
大河「べらぼう」は、吉原に客を呼ぶべく出版活動に勤しむ蔦谷重三郎(横浜流星)パートと、時代の変化に応じた改革を行うために権力を掌握したい田沼意次(渡辺謙)パートが同時進行しますが、両者を繋ぐ人物が山師(鉱山開発者)の平賀源内(安田顕)です。国際相場を知らないために日蘭貿易で金銀が流出し、流通量↓を補うために金銀銅鉄の産出を増やす必要があり、同時に新貨幣発行は豪商に奪われた経済主権を武家に取り戻す意味もありました。つまり源内の山師活動は田沼政権の公共投資と言えました。秩父の鉄鉱山事故で出資者からクレームが付いた件で相談に来た源内は意次と以下のような会話を交わしました。
意次「山で稼げば土地の者はカネを得る…水路が開かれれば商いは盛んになり、川沿いには宿場が出来、会所が開かれ、民は潤う…こちらにも運上冥加(税金)が入る…本来お上が旗を振ってもいいぐらいの話だ」
※松平武元(石坂浩二)や田安賢丸(後の松平定信:寺田心)ら由緒正しい幕臣は8代・吉宗に倣って朱子学的な規制強化&緊縮財政を志向し、田沼の規制緩和&積極財政を蔑み嫌う。
源内「いっそ国を開いちまえば色んな話が手っ取り早く片付きますわねぇ…異人が取引するのは金銀銅…人の値打も先祖が偉いったって通じない…何も無い奴にとっては待ってましたの檜舞台」
意次「国を開けば俺たちのやろうとしてることなど放っといても変わる…しかし、そういう訳にも行かんなぁ」
源内「誠に国を開けば、あっという間に属国とされましょう」意次「もう、この国には戦を覚えておる者もおらんしな」
※意次は後にロシアを警戒して蝦夷地の調査を命じるなど国防意識も強い。
さて、現代日本の由緒正しいホシュどもは皇統男系主義を志向します。時代の変化に応じた改革など「以ての外」と国連・女性差別撤廃委員会からの皇室典範改正勧告(女性皇族が天皇になれないのは女性差別に当たるから改めよ)も、コアな支持者向けに撥ね付けるポーズを崩しません。本当は国連を脱退する根性も無い癖に。
今、大河ファンの間では蔦重の相方・唐丸(渡邊斗翔)の正体に注目が集まっていますが、おそらくメディア王・蔦重が最後に仕掛た謎の絵師・東洲斎写楽(役者絵が得意)だと思われます。
いくら正しく啓蒙しても世が動かない時代なら、世相を活写して批判を加えつつ、楽しませながら世間の空気を換えるしかありません。
文責:京都のS
7 件のコメント
京都のS
2025年2月9日
だふね様、お久しぶりです。※ありがとうございます。
ホント100年で何もかも変わりますね。「べらぼう」の冒頭シーンである明和の大火(1772)の約100年後が大政奉還(1867)です。その間には寛政改革、文化文政期、天保改革、黒船来航・通商条約・5港開港などがあります。驚くべきスピードです。日本会議に集う男系ホシュどもはパックス・アメリカーナ(対米屈従体制)が永遠に続くと思い込んでいますが、一瞬で何もかも変わることも有り得ます。「おんな城主・直虎」(「べらぼう」と同じ森下佳子脚本)の南渓和尚(小林薫)の言葉「明日、今川館が焼け落ちるかもしれんぞ?」を借りれば、「明日、ホワイトハウスが瓦解するかもしれんぞ?」です。そういう流れになってから対米独立の議論を始めても遅すぎるのです。同様に「明日、男系国賊に絶望した陛下や皇族方が『皇室終了』を宣言されるかもしれんぞ?」ってことです。
唐丸は今のところ歌麿説が優勢ですね。花魁の絵(礒田湖龍斎・筆)を見事に模写した唐丸なら美人画が得意な歌麿が妥当ですし、写楽の役者絵はパース(遠近)が不自然ですから、やはり唐丸の画風とは全く違います。実は最近、写楽の正体が阿波国(徳島)の能楽師だと判ってきたので、もし唐丸の出身国が阿波だったら面白い(能楽師になっても絵を諦めきれずに戻ってくる)なぁと思っていたのですが。
だふね
2025年2月8日
Sさん、興味深い考察をありがとうございます。私も、先週の『べらぼう』を観て、田沼意次と平賀源内のやりとりが気になった一人です。
源内「誠に国を開けば、あっという間に属国とされましょう」
