5月15日に提言を出した読売新聞は、2005年に母方だけで天皇の血を引く「女系」の皇位継承を認める方策をまとめた小泉政権時に宮内庁長官を務めた羽毛田氏の談話を19日に掲載、安定的皇位継承のための最適解である平成の有識者会議に立ち戻ることを示唆しています。
平成の有識者会議の報告書読み①を投稿した後、読売提言の大センセーションが巻き起こり、取り紛れていましたが、改めて少しずつ読み進めてゆきましょう。
「皇室典範に関する有識者会議 報告書」平成17年11月24日(〔参考)などはPDFでご確認ください)
III. 安定的で望ましい皇位継承のための方策
1. 皇位継承資格
《歴史と現行制度》
明治22年の旧皇室典範(以下「明治典範」という。)の制定までは、皇位継承についての明文の規定はなかったが、皇位は、それぞれの時代の価値観や社会情勢を背景にしつつ、すべて皇統に属する男系の者で皇族の身分を有するものにより継承されてきた。その際、半数近くは非嫡系による継承であった。また、10代8方の女性天皇(男系女子)が存在するが、その性格や位置付けについては、必ずしも一括りにすることはできない。〔参考6、7、8〕
明治典範において、皇位継承をめぐる争いを回避するなど皇室制度の安定化を図るため、皇位継承について初めて明文化されたが、その際、皇位継承資格が男系男子(非嫡系を含む。)に限定された。
さらに昭和22年に制定された現行の皇室典範(以下「現行典範」という。)で、嫡出であるという要件が加えられた。
この結果、現行制度は、歴史上、皇位継承の仕方が最も狭まったものとなった。〔参考9〕
現行典範では、皇位継承資格者の要件として、皇統に属する嫡出の男系男子の皇族であることを定めている。この制度の趣旨は以下のとおりである。
① 皇統に属すること
歴代天皇の血統に属することを求めるものであり、世襲制をとる以上当然の要請である。
② 嫡出であること
皇族制度は世襲による皇位継承を維持するための仕組みであり、その趣旨から当然の要請である。
明治典範では非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたが、戦後、現行典範制定時に、社会倫理等の観点から、嫡出に限定されたものである。〔参考10〕
③ 男系男子であること
歴史上、皇位は一貫して男系で継承されてきたことなどから、明治典範、次いで現行典範において、この要件が規定された。〔参考11、12〕
④ 皇族の身分を有すること
上記の皇位継承資格者の要件のうち、①「皇統に属すること」及び④「皇族の身分を有すること」は、制度の趣旨から当然の要請であり、また、②「嫡出であること」は、国民の意識等から今後とも維持することが適当であるた
め、皇位継承資格者の安定的な存在を確保するための方策を考えるに当たっては、③の男系男子という要件が焦点となる。
愛子さまの即位を前提として「双系継承を制度化するに当たり」、如何に「男系男子という要件」を乗り越えてゆくか、有識者会議の見識の問われる理論が展開されてゆきます。
(1) 男系継承の意義等
皇位は、過去一貫して男系により継承されてきたところであり、明治以降はこれが制度として明確にされ、今日に至っている。
ア.皇室典範制定時における男系男子限定の論拠
明治典範、現行典範の制定時には、男系継承を制度化するに当たり、それぞれの時代背景の中で、様々な論拠が挙げられている。
具体的には、明治典範制定時には、
• 男性尊重の国民感情、社会慣習がある中で女性天皇に配偶者がある場合、女性天皇の尊厳を傷つける。
• 我が国の相続形態は男子を優先し、長子が女子で次子以降に男子がある場合は男子が相続することになっている。
• 歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎのいわば摂位であり、皇統は男統に存するというのが国民の考え方である。また、その在位中、配偶者がなかったが、今日、独身を強いる制度は、道理や国民感情に合わない。
• 女性天皇の皇子は女性天皇の夫の姓を継ぐものであるから皇統が他に移り、伝統に反する。
• 配偶者が女性天皇を通し政治に干渉するおそれがある。
• 女性が参政権を有しないにもかかわらず、政権の最高の地位に女性が就くことは矛盾である。
などの点が指摘され、また、現行典範制定時には、
• 過去の事例を見る限り男系により皇位継承が行われてきており、それが国民の意識に沿うと考えられる。
• 歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎの存在であったと考えられる。といったことがその論拠とされた。〔参考11、12〕
