
筆者は大河ドラマ「べらぼう」に関連するブログを連載していますが、この先は皇統問題にも絡んで面白くなると予想されるので、予備知識的に書いておこうと考えました。江戸中期、東山天皇(第113代)は第5皇子の慶仁(後の中御門帝)を皇太子に立て、第6皇子の直仁を出家させずに新しい宮家(閑院宮家)の当主としました。当時は京極宮・有栖川宮・伏見宮の3宮家がありましたが、いずれも東山帝とは不仲だったため、新宮家創設が必要だったわけです。しかし、中御門帝(114)→桜町帝(115)→桃園帝(116)と続く中御門皇統は後継者確保に苦しみ、桃園帝の子・英仁(後の後桃園帝)が幼少だったために後桜町帝(117:♀)が8年間在位し、次に即位した後桃園帝(118)は欣子内親王を残して夭逝しました。そこで採られた策が欣子と閑院宮師仁(東山帝の3世孫:後の光格帝)との婚姻です。中御門皇統から離れた血筋が直系皇女の血で格上げされたわけです。
さて、光格帝(119)は実父(皇位に就いたことが無い典仁親王)に上皇の尊号を贈りたいと幕府に願い出ました(1788)が、これを老中・松平定信は朱子学的な筋論から拒否(※後高倉院・後崇高院などの先例はある)しました(尊号一件)。実は当時、11代将軍・家斉が実父(将軍に就任したことが無い一橋治済)に大御所の尊号を贈ろうとしていたため、定信が治済の権力拡大を恐れたというのが一件の真相でしょう。以上の件は、元明帝(♀)から女系継承した元正帝(♀)と実父(皇位に就いたことが無い草壁皇子)との関係を連想させ、従って草壁皇子を過大評価する男系固執派は、江戸城の怪物・一橋治済なみに筋の通らない連中だと言えましょう。
ところで上記の後桜町帝ですが、彼女は後桃園帝・光格帝という2代の帝を上皇として教え導き、尊号一件では幕府と険悪になった光格帝を諫めて矛を収めさせ、天明大飢饉(1782~)に際しては救いを求めて御所千度参り(五穀豊穣を祈る人々が御所の築地塀を巡り紫宸殿を拝んだ:1787)に来た民に3万個もの林檎を配り…といったエピソードに事欠かず、非常に聡明で慈悲深い女帝だったことが判ります。この偉大な女帝を中継ぎと宣う御仁は男尊女卑の権化でありましょう。ちなみに当時は「女帝の子も」即位できる「継嗣令」は活きていました。現行典範改正の暁には、後桜町帝に続く11人目の女帝は愛子天皇でなくてはなりません。
文責:京都のS
5 件のコメント
京都のS(サタンのSでも飼い慣らすし)
2025年8月28日
くりんぐ様、※ありがとうございます。後桜町帝は当時の空気に従って未婚でしたが、もし即位前に結婚して王や女王がいたとしても、「継嗣令」の「女帝の子も亦同じ」が活きている限り、即位した後桜町帝から親王or内親王へと皇位を譲ることは可能でした。幕府の儒者(朱子学者)どもが自らの信奉する「儒教的男系主義」から、「禁中並びに公家諸法度」を盾に、女系継承に反対を唱える可能性も無いとは言い切れませんが。どれだけ儒教が日本人の脳髄を支配してきたかが伺えますね。
くりんぐ
2025年8月27日
後桜町天皇の時代は、皇女は生涯未婚のケースが多数派。
後桜町天皇が生涯独身だったのは、それが当時の皇女の「普通」だった為。
和宮さんの結婚は、当時としては珍しい事例でした。
和宮さんが元々有栖川宮熾仁親王と結婚する予定だったのは、有栖川宮家を女系の血筋で格上げする為でしょう。
後桜町天皇は弟である桃園天皇の急逝により皇位を継がれたので、上皇がいらっしゃいませんでした。
その為、自ら天皇の職務を執り行われ、後桃園天皇・光格天皇の2代の天皇を上皇として教え導かれました。
光格天皇も育ての母である後桜町天皇に諌められては、矛を収めざるを得なかったのでしょう。
京都のS
2025年8月26日
ジョージ様、※ありがとうございました。
おそらく「べらぼう」でも、一橋治済(生田斗真)が徳川治貞(高橋英樹)ら御三家当主から「次期将軍の父という立場では公式に命を下せない」と指摘された件が「尊号一件(江戸城パート)」の引き金となると予想されます。きっと治済は「大御所号」を贈れと家斉(城桧吏)に強要するはずです。それが絶妙に皇統問題と響き合う作劇になると踏んでいます。森下佳子さんのナショナリズムに期待大です。
あしたのジョージ
2025年8月25日
天皇の歴史に疎いので勉強になりました。
最後の女性天皇は江戸時代の後桜町天皇になるので、愛子さまが江戸時代から久しぶりの女性天皇になってもらいたいですね~
京都のS
2025年8月25日
掲載ありがとうございました。いつもの「べらぼう」シリーズじゃない番外編です(笑)。
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