
2027年の大河ドラマは小栗上野介忠順が主人公の「逆賊の幕臣」です。小栗の功績は数多ありますが、本論で取り上げたいのは日米通貨交換比率交渉です。幕府がMペリー提督に押し切られて結んだ日米和親条約では1ドル銀貨1枚=一分銀1枚(※日本国内では小判1/4枚と交換)でしたが、当時の国際ルール(同種金属の貨幣は同重量で交換)に照らすと1ドル銀貨1枚=一分銀3枚にすべきとTハリス総領事が主張し、その交換比率で日米修好通商条約が成立しました。しかし、外国商人が1ドル銀貨4枚を一分銀12枚に替え、それを小判3枚に替え、これを1ドル銀貨に戻すと12枚に増えました。こうして日本から大量の金が流出し、外国商人は日本産品を1/3の値で買い叩き、日本は外国商品を3倍の値で買わされ、貨幣流通量↓(不況)+物価高騰=スタグフレーションを起こしました。
各地で一揆や打ち壊しが頻発する中、通商条約の批准書を交わすための遣米使節団員として渡米する小栗に下された密命が通貨交換比率の是正でした。交渉において小栗は「一分銀は日本人のみに通用する貨幣だから外国貨幣と交換しない」「交換する場合は一分判=90セント」と書簡で申し入れましたが、米国政府は日本側の主張を理解しても否認しました。後に英国公使オールコックは「通貨交渉は日本側が正しかった」「物価高騰の影響を受けた下級武士を倒幕派が攘夷に駆り立てた」と自著に記しました。
国家が信用を担保する貨幣の発行は金融政策であり、殖産興業や国防など公共に資する事業に国家が投資する財政政策が組み合わされば、それは日本でも古代から為されてきたケインズ政策です。日本海海戦の勝利をもたらした「横須賀造船所」も該当します。また日本の商人と生産者を外国商人から守るべく小栗が組織した「兵庫商社」「国益会所」は、海援隊(坂本龍馬が内戦に向けて武器輸入)よりも早い日本初の株式会社です。つまり小栗は澁澤栄一の大先輩に当たります。後に大隈重信は「明治の近代化は小栗上野介の構想の模倣に過ぎない」と語りました。
小栗は孝明天皇(公武合体派)を排除して傀儡の幼帝を立てた薩長を批判しましたが、もし彼や慶喜が加わった政府なら「神武創業」だの「男尊女卑が人民の脳髄を支配してるから女帝は無理」だの言わなかった可能性が高いと言えます。ゆえに幕末から現在まで一貫して薩長閥こそ逆賊だと筆者は結論します。
文責:京都のS
7 件のコメント
京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)
2025年4月13日
全体会議の最高顧問・麻生太郎氏は岩倉具視(冷や飯を食わされていた幕末期の公家)の子孫です。岩倉と言えば、公武合体派の孝明帝を排除して傀儡の幼帝(明治帝)を立てた明治新政府の中枢であり、「錦の御旗」を捏造した人物でもあります。つまり「天皇の政治利用」の元祖だとも言えます。
氏は経済思想ではケインジアン風(風次第ではグローバリストにも緊縮派にも簡単に寝返る)ですが、皇室問題ではガチガチの男系固執派であり、従って本論シリーズの敵である「ケインジアン男系派」そのもの(政治屋では他に高市早苗・城内実…)だと言えます。
京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)
2025年4月5日
「べらぼう」で田沼意次(渡辺謙)が南鐐二朱銀の発行に拘ったのも、幕府が豪商(札差)に奪われた経済主権を取り戻すために打った金融政策でした。こう考えればNHKは、「べらぼう」から「逆賊の幕臣」に向けて大掛かりな伏線を張ったことになります。「鎌倉殿の13人」から「光る君へ」に向けて壮大な伏線を張った(※後鳥羽上皇が藤原道長の『御堂関白記』の記述から源頼朝の病状を「糖尿病」だと推理した)という「先例」もあるので、上記の推測は正しいはずです。
サトル
2025年4月3日
確かに磯田道史はサヨク臭はしますね(笑)(でも、度々触れますが、なんか憎めない…のですよ、これが(笑)コロナ…は加担しましたが)。
小栗の功績抹消…と、埋蔵金のデマ…は、仰るとうり…かと。
小栗は調べれば調べるほど、腹を切らせた(これもムチャクチャな話)新政府は、本当に罪深い…と思います。
こんなに優秀な武士はそうはいない。
京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)
2025年4月3日
ちなみに小栗上野介は「赤城山中に徳川埋蔵金を隠した」という冤罪を後世のテレビマンによって被せられましたが、幕府の金蔵は底をついていたため隠すモノが無かったというのが真相です。
金蔵が尽きていた理由は、11代家斉が側室に子を産ませまくったからではなく、小栗が横須賀製鉄所&造船所を建造したからでしょう。しかし、そのお陰で日露戦争に勝てたのですから、絶対に必要な公共投資でした。もし日本が負けていたら以後ユーラシア大陸の東側は全てロシア領となり、おそらく1次大戦は英国VSロシアのインド決戦、2次大戦は米ソが互いに核攻撃していたはずです。つまり、小栗が居なければ世界が終わっていた可能性すらあるわけです。
こう考えれば、小栗の功績を抹消した薩長は罪深いです。また薩長閥政権のせいで男尊女卑の「皇室典範」が定まり、それが元で愛子様が立太子できない未来にも繋がっているわけですから。
京都のS
2025年4月3日
サトル様、※ありがとうございます。磯田道史氏は「反戦平和」「コロナ自粛」「絶対緊縮」の3拍子が揃ったサヨクだから全く好きになれませんが、時々面白いことを言うので「英雄たちの選択」は観てしまいます。
孝明帝の死に様は凄まじかったそうですね。逆に、そういう死に方をするにはどんな薬物を使えばよいのか?ってぐらいです。「錦の御旗」については、干されていた岩倉具視の積年の恨みが炸裂したかのような効果を発揮しましたね。
そうそう、生前の堀部正史師範が「幕藩体制のまま近代化すればよかった」みたいな発言をしておられたように記憶していますが、小栗上野介と勝麟太郎が一橋慶喜を補佐したら可能だったに違いないと思うようになりました。そして、その方が確実に幸せな近代化だったはずです。結局、不満分子としての倒幕派が列強外資の武器で内戦を激化させました。坂本龍馬を過大評価するのは愚の骨頂です。
幕府には200年以上の治世という権威が付いていましたから、もし公武合体政府が成立していたら「神武創業」というエセ権威を捏造せずに済んだはずであり、「天照の子孫」という女系の権威も正当に評価され、従って男尊派の台頭も遥かにマシなものになっていたと考えます。
