巡る因果は恨みより恩!~国民と触れ合った戦後の皇室

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 大河「べらぼう」では、老舗版元・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の廃業に伴い、偽版事件(駿河小島藩の裏切りで孫兵衛が罪を被った)から孫兵衛に義理立てして専属作家となった恋川春町(小島藩の内用人・倉橋格:岡山天音)は鶴屋(風間俊介)に移籍しましたが、「同じことはやりたくない」性質の春町と大ヒットした『金々先生栄花夢』(春町著)の類似作品を書かせたい鶴屋とは気が合わず、このままでは恋川春町は潰されます。そこで孫兵衛は恨んでいるはずの蔦谷重三郎(横浜流星)に「春町を鶴屋から奪ってくれ」と伝言させました。これには鱗形屋版『吉原細見』を蔦重が須原屋(里見浩太朗)を介して大量に買い付けた事実を須原屋が知らせた件が大きいでしょう。孫兵衛から商いを奪った蔦重を春町は嫌っていましたが、孫兵衛の助言を受けた蔦重から魅力的な戯作の構想を提案され、他の誰でもない春町の作品を読みたいと懇願され、ついに蔦重の「耕書堂」で書くことを決めました。つまり蔦重と孫兵衛と春町の間で恩の因果が巡ったわけです。

 江戸城では、10代家治(眞島秀和)が亡き御台所に似た鶴子(川添野愛)を迎えたことを法蓮院(田安賢丸と種姫の母:花總まり)と松平定信(白河藩に養子入りした賢丸:寺田心)が非難し、側室・知保(高梨臨)も大奥で服毒自殺を図りましたが、それは知保と大崎(元は一橋治済の長男・豊千代の乳母だった侍女)による弱毒を用いた狂言でした。この件を受けて家治は豊千代を養子に取ると宣言し、その上で家治は「血統は譲っても考えは譲らぬ」「家治は凡庸な将軍だったが、田沼を守ったのは素晴らしかったと後世で言われたい」と語りました。家治に忠誠心が通じた意次は嗚咽しますが、田沼凋落の切っ掛けを作った人物(佐野政言)は後に「世直し大明神」と評価され、田沼は後世でも賄賂政治家と呼ばれ続け、その評価が改まる兆しは250年後なのです。つまり恨みや悪意の因果は遥かに強固だと言えます。

 さて、令和7年5月15日「読売新聞」朝刊が皇位の安定継承に向けた提言・社説・特集記事を出し、女性・女系天皇の公認を示唆しました。これは昭和天皇や上皇陛下、今上陛下、そして多くの皇族方が様々な局面(被災地・戦績・他の行幸啓…)で国民と触れ合いながら公務に励んでこられ、そうした恩の因果が巡ったことで国民世論が高まったからだと思われるのです。    

文責:京都のS

7 件のコメント

    京都のS

    2025年5月21日

     ちなみに「巡る因果は恨みじゃなくて恩がいいよ」と言ったのは瀬川(小芝風花)です。座頭金(盲人組織による高利貸し)のせいで零落した旗本の娘・松崎(松葉屋の女郎:新井美羽)が鳥山検校に身請けされた瀬川に対して恨みを晴らそうとした事件を経ての言葉です。瀬川も武家(大名・旗本)の課した重い年貢のせいで売られてきたのですから、恨みの因果は巡っているわけです。
     人が生き物である限り「恨みの因果」を全て断ち切ることなど不可能だと心得、それなら「恩の因果」の起点と成り得る皇族方だけでも守ろうと構えるべきだと考えます。

    京都のS

    2025年5月21日

     れいにゃん様、※ありがとうございます。家治も「大奥ーohokuー」(亀梨和也×小芝風花・フジ)では良く描かれていましたね。まぁ、アレは田沼意次(安田顕)がヤッバい奴でしたが(笑)。
     田沼凋落は、①浅間山噴火・天明飢饉は田沼の不徳を天が怒ったせいと民が認識、②新たな災害復興課税への商人の怒り、③勘定組頭(土山宗次郎)の公金横領、④印旛沼・手賀沼の干拓や蝦夷地調査などの公共投資続行への民の無理解、⑤佐野政言による嫡男・田沼意知の殺害、⑥10代家治の死去…(順不同)、これらが一斉に田沼一族に襲い掛かったせいでしょうね。
     民は好き勝手に言います。田沼の災害対策が後手に回ると嫡男・意知を殺した男を「世直し大明神」と称えたり、逆に定信の締め付け(寛政改革)がきつくなると「元の濁りの田沼恋しき」と言ったり…。為政者からの広報(嘘も混じる)も報道者からの批判(嘘を暴く)も共に大事ですね。読売新聞の皇統問題に関する特集記事(25.5.15.)を読んで思いました。

    京都のS

    2025年5月21日

     枯れ尾花様、※ありがとうございます。その「絵から案思(構想)を考える」を歌麿が言い出す場面では、私も同じことを考えました。それを盛り込めなかったのは紙幅の都合(笑)ってやつです。
     誰袖(福原遥)が大文字屋市兵衛(伊藤淳史)に遺言書(蔦重に500両での身請けを許す)を書かせても、それ以上の金額を提示してこられたら反古です。やがて勘定組頭の土山宗次郎(柳俊太郎)が1200両で身請けしますが、田沼失脚に伴って土山も公金横領の罪に問われます。蔦重に惚れる女子は不幸になりますね。さすがの森下脚本ですわ…。