現在の感覚からは、乖離している論拠が多く、特に「中継ぎ説」が否定されていることは、古代史の権威・義江明子氏の著書でも明らかです。
「中つぎ」説は皇位の男系継承が法制化された明治に生まれ、一九六〇年年代に学説として確立した。そのころまでは、父系直系ないし兄弟継承が日本古来の原理と考えられていたのである。しかし現在では、そもそも世襲王権の成立自体、六世紀前半の継体~欽明以降とみることが、ほぼ学会での通説となっている。『日本書紀』が記す最初の女帝推古は欽明の娘で、兄弟三人に続いて即位した。世襲原理が王位継承の基本となった時、双系的血統観のもと、熟年の男女がこもごも王位についたのである。
義江明子著『女帝の古代王権史』13頁
イ.男系継承の意義についての考え方
男系継承の意義等については、今日においても、
• これが我が国の皇位継承における確立された原理であり、それ以上に実質的な意義を求めること自体が無意味であるとする見解
• 女系になった場合には皇統が配偶者の家系に移ったと観念されるため、これを避けてきたものであるとする見解〔参考13〕
• 律令や儒教など中国の影響により形成されたものであり、必ずしも我が国社会固有の観念とは合致せず、また現実に、女系の血統が皇位継承において相応の役割を果たしてきた事実もあるとする見解
• 武力等を背景とした伝統的な男性優位の観念の結果によるものであり、男系継承自体に固有の原理が存在するわけではないとする見解など、
種々の議論があるが、これらは個人の歴史観や国家観に関わるものであり、それぞれの見解の当否を判断することから皇位継承資格の検討に取り組むことは適当ではない。
したがって、ここでは、これまで男系継承が一貫してきたという事実を認識した上で、過去どのような条件の下に男系継承が維持されてきたのか、その条件が今後とも維持され得るのか、を考察することとする。
20年前の2005年時点においても、「律令や儒教など中国の影響により形成されたものであり、必ずしも我が国社会固有の観念とは合致せず、また現実に、女系の血統が皇位継承において相応の役割を果たしてきた事実もあるとする」という女性・女系天皇に道を開く見解があったものの、いったんは、「男系継承が一貫してきたという事実を認識した上で、過去どのような条件の下に男系継承が維持されてきたのか、その条件が今後とも維持され得るのか」を考察。
(2) 男系継承維持の条件と社会の変化
男系による継承は、基本的には、歴代の天皇・皇族男子から必ず男子が誕生することを前提にして初めて成り立つものである。
過去において、長期間これが維持されてきた背景としては、まず、非嫡系による皇位継承が広く認められていたことが挙げられる。これが男系継承の上で大きな役割を果たしてきたことは、歴代天皇の半数近くが非嫡系であったことにも示されている。また、若年での結婚が一般的で、皇室においても傾向としては出生数が多かったことも重要な条件の一つと考えられる。
このような条件は、明治典範時代までは維持されており、制度上、非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたほか、戦前の皇室においては、社会全般と同様、一般に出生数も多かったことが認められる。
しかしながら、昭和22年に現行典範が制定されたとき、まず、社会倫理等の観点から、皇位継承資格を有するのは嫡出子に限られ、制約の厳しい制度となった。実際に、現行典範の制定の際の帝国議会では、皇籍離脱の範囲を拡大するとともに、非嫡出子を認めないこととすれば、皇統の維持に不安が生じかねないため、女性天皇を可能とすべきではないかとの指摘もあった。
近年、我が国社会では急速に少子化が進んでおり、現行典範が制定された昭和20年代前半には4を超えていた合計特殊出生率(一人の女性が、一生の間に産む子供の数)が、平成16年には1.29まで低下している。
皇室における出生動向については、必ずしも、社会の動向がそのまま当てはまるわけではない。しかし、社会の少子化の大きな要因の一つとされている晩婚化は、女性の高学歴化、就業率の上昇や結婚観の変化等を背景とするものであり、一般社会から配偶者を迎えるとするならば、社会の出生動向は皇室とも無関係ではあり得ない〔参考14〕。
戦前、皇太子当時の大正天皇が結婚された時のご年齢が20歳、その時点で妃殿下が15歳、昭和天皇のご成婚時(同じく皇太子当時)には、それぞれ22歳と20歳であったことを考えると、状況の変化は明らかである。
