「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 15th season

Post's thumbnail

 「光る君へ」の癒し枠と言えば、陣定(公卿会議)で「だよね」「同じです」と言っちゃう藤原道綱(上地雄輔)や史実でも無能とされた藤原顕光(宮川一朗太)、まひろ(後に藤式部→紫式部:吉高由里子)の従者・乙丸(矢部太郎)&藤原道長(柄本佑)の従者・百舌彦(本田力)の通称「御供ズ」、軽いキャラの弟・藤原惟規(高杉真宙)、惟規の乳母・いと(信川清順)、そして「従二位・従二位・正二位」という位階コントも話題の、出世コースから外れた藤原実資(秋山竜次)・藤原斉信(金田哲)・藤原公任(町田啓太)らが直ぐに思い付きます。

 さて、“まひろ”の弟・惟規は賀茂社の齋王(村上帝の皇女・選子内親王)に仕える女房・中将君(小坂菜緒)と恋仲になり、齋院(男子禁制)の塀を超えて逢引きしましたが、取り押さえられた時に詠んだ歌「神垣は 木の丸殿に あらねども 名乗りをせねば 人咎めけり」で許されたそうです。彼が本歌取りした元歌は天智帝の「朝倉や 木の丸殿に 我居れば 名乗りをしつつ 行くは誰が子ぞ」です。この歌は、百済救済のために新羅や唐と対決した対外戦争(白村江:661)に臨むべく斉明帝(天智帝の母)が造営した朝倉橘広庭宮(筑前国)の様子を歌ったものとされます。つまり惟規は、戦のために斉明帝と中大兄皇子が遷った宮殿は用心のために誰もが名乗りを上げるルールだったけど賀茂社も同じなのか?(忍び込んだのはルール違反か?)と問うたわけです。とっさの機転と歌で勝負する胆力が見事です。さすが紫支部の弟です。

 白村江については斉明帝の事績を顕彰した偉大な女傑を中継ぎと言いたがる心理は男尊女卑 もご覧ください。

 ところで上記の藤原実資は、劇中では四条宮(藤原公任邸)の女房・百乃と恋仲でしたが、百乃を演じた千野裕子氏は本作の古文訳考証も兼ねており、”まひろ”が『源氏物語』執筆前に書いた『カササギ語り』(オリジナル設定・LGBT要素アリ)の現代文を古語に訳した人です。そして何と!彼女は学習院大学文学部・日本語日本文学科の卒業生で愛子様の先輩なのです。ここまで来ると、「男女格差の解消」と「民の安寧を為政者に望むこと」が二大テーマだと思われる本作「光る君へ」は、愛子様や皇族方に観ていただくことを想定していないとは絶対に思えません。  

文責:京都のS

2 件のコメント

コメントはこちらから

全ての項目に入力が必須となります。メールアドレスはサイト上には表示されません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。