皇室とお金の話 ④内廷費~天皇家のプライベートマネーは3億円!?

Post's thumbnail

今回は、内廷費を取り上げます。

皇室費の中で、内廷費、皇族費は「私的費用」という説明をよくされます。
その中でも、内廷費は天皇家の「私的費用」です。
現在、天皇家は5人いらっしゃいます。

■財布を握るのは
私的費用ということで「御手元金」「天皇家のポケットマネー」などと言われますが、その実態を見ると、単なる生活費や自由に使えるお金とは言えない部分が多くあります。
宮廷費との違いとして、内廷費は「宮内庁の管理する公金ではありません」(宮内庁HP)と説明されていますが、内廷費の全てを天皇家が自由に使えるわけではありません。
宮内庁の関係部局長でつくる「内廷会計委員会」が年度始め前に予算を決め、年度終わりには「監査委員会」が監査し、「決算委員会」に報告をします。
内廷費は年4回に分けて、「内廷会計主管」名義の口座に振り込まれ、「内廷会計主管」という部長級の役職が管理します。

つまり、実際に財布を握っているのは天皇陛下でも皇后陛下でもないのです。

■改定ルール
戦後すぐの頃は、国会の求めもあり、内廷費はかなり詳細まで内訳を明かしていました。
国会の統制という観点から言えば、内廷費の使途を明らかにして審議を受ける必要がありますが、一方で、何をいくらで購入するか一つひとつの支出項目まで審議するのはプライバシーの侵害の面もあります。
さらに、高度成長期になると物価の急激な上昇と人件費の高騰で毎年改定の必要が出てきます。
定額である内廷費の改定の理由と上げ幅を説明するのは大変な作業でした。

そこで宮内庁は、改定基準を定め、客観的な基準で改定するルールを設けました。

人事院勧告を基にした国家公務員給与改善率から「人件費」を、消費者物価指数から「物件費」の上昇分を算定し、それが10%を超えた上昇であれば、内廷費を増額するというルールです。
増額に対する国会の審議を経る必要がなくなったため、使途はあまり明かさなくて済むようになりました。
これを、「秘密主義」とするか「プライバシーを守った」とするかは議論の分かれるところでしょう。

内廷費は平成8年(1996)以降、3億2400万円から上昇せず定額となっています。

■人件費
内廷費の中には、宮廷費の中にはあまり出てこなかった、人件費という費用が出てきます。
公的行事には宮内庁職員が関わっていることが多いため、行事の人件費の多くは宮内庁費でまかなっていますが、天皇家の「私的な」雇用人(内廷職員)は内廷費から給与が支払われます。
現行憲法下では、宮中三殿の宗教活動に国が関われなくなったため、一般の神社では神官、巫女にあたる掌典、内掌典は天皇家の私的雇用人としています。
人件費は内廷費の34%で、その他は物件費と呼ばれ66%を占めています。

■物件費
物件費といっても住宅の費用ではありません。
以下のように分類されています(金額は割合からの試算額)。

恩賜金・交際費や祭祀費のように公的性格を帯びたものがあり、内廷費が完全に「私的費用」と言い切れない部分があります。
いわゆる「御手元金」という自由に使える金額は1人500万円程度ではないかと『天皇家の財布』著者の森暢平氏は推定しています。

■宮廷費か内廷費か
皇室の費用を宮廷費にするか内廷費にするかの線引きはかなり微妙なもので、宮内庁が決めています。
天皇陛下が学生の時の授業料は宮廷費(公的費用)でした。
しかし、愛子さまの授業料は内廷費(私的費用)です。
これはなぜでしょうか?

それは、いまの皇室典範には女性に皇位継承権がないからです。
「皇位継承者ではない愛子さまには国が費用を負担しない」という建前なのです。

ちなみに悠仁さまの授業料は宮家の「私的費用」である皇族費です。
次回はその皇族費について見ていきましょう。

文責 千葉県 まー

【参考文献】
『天皇家の財布』森暢平
宮内庁HP

【バックナンバー】

8 件のコメント

    JJ

    2023年9月6日

    民主党政権下、ツルネンマルテイ議員から、春秋恒例祭が国費で賄われているが、これも天皇から見れば私事とされるのかとの質問が出された際、皇室祭祀は私事では無く、またそれをまかなう内廷費もポケットマネーでは無い旨述べられております。そして、憲法学、皇室制度専門の山田亮介氏の見解によれば、内廷費には予算や決算の制度もあり、内廷会計審議会がこれを審議することになっています。公金に準ずる管理運用がなされている内廷費を、宮廷費=公的費用、内廷費=私的費用と明確に区分けすることは難しい。むしろ、両者とも「公金」であるが、その使途や管理方法が現行の憲法や法制度との兼ね合いから便宜的に分けられているにすぎませんと、本で解説されていますね。