サトル
2025年4月3日
小栗に関して全く同感。
(最近忙しく録画したままだが)NHK-BS「英雄たちの選択」においても、司会の磯田道史は、「小栗を殺したのは明治政府の大失敗」「手柄の横取り、怖かっただけ」と、力説してましたね(確か2年ほど前…でしょうか)。
また、「孝明天皇の謎の死」についても、「これは…もう言っちゃいましょう!」と、「(薩長の言うことを聞かないから)毒殺に違いない!」と、ハッキリ発言してましたね(表に出なかったお側役などの日記の記述がリアル過ぎると熱弁)。
薩長こそが逆賊(特に明治政府の立役者の殆ど)…は、磯田道史も「腹に思っている」と思っています。
「錦の御旗」の使い方…にも、何か言いたげですね、彼は(西郷はなぜ使わなかったか…も含め)。
京都のS
2025年4月3日
掲載ありがとうございました。ケインジアン男系派のついでにネオリベ緊縮派も斬るシリーズの第19弾です。2027年の大河「逆賊の幕臣」関連です。
第1弾~第18弾は以下です。
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!1st season」( https://aiko-sama.com/archives/36871 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37083 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!3rd season」( https://aiko-sama.com/archives/38400 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!4th season」( https://aiko-sama.com/archives/42223 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 5th season」( https://aiko-sama.com/archives/43664 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 6th season」( https://aiko-sama.com/archives/46020 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 7th season」( https://aiko-sama.com/archives/46118 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 8th season」( https://aiko-sama.com/archives/46543 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/46734 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 10th season」( https://aiko-sama.com/archives/46928 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 11th season」( https://aiko-sama.com/archives/46948 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 12th season」( https://aiko-sama.com/archives/47573 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 13th season」( https://aiko-sama.com/archives/47597 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 14th season」( https://aiko-sama.com/archives/48337 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/48744 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 16th season」( https://aiko-sama.com/archives/50146 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 17th season」( https://aiko-sama.com/archives/50633 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 18th season」( https://aiko-sama.com/archives/51972 )
他にケインズ主義について書いた記事は以下です。
・「インペリアル・グローバリズムという悪夢2」( https://aiko-sama.com/archives/33381 )
・「時処位の変化と制度改革」( https://aiko-sama.com/archives/32084 )
・「歴史から自由になった日本人民は皇室を戴けるか?(下)」( https://aiko-sama.com/archives/22681 )
・「権力者・愛子天皇の治世を仮想してみれば…」( https://aiko-sama.com/archives/22571 )
・「齟齬が生じたなら万難を排して改めよ!」( https://aiko-sama.com/archives/34107 )
・「思想マトリックスに皇統問題を加味してみた(表)」( https://aiko-sama.com/archives/29761 )
・「博愛と競合の間(余)~圧倒的に節度が足りない!」( https://aiko-sama.com/archives/37381 )
・「合理と感情の間~良識なき言論人を葬送せよ!」( https://aiko-sama.com/archives/38156 )