現に、明治天皇以降の天皇及び天皇直系の皇族男子のうち、大正時代までにお生まれになった方については、お子様(成人に達した方に限る。)の数は非嫡出子を含め平均3.3方であるのに対し、昭和に入ってお生まれになった方については、お子様の数は現時点で平均1.6方となっている。
男子・女子の出生比率を半分とすると、平均的には、一組の夫婦からの出生数が2人を下回れば、男系男子の数は世代を追うごとに減少し続けることとなる(注)。
実際には、平均的な姿以上に早く男系男子が不在となる可能性もあれば、逆に男子がより多く誕生する可能性もあるが、このような偶然性に左右される制度は、安定的なものということはできない。
このような状況を直視するならば、今後、男系男子の皇位継承資格者が各世代において存在し、皇位が安定的に継承されていくことは極めて困難になっていると判断せざるを得ない。
これは、歴史的に男系継承を支えてきた条件が、国民の倫理意識や出産をめぐる社会動向の変化などにより失われてきていることを示すものであり、こうした社会の変化を見据えて、皇位継承の在り方はいかにあるべきかを考察する必要がある。(注)
試みに、仮に現世代に5人の男系男子が存在するとして、現在の社会の平均的な出生率(平成16年合計特殊出生率1.29)を前提に、将来世代の男系男子の数を確率的に計算してみると、男子・女子の出生の確率をそれぞれ2分の1とすれば、子の世代では3.23人、孫の世代では2.08人、曾孫の世代では1.34人と、急速な減少が見込まれる(出生率を1.5としても、曾孫の世代では2.11人となる。)。〔参考15〕
「非嫡出子を認めないこととすれば、皇統の維持に不安が生じかねないため、女性天皇を可能とすべき」現行典範の制定の際にも、いわゆる側室がいない状態ならば女性天皇を可能とすべきという指摘があったことが分かります。
「男子・女子の出生比率を半分とすると、平均的には、一組の夫婦からの出生数が2人を下回れば、男系男子の数は世代を追うごとに減少し続ける」「偶然性に左右される制度は、安定的なものということはできない」男系男子に拘って、男女の別のない双系継承にしなければ、制度は安定しないことを、出生率からも示しています。
(補論)旧皇族の皇籍復帰等の方策〔参考16〕
男系男子という要件を維持しようとする観点から、そのための当面の方法として、昭和22年に皇籍を離れたいわゆる旧皇族やその男系男子子孫を皇族とする方策を主張する見解があるが、これについては、上に述べた、男系男子に
よる安定的な皇位継承自体が困難になっているという問題に加え、以下のように、国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難である。
• 旧皇族は、既に60年近く一般国民として過ごしており、また、今上天皇との共通の祖先は約600年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方であることを考えると、これらの方々を広く国民が皇族として受け入れることができるか懸念される。
皇族として親しまれていることが過去のどの時代よりも重要な意味を持つ象徴天皇の制度の下では、このような方策につき国民の理解と支持を得ることは難しいと考えられる。
• 皇籍への復帰・編入を行う場合、当事者の意思を尊重する必要があるため、この方策によって実際に皇位継承資格者の存在が確保されるのか、また、確保されるとしてそれが何人程度になるのか、といった問題は、最終的には個々の当事者の意思に依存することとなり、不安定さを内包するものである。このことは、見方を変えれば、制度の運用如何によっては、皇族となることを当事者に事実上強制したり、当事者以外の第三者が影響を及ぼしたりすることになりかねないことを意味するものである。
• いったん皇族の身分を離れた者が再度皇族となったり、もともと皇族でなかった者が皇族になったりすることは、これまでの歴史の中で極めて異例なことであり、さらにそのような者が皇位に即いたのは平安時代の二例しかない(この二例は、短期間の皇籍離脱であり、また、天皇の近親者(皇子)であった点などで、いわゆる旧皇族の事例とは異なる。)。これは、皇族と国民の身分を厳格に峻別することにより、皇族の身分等をめぐる各種の混乱が生じることを避けるという実質的な意味を持つ伝統であり、この点には現在でも十分な配慮が必要である。〔参考17〕(3)
男系固執の政党会派が押し進める養子案が、平成の有識者会議のなかでは、「国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難」であり、単なる補論であることが分かる箇所。