    れいにゃん

    2025年5月20日

    凡庸な傀儡将軍のように描かれることも多い家治が、ナショナリスト田沼意次を思慮深く守る姿が描かれる、大河べらぼうは新鮮です。(昨今、田沼の汚名は晴らされてきているとはいえ、家治はそうでもない…という印象を持っています。)
    田沼凋落の切っ掛けは、別に(血統差別)あるとして、残念なのは、田沼時代の江戸庶民が、文化と自由を謳歌できていたからこそ、風刺(世直し大明神)による田沼の汚名が後世まで拡散されてしまうことです。
    女性蔑視と陰謀論と無知に染まりながら、皇室を虐待する権力者から、現代日本の表現の自由(愛子天皇論)が、自由だからこそ皇室を守ることが出来れば、それこそ、大きな歴史の巡りあわせ。日本の出版文化の、恩の因果が巡ったと言えそうです。
    粋だねぇ。

    枯れ尾花

    2025年5月20日

    前のコメント
    視覚から入って→絵から入って、に訂正します。

    枯れ尾花

    2025年5月20日

    いや~かぼちゃの旦那こと大文字屋(伊藤淳史)、なんか患ってたみたいでしたけど、あっけなく逝ってしまいましたね。それにしても花魁の誰袖が彼が死ぬ直前に、蔦重に身請けさせることを許す内容の遺言を強引に書かせようとする場面は女は怖いわと思う反面、逞しいなあと感心してしまいました。
    それにしても鱗形屋が最後に蔦重と和解できたことは良かったなあ。蔦重が誰かに恨みを抱かれたままというのは観ている側としてはちょっと気がかりでしたので。
    さて戯作家の恋川春町に耕書堂から作品を出してもらうためどう彼に働きかければいいのかと皆が思案していた際、歌麿は「絵から入ったらどう?」って蔦重に提案しましたよね。そして、それをヒントに蔦重は春町に100年先の江戸を描いてもらいたいなんて誰も想像しないようなこと言ってきたもんだから同じことはやりたくない主義の春町は遂に耕書堂で書くことを決めましたね。私、ここでふと思い出したんですけど、それはよしりん先生が先日書かれていた「新シリーズでは絵で魅せることを重視したい」というブログの言葉でした。歌麿もよしりん先生も視覚から入って右脳を刺激しそこから左脳を使って文章で表現するという同じ発想をされたんじゃないかと。
    今も昔も天才創作者の考えることは結構似てるんじゃないかと思いましたね。

    京都のS

    2025年5月20日

     掲載ありがとうございました。「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」や吉原の要素を含むブログは以下です。

    ・「『べらぼう』が始まった今だから言っておきたい平賀源内異聞」( https://aiko-sama.com/archives/48334
    ・「『光る君へ』と『べらぼう』を繋ぐレイラインと愛子天皇への道」( https://aiko-sama.com/archives/49128
    ・「『血のスペア』という非人道的システム」( https://aiko-sama.com/archives/49347
    ・「『○○売れ』とは『景気の気』」( https://aiko-sama.com/archives/50040
    ・「正しい改革も楽しませながら訴える時代だから」( https://aiko-sama.com/archives/50174
    ・「血統書付きのホシュを今すぐ終焉させよ!」( https://aiko-sama.com/archives/50602
    ・「皇室で飯食ってる奴が皇統断絶推進ってどういう了見だ!?」( https://aiko-sama.com/archives/50851
    。「愛子様は127代目として即位していただくべきでありんせんか?」( https://aiko-sama.com/archives/51467
    ・「女性皇族を地獄に置き続けたがる人非人こそ地獄へ落ちよ!」( https://aiko-sama.com/archives/51677
    ・「大切なものはパトリオットにしか守れない!」( https://aiko-sama.com/archives/52091
    ・「時代遅れの価値観が時処位に適うこともある」( https://aiko-sama.com/archives/52390
    ・「小さな柵や対立も吹き飛ばすほど大きな風を起こそう!」( https://aiko-sama.com/archives/52504
    ・「弱者権力もルッキズム批判も排し、書で以て世を耕そう!」( https://aiko-sama.com/archives/52814
    ・「皇室という光を消す男系固執派こそ『世間の外』だと知らしめよ!」( https://aiko-sama.com/archives/53108
    ・「ナショナリスト同士なら話は通じるはずだが?」( https://aiko-sama.com/archives/53490
    ・「天才が真相に肉薄した稀代の作品を携えて進もう!」( https://aiko-sama.com/archives/53930
    ・「身近に感じられるからこそ素朴な尊皇心が育まれる」( https://aiko-sama.com/archives/54451
    ・「精神疾患に追い込む凄惨な扱いは今すぐ止めよ!」( https://aiko-sama.com/archives/54725

    ・「野暮天としての男系固執派は己のカッコ悪さに気付こう!」( https://aiko-sama.com/archives/55150
    ・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37751
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 11th season」( https://aiko-sama.com/archives/46948
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/48744
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 17th season」( https://aiko-sama.com/archives/50633
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 18th season」( https://aiko-sama.com/archives/51972
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 22nd season」( https://aiko-sama.com/archives/53796
    ・「ケインジアン双系派がケインジアン男系派を駆逐する! 25th season」( https://aiko-sama.com/archives/54670

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