ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 10th season

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 「役人の 子はにぎにぎを よく覚え」とは江戸期の幕府官僚が収賄する様を風刺した川柳です。言葉ではなく手を握る動作で賄賂を要求し、それを役人の子が直ぐに覚えるという意味で、田沼意次が幕政を担っていた頃(1767~86)に詠まれました。主に豪商から幕府官僚への賄賂が横行した背景を以下に示します。

 江戸前期の租税は農民から徴収する年貢米でしたが、島原の乱(1637)を経て太平の世が続く見通しが立ち、また元禄期(1688~1704)の経済成長によって重農主義から重商主義へ移り、都市部の町人(商人&職人)が経済活動の中心となりました。年貢米は大坂などの大都市に集められ、諸藩は入札制によって米を仲買人に売却し、落札者に米切手(米10石と交換できる証券)を発行し、これには未着米や未収穫米も含まれました。やがて幕府は堂島で行われる正米商い(米切手の売買:現物市場)と帳合米商い(帳面上での売買:先物市場)を公認(堂島米市場成立:1730)しますが、それは米価安定に苦慮した徳川吉宗(米公方)享保改革(朱子学的規範に基づく緊縮財政:1716~35)の頃でした。

 こうした経緯で幕政を引き継いだ田沼が町人にも課税すると、収益を誤魔化して避税したい豪商と蓄財したい幕府官僚とが癒着するのは必然でした。冒頭の川柳では収賄官僚こそが悪であり、時処位に適う改革を行った田沼に非は有りません。その他の田沼改革としては、江戸は金貨で上方は銀貨という貨幣圏を統一し、従来の二朱金と新発行の二朱銀を等価としてカネの価値を下げると物価が適度に上昇し(金融政策)、また印旛沼干拓などの公共事業は多分野に新たな需要を生み出しました(財政政策)。つまり田沼政治とは税制改革とケインズ政策でした。こうした政策は享保改革で不況に陥った経済と文化を復興させましたが、次の寛政改革緊縮財政:1787~93)で再び大不況となり、「白河の 清きに魚も 住みかねて 元の濁りの 田沼こいしき」という落首も出ました。

 同様の経済政策は日本史上で何度も為されました。仁徳帝の大減税しかり持統帝の富本銭鋳造(金融)&藤原京完成(財政)しかり。ゆえに為すべき時に為すケインズ政策は日本の伝統(~是清・角栄)だと言えそうですが、玉木氏@男系派の唱える「年収103万円の壁の引き上げ」では減収分を他で賄ったり社会保障を削ったりというネオリベ&緊縮に走るでしょう。    

文責:京都のS

5 件のコメント

    京都のS

    2024年12月7日

     パワーさん、水野と遠山については、「8th season」( https://aiko-sama.com/archives/46543 )を、※欄も込みで、ご覧ください。
     そして次回(9日?)は吉宗が登場します。

    パワーホール

    2024年12月6日

    京都のSさん
    天保の改革には遠山金四郎が反対していましたよね。田沼の「賄賂」もですが、遠山の「刺青」もそれを快く思わないものがダーティーなイメージを彼らに着せようとした結果なのかもしれません。緊縮に走ったのも幕府としては町人が力を持てば自分たちの体制が揺らぎかねないとの危惧があったのかもしれません。

    京都のS

    2024年12月6日

     パワー様、コメありがとうございました。江戸期のうちで好況なのは元禄期(徳川綱吉)、田沼期(田沼意次)、文化文政期(徳川家斉)で、不況なのは享保改革期(吉宗)、寛政改革期(松平定信)、天保改革期(水野忠邦)ですが、享保期は本文中でも書いたように黒(むしろ赤?)かと言えばビミョー(グレー)なのです。緊縮した傍らでアクセル(ケインズ的公需)も吹かせつつ庶民の「景気の気」も興した(アダムスミス的&ハイエク的民需)からです。そして実際に貿易赤字を減らす努力(輸入品目の国産化)は実を結びました。まぁ、「堂島米市場」を公認するネオリベ政策や「上米制」(増税・緊縮)は完全にダメでしたが。
     田沼の再評価は嬉しいコトです。だから「べらぼう」も楽しみです。こうやって景気変動から見る歴史も面白いでしょう?これは三橋貴明(ケインジアン男系派)がやってたんですが(笑)。それをケインジアン双系派の私が別のファクター(儒教的男尊女卑が人口を減少させて景気も悪化させんじゃね?)を加えてやってみたわけです。

    パワーホール

    2024年12月5日

    田沼意次の時代って来年の大河ドラマの舞台ですよね。
    それと、江戸時代の改革ですがいずれも景気対策ではなく緊縮政策で民力を奪っているだけな気がします。寛政の改革も天保の改革もその点が問題であり国力を衰退させ
    逆効果になってしまったと思います。江戸時代の改革は朱子学的な価値観で行われたとのことですが、男尊女卑の強化と相まって国力の衰退や文化への悪影響まで引き起こしてしまったことは衝撃的です。

    京都のS

    2024年12月5日

     掲載ありがとうございました。ケインジアン男系派のついでにネオリベ緊縮派も斬るシリーズの第10弾です。前回(9th season)に続いて近世(江戸時代)の景気変動を読み解きつつ似非ケインジアン@男系派の玉木氏を批判しています。

     第1弾~第8弾は以下です。
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!1st season」( https://aiko-sama.com/archives/36871
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37083
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!3rd season」( https://aiko-sama.com/archives/38400
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!4th season」( https://aiko-sama.com/archives/42223
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 5th season」( https://aiko-sama.com/archives/43664
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 6th season」( https://aiko-sama.com/archives/46020
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 7th season」( https://aiko-sama.com/archives/46118
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 8th season」( https://aiko-sama.com/archives/46543
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/46734

     他にケインズ主義について書いた記事は以下です。
    ・「インペリアル・グローバリズムという悪夢2」( https://aiko-sama.com/archives/33381
    ・「時処位の変化と制度改革」( https://aiko-sama.com/archives/32084
    ・「歴史から自由になった日本人民は皇室を戴けるか?(下)」( https://aiko-sama.com/archives/22681
    ・「権力者・愛子天皇の治世を仮想してみれば…」( https://aiko-sama.com/archives/22571
    ・「齟齬が生じたなら万難を排して改めよ!」( https://aiko-sama.com/archives/34107
    ・「思想マトリックスに皇統問題を加味してみた(表)」( https://aiko-sama.com/archives/29761
    ・「博愛と競合の間(余)~圧倒的に節度が足りない!」( https://aiko-sama.com/archives/37381
    ・「合理と感情の間~良識なき言論人を葬送せよ!」( https://aiko-sama.com/archives/38156

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