「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 13th season

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 大河「光る君へ」は、内裏の藤壺(飛香舎:中宮・彰子が暮らす宮殿)に上がった”まひろ”(後の紫式部:吉高由里子)が女房(女主人の世話をする女性使用人)のトップ・宮宣旨(小林きな子)から「藤式部」(父・藤原為時が式部の丞だったことが由来)と命名され、『源氏物語』を書く専門の女房となる段階に入りました。史実では同僚女房にイジメられたために里帰りしたとされますが、劇中では忙しく動き回る女房たちが気になって筆が進まないから自邸に帰って執筆した設定でした。

 さて、これまで中宮・彰子(見上愛)は父・道長(柄本佑)に対しても一条帝(塩野瑛久)に対しても「仰せのままに」と言うばかりで自分の意思というものが感じられないキャラ造形でしたが、”まひろ”が里帰りの前に彰子に挨拶した時、「冬が好き」「空の青が好き」という彰子の意思を確認できました。それまで着せられていた春の花を表す薄紅色の衣装は彰子の本意ではなく、冬の済んだ空の色が好きだったわけです。このことは、赤いランドセルを半ば強制されていた女子小学生が実は水色のランドセルを背負いたいのかもしれない問題と響き合っているように感じられ、ジェンダー問題との関連が意識されました。

 そもそも「光る君へ」はジェンダー問題が主要テーマの一つだと言ってよい作品だと思われます。源倫子(後に道長の嫡妻:黒木華)主催の学びの会で”まひろ”は『竹取物語』について「(帝さえ袖にした)輝夜姫は誠に颯爽としてらっしゃいます」と感想を述べました。そんな”まひろ”が道長から請われて藤壺に出仕し、一条帝を定子の影響下から解放する最後の賭けが『源氏物語』だと打ち明けられ、こうして「公卿と妾」や「上司と部下」という関係を取っ払い、完全に対等な関係を築けたわけです。そして彰子も家庭教師としての紫式部(おそらく彰子が命名)の導きにより権力者・道長に反抗できるほど強くなります。

 しかし、出仕した女房や入内した女御が主体性を発揮する場面がドラマの中で描かれたとて、現代日本の国民女性や皇族女子が現実に救われたり報われたりするわけではありません。やはり、皇族女子が立太子および即位できるような法改正を行い、そうして実際に愛子天皇が立たれれば、今まで「仰せのままに」と従ってきた女性たちも颯爽と躍動できるようになるはずなのです。    

文責:京都のS

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