
大河「べらぼう」では、平賀源内(安田顕)と平秩東作(木村了)が田沼意次(渡辺謙)に蝦夷地の金山開発を持ち掛けましたが、史実の平秩東作も相方の平賀源内が獄死した後に蝦夷地へ渡り、松前や江差での体験をもとに『東遊記』(1783)を著しました。また、林子平(後に『海国兵談』で海防の必要を説く:1786)と深く親交した仙台藩士の工藤平助は、ロシアによる千島侵略を情報通のオランダ人から聞いて危機感を持ち、『赤蝦夷風説考』(1783)を著してロシアの脅威を訴えました。以上より同様の脅威を感じた田沼意次は蝦夷地への調査団派遣(1785)を決断し、松前藩とアイヌとの交易実態の調査、新田開発・鉱山開発・ロシアとの交易の可能性を探らせました(※蝦夷産の干鮑や煎海鼠を清との交易品にして日清貿易の輸入超過解消も画策)。しかし、10代家治が亡くなり後ろ盾を失った田沼が失脚(1786)すると、代わって老中となった松平定信が田沼時代の政策をすべて撤回したため調査成果も失われました。
さて、海防投資まで撤回するほど極端な緊縮財政を敷いた寛政改革(1787~93)が終わると、幕府は再び蝦夷地に測量隊を派遣(1799)し、これには間宮林蔵(樺太が島だと証明して間宮海峡を命名:1809)も参加しました。間宮は蝦夷地全土を測量して「蝦夷図」を完成させ、これは伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」完成(1821)にも大きく貢献しました。以上は全て江戸文化の最盛期(文化文政期:1804~30)を挟む徳川家斉の治世(1793~1841)でのことでした。
つまり、田沼意次は時処位に合った改革(※「10th season」を参照)を行う保守主義者であり、かつ国防を考えるナショナリストだと言えるわけですが、この田沼イズム(海防に関する公共投資を重視)を継承したのが徳川家斉だったと思われます。そして田沼に「汚職役人」、家斉に「幕府の金蔵を尽きさせた暗君」「オットセイ」という汚名を着せたのは後世の自虐派や緊縮派だと思われます。
以上から我々が学ぶべきは、正しくても政治的に負ければ後世の歴史家にメチャクチャ書かれるということです。現在は「天皇は差別の根源」(※旧宮家子孫の血の1摘が重要)「皇室は男尊女卑の象徴」(※男の血統にこそ価値がある)という偽史が後世に流布されるか否かの分岐点ですから絶対に負けるわけにいきません。そして上記2つの偽史を封じる唯一の対策が愛子天皇誕生なのです。
文責:京都のS
6 件のコメント
京都のS
2025年4月28日
伊能忠敬については以下をご覧ください。
・「時処位の変化と制度改革」( https://aiko-sama.com/archives/32084 )
・「齟齬が生じたなら万難を排して改めよ!」( https://aiko-sama.com/archives/34107 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/46734 )
・「ナショナリスト同士なら話は通じるはずだが?」( https://aiko-sama.com/archives/53490 )
あしたのジョージ
2025年4月21日
べらぼうの平賀源内が獄死したのとたまたま偶然だと思いますが、NHKの1971年のドラマ「天下御免」で平賀源内を演じた山口崇さんが亡くなられたそうですね。
何とも言えない偶然ですね~🤔
京都のS
2025年4月21日
ジョージ様、※ありがとうございます。今「べらぼう」は江戸城パートと市中パートが絶妙に交錯するミステリ展開が熱いですよ。
それをグローバル・ヒストリーの観点から見ると本文のようになるかな?と思って本論を書きました。
あしたのジョージ
2025年4月21日
昨日はゴー宣DOJOに現地参加していたので、録画セットしていたべらぼうはまだ観ていません。
平賀源内が獄死というのが本題よりも気になってしまいました。
ごめんなさいね~京都のSさん🥴
戦争でも何でも勝った方が絶対に、正しいというのは、間違いですね~🤔
京都のS
2025年4月21日
飛び飛びながら横浜DOJOをタイムシフトで聞いています。ちなみに3時間あたりで井上達夫氏が言及したアレクサンドリア・オカシオコルテス議員(米国・民主党)はケインジアンです。
京都のS
2025年4月21日
掲載ありがとうございました。ケインジアン男系派のついでにネオリベ緊縮派も斬るシリーズの第22弾です。今回は横浜DOJOのテーマとも関わる対露国防問題です。
第1弾~第21弾は以下です。
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!1st season」( https://aiko-sama.com/archives/36871 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37083 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!3rd season」( https://aiko-sama.com/archives/38400 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する!4th season」( https://aiko-sama.com/archives/42223 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 5th season」( https://aiko-sama.com/archives/43664 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 6th season」( https://aiko-sama.com/archives/46020 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 7th season」( https://aiko-sama.com/archives/46118 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 8th season」( https://aiko-sama.com/archives/46543 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/46734 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 10th season」( https://aiko-sama.com/archives/46928 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 11th season」( https://aiko-sama.com/archives/46948 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 12th season」( https://aiko-sama.com/archives/47573 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 13th season」( https://aiko-sama.com/archives/47597 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 14th season」( https://aiko-sama.com/archives/48337 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/48744 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 16th season」( https://aiko-sama.com/archives/50146 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 17th season」( https://aiko-sama.com/archives/50633 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 18th season」( https://aiko-sama.com/archives/51972 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 19th season」( https://aiko-sama.com/archives/52872 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 20th season」( https://aiko-sama.com/archives/53304 )
・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 21st season」( https://aiko-sama.com/archives/53746 )
他にケインズ主義について書いた記事は以下です。
・「インペリアル・グローバリズムという悪夢2」( https://aiko-sama.com/archives/33381 )
・「時処位の変化と制度改革」( https://aiko-sama.com/archives/32084 )
・「歴史から自由になった日本人民は皇室を戴けるか?(下)」( https://aiko-sama.com/archives/22681 )
・「権力者・愛子天皇の治世を仮想してみれば…」( https://aiko-sama.com/archives/22571 )
・「齟齬が生じたなら万難を排して改めよ!」( https://aiko-sama.com/archives/34107 )
・「思想マトリックスに皇統問題を加味してみた(表)」( https://aiko-sama.com/archives/29761 )
・「博愛と競合の間(余)~圧倒的に節度が足りない!」( https://aiko-sama.com/archives/37381 )
・「合理と感情の間~良識なき言論人を葬送せよ!」( https://aiko-sama.com/archives/38156 )