全体会議の中で立憲民主党の馬淵議員が再三に渡って指摘した論点整理「①立法事実の確認」に当たるのは、「当事者の意思を尊重する必要」「この方策によって実際に皇位継承資格者の存在が確保されるのか、また、確保されるとしてそれが何人程度になるのか、といった問題は、最終的には個々の当事者の意思に依存することとなり、不安定さを内包」
「②先例主義との整合性」に当たるのは、「いったん皇族の身分を離れた者が再度皇族となったり、もともと皇族でなかった者が皇族になったりすることは、これまでの歴史の中で極めて異例」
馬淵議員が平成の有識者会議に基いて論点整理をしていたことが伺えます。
女子や女系の皇族への皇位継承資格の拡大の検討
憲法において規定されている皇位の世襲の原則は、天皇の血統に属する者が皇位を継承することを定めたもので、男子や男系であることまでを求めるものではなく、女子や女系の皇族が皇位を継承することは憲法の上では可能であると解されている。〔参考18〕
皇位継承制度の在り方を考察するに際し、世襲による継承を安定的に維持するという基本的な目的に立ち返れば、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが考えられる。これは、内親王・女王やその子孫も皇位継承資格を有することとするものである。
女性天皇に関しては、明治典範や現行典範の制定時にもこれを可能にすべきであるという議論があった〔参考11、12〕。
現行典範制定の際の当時の帝国議会においては、歴史上も女性天皇の例があること、親等の遠い皇族男子より近親の女性を優先する方が自然の感情に合致すること、皇統の安泰のために必要であることなどの理由から、女性天皇を可能にすべきではないかとの質疑が行われた。
その時点では、男系男子の皇族が相当数存在しており、皇位継承に不安がなかったことなどもあり、男系継承の意義や女性天皇を可能とした場合の皇位継承順位などの在り方に関して、なお研究を行った上で結論を得るべきものとされた。
男系男子の皇位継承資格者の不在が懸念される状況となっている現在、女性天皇や女系の天皇について、まさに真剣な検討を行うことが求められていると言わなければならない。
「憲法において規定されている皇位の世襲の原則」については、全体会議で共産党、社民党、沖縄の風が何度も指摘して議論の俎上にのせようと努めてくれていました。
以下では、このような認識に立って、先に述べた3つの基本的視点に照らして、女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大することにつき、考察を行う。
ア. 安定性
まず、皇位継承資格者の存在を安定的に確保するという観点から見ると、女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大した場合には、男女を問わず天皇・皇族の子孫が継承資格を有することとなるため、男系男子限定の制度に比べれば、格段に安定的な制度となる(注)。
また、制度の安定性という観点からは、象徴としての天皇の活動支障がないことも求められるが、国事行為を始めとする象徴としての活動に、女子や女系の皇族では行い得ないものがあるとは考えられない。女性の妊娠・出産等は、国事行為の臨時代行制度などにより対応可能であり、象徴としての活動の支障にはならない。〔参考19〕
なお、皇室において継承されてきた宮中祭祀についても、歴史的には女性天皇もこれを行ったとの記録が存在する。〔参考20〕(注)(2)(注)と同様の条件で試算をすれば、5人の現世代に対して、男系・女系や男子・女子を問わない場合の子孫の数は、子の世代6.45人、孫の世代8.32人、曾孫の世代10.73人となる。〔参考15〕
イ. 国民の理解と支持
国民が、象徴としての天皇に期待するものは、自然な血統に加え、皇位とともに伝えられてきた古来の伝統や、現行憲法下の60年近くの間に築かれてきた象徴天皇としての在り方を含め、皇室の文化や皇族としての心構えが確実に受け継がれていくことであろう。
このような観点から皇位継承資格者の在り方を考えた場合、今日、重要な意味を持つのは、男女の別や男系・女系の別ではなく、むしろ、皇族として生まれたことや皇室の中で成長されたことであると考えられる。
皇位が男系で継承されてきた歴史等を背景として、天皇は当然に男性であるとの観念が国民の間に存在してきたことは事実であろう。それは、男子による家督の継承を重んじた明治の民法の制度や一般社会における家の観念、社会における男性の優位の観念とも結び付いていたと思われる。