    基礎医学研究者

    2022年3月19日

    今回も勉強になりました。「内廷費」への義憤は他のみなさまがコメントされているので、私は少し違う部分へのコメントを。養育費・旅行費ということころに、陛下や上皇陛下の「研究費」が入っているのが、興味深いですね。「研究費」は基本、「公的予算」なので使途の制限ははっきりいってあります(まあ、悪いことする人が出てくるからというのも、原因の1つなのですけどね(;^_^A)。一方、「陛下ら」の研究費がここに入って来ることを好意的に見るのならば、比較的流動的でない形の費用ということになるので、良いですね~はっきりいって(以上、失礼しました)。

    まー

    2022年3月17日

    >京都のSさん
    なるほど、本論とは外れますが勉強になりました。
    このように勉強の輪が広がっていくのは楽しいですね。

    >たこちゃんさん
    おっしゃるとおりですね。
    皇室の方々の「私的な」努力によって支えられている建付けになっています。
    制度が「やる気」によって成り立っているというのはよろしくないことだと思います。

    >殉教@中立派さん
    公務員はよく「税金で!」と言われますが、それと似たような構図でしょうか。
    その「税金」ってあなただけが払ってるんじゃないですけど・・・、と言いたいですね(*^^*)

    >urikaniさん
    私は、皇室の方々がやりやすいなら、費用の名目は何でもいいと思っています。
    「私的費用ですから」と言えば批判も小さくなるかもしれませんしね。
    ただ、「やっていただいている」ことを自覚して、「不断の努力」に感謝できるようにしないといけませんね。

    >ダダさん
    義憤を多くの人と共有できるよう、事実やデータをしっかり説明していくことが必要ですね。
    共感を得ない私的な怒りでおさめられないようにしたいですね。

    ダダ

    2022年3月17日

    今回も面白かったです!!
    (すでにコメントされている皆さん同様、随所に義憤を覚えましたが)

    愛子さま関連は内廷費でしたか・・・。
    天皇皇后両陛下の胸中はいかばかりか。
    一刻も早く、愛子さまを皇太子に! ですね。

    urikani

    2022年3月16日

    「皇位継承者ではない愛子さまには国が費用を負担しない」
    なんじゃそりゃ~⁈(@ ̄□ ̄@;)!!
    嫁がれるまで極めて制限された生活をさせておいて、皇位継承者じゃないから学費は負担しない?
    ひど過ぎる。天皇陛下のお子様の学費を国が払っていないと海外に知れたら大恥かくんじゃないですかね。女性というだけで皇位継承権がない時点でアウトか・・・
    (;・∀・)
    しかし、全然私的じゃない費用も含まれていますね。
    皇室特権とか言ってる人は読んだ方がいいですね。

    殉教@中立派

    2022年3月16日

    内廷費は、皇族方が品位を保ち、国民の共感を得る為に必要。眞子さま(と、結婚した女性皇族)への一時金も、似たような意味合いがあると思う。・・・しかし国民ときたら、「俺達の『理想の家族像』の品位を保て、でも税金泥棒はヤメロ!」と、矛盾した要求をする。現在、一般人で『理想の家族像』を保てるのは、一部の金持ちだけなのに。私も、皇族方を批判したいと思う事は(ごくたまに)あるが「時代性への正しい理解」「反論権を持たない皇族方」を念頭に、慎重に言葉を選びたい。
     ただ、「言葉を選ばない」連中により、3世代の女性皇族が「統合されたサンドバッグの象徴」にされてしまい残念。今上陛下も(御誕生日会見で)「他者の置かれた状況を想像せよ」と仰せられ、懸念を示された。限られた予算と発言力しか持たない皇族方を、これ以上不憫な目から守るためにも、こうした事実は広く世間に膾炙されるべきだと思う。

    たこちゃん

    2022年3月16日

    以前、内廷費が掌典職の方たちのお給料込で3億円と聞いたことがあり、
    正直少なさにビックリしました。
    このところ週刊誌が「皇室特権」とか言って、皇族の皆さまが我々国民
    よりも随分よい暮しをしておられるかのように書いています。
    こういうことがもっと知られるべきと思いました。

    京都のS

    2022年3月16日

     文中の「内廷費は平成8年(1996)以降、3億2400万円から上昇せず定額となっています」という一文を読み、「然もありなん」という感想を持ちました。バブル崩壊後にも拘らず消費税を上げ(3%→5%)、日本経済をデフレーション(持続的に物価が下落していく局面)に叩き落したのが1997年だからです。「内廷費」のうち「人件費」の元となる国家公務員給与改善率も「物件費」の元となる消費者物価指数もデフレ下では確実に下落します。
     ネオリベ政策が推進されて非正規雇用が増えれば、それが公務員給与にも反映され、財界人・投資家・エコノミスト・経済学者といったグローバリスト(ほぼ緊縮論者と重なる)、そして財務省が求める「小さな政府」主義からも、やがて皇族としての品位を保てる程度の内廷費すら出なくなる可能性があります。
     ちなみにホリエモンが「天皇制に違和感がある」と言ったのも、氏の「小さな政府」論からだと思われます。

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。