「光る君へ」の10月27日放送回では、藤式部(紫式部:吉高由里子)・和泉式部(泉里香)・赤染衛門(凰稀かなめ)ら当代一流の歌人が顔を揃える彰子サロンで開催された和歌の会に清少納言(ファッサマ)が殴り込む展開に歴史ファンや古典ファンがザワつきました。清少納言は自身が心酔していた一条帝(塩野瑛久)の皇后・定子(高畑充希)や縁者たち、そして遺児の敦康親王(片岡千之助)と脩子内親王(井上明香里)を没落させた左大臣・藤原道長(柄本佑)を深く恨んでいるため、定子と一条帝が好んだ椿餅を中宮・彰子(見上愛)へ「定子様の忘れ形見である敦康様を忘れるな!」という念を込めて届けにきたわけです。
紫式部は『日記』の中で清少納言を文学的な観点から辛辣に批判(ドヤ顔で漢文を多用するけど間違いが多い・碌な晩年になるまい)していますが、劇中のように藤原道長から依頼されて『源氏物語』を書き、師として中宮・彰子を導き、そうして道長の「民のための政」(公的な目標)を側面支援してきた藤式部なら、例え若い頃に「宮仕えという生き方」を教えてくれたキャリア女子の先輩・清少納言であっても徹底批判したはずです。この件について筆者は本シリーズ「10th season 」で、私的な主従関係に固執した清少納言と公の政を見据えた紫式部との差という価値の順列により後者に軍配を上げました。
ところで、リアルでは国連女性差別撤廃委員会が、日本国のイチ法律(皇室典範)が規定する皇位継承ルールは日本国の批准する同条約に反すると指摘しました。これについて男系固執派は「皇位継承ルールに口出しするのは内政干渉!」と息巻いていますが、彼らが守りたいのは持論や議席といった極私的なものに過ぎず、本当に守るべき公の体現者としての天皇と皇室を続けていくには、女性も皇位を継げるように皇室典範を改正すべきという国連の勧告に従うべきでしょう。それこそ保守派が重視すべき価値の順列です。
さて「光る~」の次回は、『源氏物語』の第41帖「雲隠」(題名だけで本文が無い)の謎、そして紫式部の代表歌「巡りあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな」との関係が明かされるかもしれません。また以後の道長は民のための政という公的な目標より権力を握る手段を自己目的化しそうな危うい狭間に居ます。劇中もリアルも緊迫の度合いが増してきました。
文責:京都のS
3 件のコメント
京都のS(サタンのSじゃねーし)
2024年11月2日
くりんぐ様、※ありがとうございます。2人の才女の決裂(清少納言VS紫式部)は、摂関政治という権力者の私益によって敷かれた歪な制度(有力貴族が男帝に娘を輿入れさせ皇子が生まれたら外戚として権勢を振るう=男帝でないと都合が悪い)が原因だということが悲しいですね。彰子は誰よりも敦康を道長から守ろうとしましたが、そのことを少納言は知る由もありません。
日本で女帝が活躍していた奈良期から徐々に『礼記』(儒教的男尊女卑の中心思想)などの書物を通じて男系主義が浸透し、平安期には摂関政治という鬼っ子を誕生させました。『養老令』の「継嗣令」(女帝の子も亦同じ)が活きているにも拘わらず。そして今、儒教とキリスト教の合体カルト(統一教会)や、朱子学と習合して以降の神道から影響を受け過ぎた政治団体(神道政治連盟)に脳髄を侵されまくった男系固執派が日本と皇室を滅ぼそうとしています。クソみたいな状況ですね。
くりんぐ
2024年11月1日
彰子さまがどれほど敦康親王を大切にされているか知っている身としては、清少納言の態度が悲しく感じます。
現代の日本の皇室では、男子を産む為の側室を持てません。
本来一夫一妻にした時点で女性・女系天皇へ道を開くべきだったのであり、男系固執の統一協会とズブズブの男系派のせいで皇室典範を改正出来ない現状が明らかに異常なのです。
京都のS
2024年11月1日
ふぇい様、掲載ありがとうございました。既に22回目です。season数は「相棒」(今は23)を超えたいと考えています(笑)。
「光る君へ」や『源氏物語』を題材にしたものは以下です。
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 1st season」( https://aiko-sama.com/archives/35405 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 2nd season」( https://aiko-sama.com/archives/37751 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 3rd season」( https://aiko-sama.com/archives/38829 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 4th season」( https://aiko-sama.com/archives/40097 )
・「「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 5th season」( https://aiko-sama.com/archives/41148 )
・「「光る君へ」から皇族女子の生き辛さを思う 6th season」( https://aiko-sama.com/archives/41253 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 7th season」( https://aiko-sama.com/archives/41618 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 8th season」( https://aiko-sama.com/archives/41824 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 9th season」( https://aiko-sama.com/archives/42000 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 10th season」( https://aiko-sama.com/archives/42094 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 11th season」( https://aiko-sama.com/archives/42853 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 12th season」( https://aiko-sama.com/archives/43220 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 13th season」( https://aiko-sama.com/archives/43538 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 14th season」( https://aiko-sama.com/archives/44244 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 15th season」( https://aiko-sama.com/archives/44386 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 16th season」( https://aiko-sama.com/archives/44417 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 17th season」( https://aiko-sama.com/archives/44696 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 18th season」( https://aiko-sama.com/archives/44926 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 19th season」( https://aiko-sama.com/archives/45006 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 20th season」( https://aiko-sama.com/archives/45446 )
・「『光る君へ』から皇族女子の生き辛さを思う 21th season」( https://aiko-sama.com/archives/45845 )
・「男の嫉妬が英雄を冷遇するなら、トップは女子で良くないか?」( https://aiko-sama.com/archives/35425 )
・「男系固執の鬼どもを退治てくれよう」( https://aiko-sama.com/archives/39215 )
・「革命的皇位簒奪への対策を『源氏物語』から学ぶ」( https://aiko-sama.com/archives/36977 )
・「儒教的男尊女卑に利用されてきた血穢概念を葬れ!」( https://aiko-sama.com/archives/37641 )
・「尊皇心0な輩は永遠に呪われろ!」( https://aiko-sama.com/archives/38188 )