意次「もう、この国には戦を覚えておる者もおらんしな」
彼らはこのやりとりから100年後(くらい?)の黒船来航を予言したわけではないでしょうが、現実そうなったわけです。
そして今から100年前、元号が昭和に変わるかという頃、これからものすごい勢いで時代が変わっていく、諸外国の中で揉みくちゃにされて戦争に負けて、アメリカの属国同然になることなど、誰も予想していなかったでしょう。
何もかも嘘みたいに変わるのに、100年という歳月は充分すぎるということが、既に長い歴史の中で証明されている。なのに、明治以降にできた法律を頑迷に変えようとしない連中は愚かすぎるというもの。このままでは100年も経たない内に皇室が滅びる可能性が高いというのに。
唐丸くんの正体は、やはり写楽なのでしょうかね…。顔立ちが似ているから、染谷将太演じる喜多川歌麿かなぁとも考えたのですが。写楽を演じる俳優が誰か、まだ明かされていないようですし、これは展開が超楽しみで! 「翌週が気になってしょうがない」大河ドラマって、『べらぼう』が初めてです。
あしたのジョージ
2025年2月8日
「ケインジアン双系派が、ケインジアン男系派を駆逐する!10th season」を読みましたが、これからのべらぼうでの田沼意次の言動が気になりますね。
京都のS
2025年2月8日
田沼意次の事績を語っているのは、「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 10th season」( https://aiko-sama.com/archives/46928 )です。合わせてお読みください。
京都のS
2025年2月8日
ジョージ様、コメありがとうございます。小林先生は全方位的でオールラウンドな論者(芸能から皇室までの話題を、保守とリベラルを使い分けながら語り尽くす)ですが、同じことを出来る人が全くいないという唯一無二の存在です。
江戸中期の特に田沼期は、田沼意次・平賀源内・蔦谷重三郎という天才が3人も現れた稀有な時代でした。現代日本は”よしりん”1人です。何とも心許ないですよね。
京都のS
2025年2月8日
掲載ありがとうございました。今回の内容で疑問符が付いていることがあります。それは唐丸の正体が喜多川歌麿(成長した姿は染谷将太)である可能性が高いとの情報が出たことです。「写す」だの「楽しませる」だのの結論部分を構成しただけに残念ではあります。
さて、「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」の要素を含むブログは以下です。
・「『べらぼう』が始まった今だから言っておきたい平賀源内異聞」( https://aiko-sama.com/archives/48334 )
・「『光る君へ』と『べらぼう』を繋ぐレイラインと愛子天皇への道」( https://aiko-sama.com/archives/49128 )
・「『血のスペア』という非人道的システム」( https://aiko-sama.com/archives/49347 )
・「『○○売れ』とは『景気の気』」( https://aiko-sama.com/archives/50040 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37751 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/48744 )
あしたのジョージ
2025年2月8日
先週のべらぼうも面白かったです。
田沼意次と平賀源内のセリフも印象に残りました。
確かに正しい事を啓蒙しても余り関心のない人達には、中々響かないと思います。
今こそエンタメ(文化)の力が試されていると思います。
キャンセルカルチャーの嵐が吹き荒れている現在ですが、蔦屋重三郎のような本物が現れる時だとも思います。🤔
すでによしりん先生がいますが。🤗