しかし、他面、現行典範が制定された昭和22年以降、我が国では、家族観や社会における男女の役割分担などをめぐって、国民の意識や制度に様々な変化が生じてきていることも考慮する必要がある。
例えば、戦後の民法の改正により、婚姻の際に女性が男性の家に入る制度や長男が単独で家督を相続する制度が廃止され、現実にも両性の合意による婚姻という観念や相続において長男を特別な存在とはみなさない考え方が広く浸透するなど、男性中心の家族観は大きく変わってきた。
家の観念そのものも、男性の血筋で代々継承されるべきものというよりも、生活を共にする家族の集まりととらえる方向へと変化してきているものと見られる。〔参考21〕
また、女性の社会進出も進み、性別による固定的な役割分担意識が弱まる傾向にあることは各種の世論調査等の示すとおりである。〔参考21〕
長い歴史や伝統を背景とする天皇の制度と、一般社会における家族観や男女の役割分担についての意識とを直ちに結び付けることはできない。
しかし、最近の各種世論調査で、多数の国民が女性天皇を支持する結果となっていることの背景には、このような国民の意識や制度の変化も存在すると考えられる。
天皇の制度において、固有の伝統や慣習が重要な意義を有することは当然であるが、他方、象徴天皇の制度にあっては、国民の価値意識に沿った制度であることが、重要な条件となることも忘れてはならない。〔参考22〕
以上のような事情を考慮すると、国民の間では、女子や女系の皇族も皇位継承資格を有することとする方向を積極的に受け入れ、支持する素地が形成されているものと考えられる。
ウ. 伝統
我が国では、これまで、一貫して男系により皇位が継承されてきた伝統があり、女子が皇位に即き、更に女系の天皇が誕生する場合、こうした伝統的な皇位継承の在り方に変容をもたらすこととなる。
皇位の継承における最も基本的な伝統が、世襲、すなわち天皇の血統に属する皇族による継承であることは、憲法において、皇位継承に関しては世襲の原則のみが明記されていることにも表れており、また、多くの国民の合意するところであると考えられる。
男系男子の皇位継承資格者の不在が懸念され、また、歴史的に男系継承を支えてきた条件の変化により、男系継承自体が不安定化している現状を考えると、男系による継承を貫こうとすることは、最も基本的な伝統としての世襲そのものを危うくする結果をもたらすものであると考えなければならない。
換言すれば、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することは、社会の変化に対応しながら、世襲という天皇の制度にとって最も基本的な伝統を、将来にわたって安定的に維持するという意義を有するものである。
「ア. 安定性、イ. 国民の理解と支持、ウ. 伝統」、どの基本的視点に照らしても、何の障害もなく、むしろ、積極的に「女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大」しなければならないことが示されました。
(4) 今後の望ましい皇位継承資格の在り方
これまで見てきたような皇位継承制度をめぐる国民意識や社会環境の変化は、我が国社会の長期的な変化に伴うものである。
女性天皇や女系の天皇を可能とすることは、社会の変化に対応しながら、多くの国民が支持する象徴天皇の制度の安定的継続を可能とする上で、大きな意義を有するものである。このような意義に照らし、今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である。
女性天皇や女系の天皇はその正統性に疑問が生じるという見解もあるが、現在の象徴天皇の制度においては、皇統による皇位継承が維持され、幅広い国民の積極的な支持が得られる制度である限り、正統性が揺らぐことはない。
なお、皇位継承資格を女子に拡大した場合、皇族女子は、婚姻後も皇室にとどまり、その配偶者も皇族の身分を有することとする必要がある。
女性天皇や皇族女子が配偶者を皇室に迎えることについては、性別による固有の難しさがあるとは必ずしも考えないが、初めてのことであるがゆえに、配偶者の役割や活動への配慮などを含め、適切な環境が整えられる必要がある。
「皇位継承資格を女子に拡大した場合、皇族女子は、婚姻後も皇室にとどまり、その配偶者も皇族の身分を有することとする必要がある。」
読売新聞が提言した「夫・子も皇族に」は、平成の有識者会議を踏まえていることも分かりますね。
「愛子天皇への道」サイト運営メンバー まいこ