
『日本書紀』(神代4・一書11)では、口から吐いた食物で供応した保食神を月夜見尊が怒って殺しますが、『古事記』の類似エピソードでは大宜都比売神が須佐之男命に殺されました。ここで保食と大宜都比売は同一神だと思われ、さらに食物を生み出す神格より倉稲魂命(宇迦之御魂神)や豊受大神とも同一視されますが、宇迦之御魂は素戔嗚の娘だから殺すはずが無く、従って真犯人は月夜見でしょう。ちなみに宇迦之御魂は伏見稲荷大社(京都市伏見区)の祭神で、豊受は元伊勢籠神社(宮津市)の祭神です。
さて、籠神社と言えば豊受大神と共に彦火明命(≒饒速日命:邇邇杵尊よりも先に天下った兄神)も祀られています。邇邇杵は天孫降臨に際して天照大神から「三種神器」(鏡1玉1剣1)というレガリアを授けられましたが、『先代旧事本紀』によれば饒速日も高御産日神から「十種神宝」(鏡2玉4比礼3剣1)を授けられました(天孫降臨-1.0)。前掲書は物部氏が祖神(饒速日)の正統性を示すために書いた偽書とされますが、『日本書紀』巻3(神武)には饒速日に授けられた天羽羽矢と歩靫を可美真手命(饒速日と三炊屋媛の子:物部氏の祖)が磐余彦(神武)に献上する件があり、また『書紀』巻6(垂仁)には天日槍(新羅王子)が神宝(鏡1玉3武器3神籬1)を献上した件があり、神宝は石上神宮(天理市)に納められたとされ、さらに出石神社(豊岡市)の祭神は日槍の八種神宝(鏡2玉2比礼4)、石上神宮の祭神は布都御魂神(武甕槌が大国主を脅した剣)と布都斯御魂神(素戔嗚が大蛇を退治した剣)と布留御魂神(十種神宝)です。つまり以上の状況証拠から十種神宝は饒速日の2種+日槍の8種だと思われ、タニハ(丹後~但馬)に本拠を置く2神の強い絆も同時に伺えます。
ちなみに天羽羽矢は天若日子(天孫降臨の前座)にも授けられた品であり、若日子の妻(下照姫)と饒速日の妻(高照姫)は共に大国主神の娘です。また三炊屋媛は最後まで神武一行に逆らった長脛彦の妹です。
ところで、もし邪馬台国の卑弥呼(日巫女)を天照大神に比定すれば、弟王は存在感の薄い月夜見に比定でき、素戔嗚尊は身内と言うより隣国の王ぐらいの存在感です。つまり給仕係の失態に怒る小っさい男が卑弥呼政権を差配したはずが無く、素戔嗚や大国主と渡り合ったのは女傑王だったはずです。故に創業は天照大神、中興は神功天皇や持統天皇、そして長い雌伏を経ての再興は愛子天皇です。
文責:京都のS
2 件のコメント
パワーホール
2026年2月22日
京都のSさん
前回の世間主義に引き続き今回は自虐とのことですが世間主義も自虐も男尊女卑同様我が国にとって害悪であると私は考えています。この3大害悪がなくなれば日本は本当の意味で素晴らしい国になれると思いますしいっそ戦争ではなく男尊女卑・世間主義・自虐を憲法で放棄したほうがいいのではないかとの思いにもかられることがあります。
京都のS
2026年2月22日
ふぇい様、掲載ありがとうございました。これは…
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…に続く「京都シリーズ」です。