところです。 周瑜は、”劉備殿!良く来てくれた!”とニコニコするも、裏では合図一つで劉備の首を跳ね飛ばす腹積もりでした。しかし、側を護る関羽や周瑜の動きを察した魯粛が孔明にそれとなく知らせたりして防ぎます。
周瑜としては、劉備や孔明の価値は孫権に開戦を決めさせるところ迄で、災いになりそうな劉備と孔明はもう用済みにしようという感じでした。 しかし、魯粛はまた違う考えであり、 劉備と孔明をここで消すのは早急すぎるし、曹操と戦うには味方の劉備・孔明と共に戦うことが(国家の)リスクを低くするので一番理に叶っており、道理が通るという感じでしょうか
魯粛は主君を護る為、周瑜と孔明の間を何とか取り保つよう努めます。 また、劉備の暗殺が失敗すると周瑜は諸葛瑾に “貴殿が孔明を口説いてくれれば孫権さまの統治が安泰になるし、どうかね?”と遣わしたりします。 諸葛瑾は孔明に、”同じ主君に仕えれば兄弟としての義理も立つし、争わなくて済む”と説きました。 しかし、孔明は”兄上が仰るのは公より私情がある小義です。私は劉備さまに恩がありますが、劉備さまは私より公を尊重し、国や民の為に忠義を尽くす大義の為に力を振るいたいです。”と返します。
周瑜は仕方ないとひとまず孔明を生かしつつ、曹操の対応にシフトします。 曹操は先に降伏した元劉表の外戚である蔡瑁を水軍都督に命じ、呉と戦います。初戦は孫権の水軍が曹操を蹴散らします。 人形三国志では、ここで孔明は”何かあるな?”と感じ、戦の勝ちに乗じて船に魯粛を乗せて曹操軍を偵察して、最初、何も変わりないと感じた魯粛が孔明に”何もないではないですか。”と尋ねると、孔明は”10日前ほど長江の水位が一度下がった事があり、半日ほどで戻ったと聞きます。何かありますよ。”と探索し、水上大要塞を発見します。 (一般の演義では要塞を発見したのは周瑜と言われてます) 水上大要塞は劉表軍で外戚として幅を利かせた蔡瑁が築き上げたもので、天然の木々が生い茂る立地等を活かした天然の要塞でした。
周瑜は魯粛と孔明からその報告を聞き、水上大要塞を使える人材が蔡瑁しかいないと見るや計略をかけようとします。 折しも曹操が周瑜を自軍に欲しいと周瑜の旧知である蔣幹(しょうかん)を孫権軍に送り込まれ、 周瑜は逆手に利用しました。 周瑜は蔣幹を歓待してわざわざ自ら案内して自軍の士気旺盛の姿や、兵糧の山を見せたりします。 蔣幹は周瑜を益々誘えなくなり、気まずく過ごし、夜一緒に同じ場所に寝ます。周瑜はわざと 蔣幹に見せるように、机に誰か宛の手紙を配置して様子を観ます。蔣幹は手紙を見るや否や曹操の下に帰りました。内容は、蔡瑁が周瑜に宛てての寝返りを誓うとありました。
蔣幹が曹操にこれを報告すると曹操は激怒して蔡瑁の首を跳ね飛ばします。 蔡瑁からすれば冤罪でしたが、不義理をしていた身のため、主君の信頼を獲得していなかった因果応報感がありました。 首を跳ね飛ばした後に曹操は周瑜の策略と気づきましたが、事が遅く、水上大要塞の力を失いました。
今回はここまで。次回は赤壁直前の3軍をご紹介致します。
(三国志編その10、赤壁編その6)に続きます。敵味方から矢(殺意)が雨あられと降り注ぎます。
文責 神奈川県 神奈川のY
6 件のコメント
あしたのジョージ
2025年3月18日
神奈川のYさん、ご親切にありがとうございます。
教養がないのがバレてしまいました。
(最初からバレてるけど🥹)
神奈川のY
2025年3月18日
あしたのジョージさま、今回の人名をざっくりと載せますと、
・周瑜(しゅうゆ)は魯粛と同じ呉の臣下で、大都督という司令官になってます。
レッドクリフの主人公で、孔明と並ぶ軍師で孔明のライバルにあたります。
・魯粛は劉備・孔明と呉の君主のバランサーで、人当たりの良い文武両道の忠臣です。
・蔣幹(しょうかん)は周瑜の友達で曹操のスパイです。雑魚敵その一。
・蔡瑁(さいぼう)は劉備達が身を寄せたさいに劉備をいじめた性悪男です。
雑魚敵その2。
次回よく出る味方の名前は孔明、魯粛、周瑜で敵は曹操になります。
赤壁の戦いは劉備・孫権と曹操が戦っています。
あしたのジョージ
2025年3月18日
すいません。🙇
登場人物の名前が似たような感じで、ややこしくて読めないので申し訳ありませんがが、首を跳ね跳ばされた人は冤罪なんですね。
気の毒と言えば気の毒ですね。
後から曹操も後悔しているみたいだし。
大した感想じゃなくて申し訳ありませんでした。🙇
神奈川のY
2025年3月17日
コメントありがとうございます。
・宜しければご教示下さいさま、
三国志で日本に通じるものが観えるのが不思議ですよね。昔からの課題が今でもあると教えてくれると感じました。大陸の同盟感にない日本の同胞感のある同盟の良い考えが一番まともと感じます。
・基礎医さま、国民の構えにハッとさせられました。特に今のこの状況、皆が皆魯粛や孔明のように考えて振る舞わないと国が滅びると思うと気が引き締められます。
時に、絶望?と足が止まってしまった方々に、劉備は叩きのめされても諦めず戦うのですよ、貴方がたは劉備より何倍も安泰な環境にあり、思想や行動にも法に触れない限りは自由がある。セーフティネットもあり、雨露しのぐ場があるのならただ絶望してるというのに何も感じないのですか?ガンバ!とYの意地悪孔明が出てしまいす。
基礎医学研究者
2025年3月17日
(編集者からの割り込みコメント)自分、編集をしていてつい強調しましたが、緑□の囲みは、皇位継承問題を考える、”国民の構え”にも通じるところがあると思いました。
宜しければご教示下さい
2025年3月17日
この時代の「同盟」が日米同盟と思いっきり被りますね。
実質「不平等条約、地位協定」
国防、君主への公心等、現代でも通用する課題です。