「光る君へ」は主人公”まひろ”(吉高由里子)が藤原道長(柄本佑)の依頼を受けて『源氏物語』を執筆し、その流れで中宮・彰子(見上愛)に女房として仕えるという段階に入りました。それまで”まひろ”が幾ら学問に興味を示しても、学者で父の藤原為時(岸谷五朗)から「お前が男であったなら」と言われ続けましたが、一条帝(塩野瑛久)をも虜にした『源氏物語』と、その背景にある高い学識(帝は「書き手の博学ぶりは無双」と評価)も認められ、中宮の暮らす藤壺への宮仕えが叶い、ようやく為時から「お前が女子で良かった」と言われることになりました。この時”まひろ”は女子であったために感じてきた屈辱の多くが報われたでしょう。
打毬観戦に呼ばれた際に「女こそ家柄」「身分の高い嫡妻を得たら後は妾と遊べばいい」という女子を道具と見る若手貴族らの本音を立ち聞きし、藤原道綱(上地雄輔)の母・寧子(財前直美)の「(蜻蛉日記を)書くことで妾の辛さを癒した」という言葉に感銘を受け、「女子は何もするな」と義父から言われた”さわ”(筑紫の君:野村真純)の境遇に同情し、「自分のために生きることが他の誰かのためにもなっている生き方をしたい」から「女房として働きたい」と言った”ききょう”(清少納言:ファッサマ)に共感し、「男なら政に携われるのよ?」と言った”まひろ”
に対し「面倒なこと(権力闘争)は男に任せておけばいい」と返した四条宮の女房らの意識の低さに落胆し…と、数多くのジェンダー問題にぶち当たってきた”まひろ”ですから。
さて、道長から一条帝に献上された「第一帖・桐壺」は、帝自身と中宮・定子(高畑充希)を桐壺帝と桐壺更衣に比定しつつ「玄宗と楊貴妃」の故事も想起させる構成だったため「これは当てつけか?」と不快に思ったものの物語には嵌っていきました。『源氏物語』の劇中で光源氏は生涯に渡って藤壺宮(母・桐壺更衣の面影がある桐壺帝の女御)を愛しますが、一条帝と定子との子・敦康親王(片岡千之助)こそ光源氏で、藤壺に暮らす彰子こそ藤壺宮という説が有ります。「革命的皇位簒奪への対策を『源氏物語』から学ぶ」で書いたように臣籍降下した源氏と藤壺宮の密通および子の即位は易姓革命ですが、例え敦成親王(一条帝と彰子の子)が敦康親王(彰子が藤壺で育てている皇族)と彰子との子であっても、それは革命でも何でもないことに注目です。
(文責:京都のS)
3 件のコメント
京都のS
2024年8月29日
れいにゃん様、※ありがとうございました。為時の「女子であって良かった」発言は、貴婦人の女房として宮仕えする制度というか慣習(後ろ盾の薄弱な貴族女子でも己の才覚だけで身を立てられるシステム)があり、また自身の文才が既に帝にまで認められている状況であり、さらに最高権力者が旧知の仲だったから起こり得たと言えます。
であれば、現代の皇統問題においては、皇族女子が立太子&即位できるシステムを整え(典範改正による)、愛子様の天皇として相応しい人格は既に万人の認めるところであり(国民の総意は決している)、後は権力者たちが決断するだけで良いのです。愛子様の立太子&即位が男尊女卑の現体制を破壊するトリガーとなるのは確実ですから、「(愛子様が)女子であって良かった」となるのは必然ですね。
れいにゃん
2024年8月28日
「光る君へ(32)誰がために書く」での、為時の台詞「おまえが女子で良かった」は、まひろ編のクライマックスだと思いました。女子ならではの地位を得た「藤式部」編が始まります。
愛子さまや女性皇族方が、女子であるが故に理不尽にも貶められている地位を回復し、生まれながらの皇族として本来の輝きを取り戻されるように、制度を整えてさしあげて、「生まれてきてくれてありがとう」を国民の声として早く届けたいです。
京都のS
2024年8月27日
掲載ありがとうございました。早くも12回目です(笑)。「光る君へ」や『源氏物語』を題材にしたものは以下です。
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 1st season」( https://aiko-sama.com/archives/35405 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37751 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 3rd season」( https://aiko-sama.com/archives/38829 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 4th season」( https://aiko-sama.com/archives/40097 )
・「「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 5th season」( https://aiko-sama.com/archives/41148 )
・「「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 6th season」( https://aiko-sama.com/archives/41253 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 7th season」( https://aiko-sama.com/archives/41618 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 8th season」( https://aiko-sama.com/archives/41824 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/42000 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 10th season」( https://aiko-sama.com/archives/42094 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 11th season」( https://aiko-sama.com/archives/42853 )
・「男の嫉妬が英雄を冷遇するなら、トップは女子で良くないか?」( https://aiko-sama.com/archives/35425 )
・「男系固執の鬼どもを退治てくれよう」( https://aiko-sama.com/archives/39215 )
・「革命的皇位簒奪への対策を『源氏物語』から学ぶ」( https://aiko-sama.com/archives/36977 )
・「儒教的男尊女卑に利用されてきた血穢概念を葬れ!」( https://aiko-sama.com/archives/37641 )
・「尊皇心0な輩は永遠に呪われろ!」( https://aiko-sama.com/archives/38188 )